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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十二章 続『水卿エリア』での冒険

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697 忍者、ニンジャ、ニンニン

あけましておめでとうございます。

本年も今作をどうぞよろしくお願いいたします。


 何の(てら)いもない正面からの突撃だなんて、普通に考えれば下策どころか失策もいいところだと思う。

 ところが、だからこそ古くから陽動や囮、釣りなどに利用されてきたという面もある。


 えー、何が言いたいのかというと、敵が勝手に勘違いしてくれました。


「伏兵を潜ませていたのか!?」


 と叫ぶや否や立ち上がり無防備な背中――ただし、思っていた以上に小さかった――を見せてくれたので、


「てりゃー!」


 と思いっきり攻撃を打ち込みました。


 え?卑怯?あっはっは。何をおっしゃいますやら。あちらは命を奪う勢いで仕掛けてきているのだ。やり返すことに躊躇なんてしていられませんよ。

 ただし、勘違いしないでもらいたいのは「殺しに来ているのだから、逆に殺されても仕方がないだろう」的な極端な理論でやっている訳ではないこと。


 リアルの現代ニポン社会に比べると異世界等々舞台となる世界での人の命は軽い、というのは俗に創作物などでよく使用される例えだ。

 これには非現実館や非日常感を端的に示す効果があり、適応するか否かを悩むことによって主人公たちの内面的な成長を……、ってそんな考察は関係ないことでしたね、はい。


 どこまで話したのだったかな?……ああ、人の命が軽い世界だというところだね。

 コホン。

 つまりは、『OAW』もそうした例にもれず、時には魔物という敵性存在によって、時には対立する個人や集団からの攻撃によって、呆気なく命を落としてしまうことが多々あるのだ。


 そんな世界で生きているNPCには、全体的な傾向として死ぬこと、殺すこと、命を奪うことを覚悟している節が見受けられた。

 ここ、勘違いしないで欲しいポイントその二です。命を奪うことに忌避感がないとか、殺し殺されるのが当たり前だと思っているのではないということだよ。


 長くなってしまったけれど、実はここまでが前提の部分なのよね……。

 このように命を奪うことの覚悟を持っている人たちが、本気で殺そうとしている場合、生半可な攻撃では止まることはない。

 下手に手加減するとかえってこちらが甚大な被害を受けてしまう、ということだってあり得てしまうのだ。


 まあ、怪我に関してはアイテムに魔法と回復手段が豊富だから、ついつい「死ななければどうとでもなる」と思いっきりやってしまっている部分はあるのだけれど。

 元々向こうから仕掛けてきたことなので、この点は諦めて受け入れてもらいたいところだわね。


 それでも無理だと感じる人たちや受け入れられない人たちは、闘技場などのルールが定められた場所へ行った方がいいと思う。

 後は……、縛りの一種として不殺プレイを続けているプレイヤーなどもいるようなので、ゲーム開始時にアウラロウラさんたち運営AIに相談してみるのも一つの手かな。

 どうせならストレスがたまり難い環境の方がゲームも楽しめるというものだからね。


 でも、全てが思い通りな世界となってしまうと、それはそれですぐに飽きてしまったりするものなのだよねえ……。

 ストレスではなくやる気を発生させる難易度に調整する。口で言うのは簡単だけれど、実際に行うのは至難なのではないかな。

 だって、それぞれのプレイヤーごとにその範囲は違ってくるのだから。

 ゲームの運営って大変なんだね。ちょっとだけ運営に優しくしようと思った冬の夜だった。


 ああ、皆まで言わなくても大丈夫。何を言いたいのかちゃんと理解していますとも。

 いい加減に話を進めろということですよね。


 長々と説明してきた通り、世界観的にも倫理的にも特段問題ないボクの攻撃だったのだけれど……。


「ふんっ!」

「嘘でしょ!?」


 まさかまさか即座に振り返られて左腕に装着されたゴツイ籠手――小型の盾のような扱いみたい――でもって、しっかりとガードされてしまったのだった。

 しかも小柄で軽いという自らの特性を生かして、ボクの攻撃の勢いを利用してそのまま弾き飛ばされるように距離を取られてしまうというオマケつき。


 そこでようやく彼の人物の全体像が見えてくる。といっても身長の半分くらいは背丈の高い草に覆われていたのだけれど。

 どう大きく見積もっても頭のてっぺんまで一メートルを大きく上回ることはないだろう。

 間違いない。クンビーラの三等級冒険者のゾイさんや、『火卿エリア』で出会った大物貴族の御曹司であるリシウさんと同じピグミー種だ。


 しかし、ボクが思わず叫んでしまった理由は上記の二つとは別のところにあった。


「ニンジャだー!?」


 いわゆる忍者装束で、しかも頭部は頭巾で目元以外を隠しているという独特の格好だったのだ、ニンニン。


 ちなみに色は黒ずんだ緑色。濃緑色とか深緑とかそんな感じだ。枯れてしまう冬場はダメだが、それ以外の季節に草むらに隠れるならばベストチョイスな色合いだろうね。

 実際、相当近付かないとその姿を視認することができなかったくらいだ。


「もしかすると『ニンジャ』ではなく『忍者』なのかも……?」


 リュカリュカちゃんの独断と偏見に満ちた解釈によると、両者の違いは「忍び隠れるつもりの格好かどうか」となる。

 いくら本人の身体能力や隠密能力に優れていても、ド派手な色合いや装飾が付いている場合は全て『ニンジャ』になるのだ。


 おっと、そんなカテゴライズ方法についてはどうでもよくてですね。

 問題はこの人物が本当に<ニンジャ>の職――残念ながら『OAW』のシステム的には忍者という職業は存在していないのです……――に就いているのか?ということ。


 『OAW』におけるプレイヤーの<ニンジャ>は、シーフ及びシーカー系の二次上位職という扱いになっている。レベルに換算すると、最低五十レベルは必要となるのだ。

 対してこの忍者カッコカリな人は、ボクの〔鑑定〕によれば二十八レベルだった。

 ……二十二レベルも足りないのですが?


 肩書などはともかく、職業に関してはプレイヤーにもNPCにも差はない。これは運営も常々公言していることで、登場するNPCが付いている職業は全てプレイヤーでも就くことができるように設定されているそうだ。

 もちろん、<シーフ>や<シーカー>を始めとした特定の条件を達成する必要があることも多いのだけれど。


 これに当てはめるならば、NPCであっても<ニンジャ>になるためにはレベルを五十まで上げなくてはいけない訳で、明らかにレベルが足りていないこの人は<ニンジャ>ではない、という定理が成り立つのだった。


ピグミーのところをハーヴ〇ンと書きそうになったのは秘密です。


今日は 6:00と18:00にも更新を予定しています。

お楽しみに。

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