表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十二章 続『水卿エリア』での冒険

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

679/933

679 本日の営業は終了しました

 その後、二時間ほどして本日の(・・・)うちの子たちと遊ぶ会は終了した。

 朝から魔物退治で動き回っていたこともあって、ここでもみっちり運動していたエッ君などは、座敷童ちゃんに抱かれたまま眠ってしまっていた。

 カワイイを可愛いが抱きかかえることで可愛いが倍増どころか乗算された上に化学変化を起こして聖なる可愛い空間が造成されているよ。

 きっと不死王(ノーライフキング)ですら近付いただけで浄化され昇天してしまうことでしょう。


 それはともかく、リーヴやトレアですらそこはかとなく疲れた様子だったから、生まれたばかりで何事にも全力投球なエッ君が電池切れを起こすのはある意味当然の結果だったね。


 余談ですが、協会職員さんがある程度増えたところで不審者の有無を探る作業は彼らに任せて、ボクたちもまた模擬戦に参加したり、付近に出没する魔物の討伐方法を教わったりしていた。

 時間は有限だからこそ有意義に使わないと。


 一方で、ギリギリで間に合わなかった職員さんたちはガックリと項垂(うなだ)れながら、支部長さんのことを恨みがましい目で見ていたよ。

 もしかして彼の仕事を肩代わり……、はいくらなんでも無理だろうから、足りない部分の後始末やフォローをしていたのかも?

 当の支部長は気にした様子もなく、だらしない顔つきで眠っているタマちゃんズの一匹を撫でていたけれど。


 そうそう、若い冒険者に絡まれていたところを助けてくれたお二人は早々にやって来て、スキンヘッドの男性冒険者はリーヴとの模擬戦を、黒髪ロングの姉御はタマちゃんズと戯れたり座敷童ちゃんと昔遊びを満喫したりと、それぞれに遊ぶ会を楽しんでくれていた。


 去り際に改めてお礼を述べたところ、「たっぷりと楽しませてもらえて十分以上のお礼を貰った」と満足そうにしていた。

 なんでも本日一番の功労者に認定されていたようで、他の冒険者たちが順番を譲ってくれるなど、いろいろと融通(ゆうずう)してくれていたのだそうだ。

 これも冒険者らしい成果主義的な対応、と言えるのかしらね?


「いやはや、日増しに盛況になっているな」

「その原因を作っておいてよく言うよ……」


 他人事のような支部長の言い様に、ついつい呆れて反論してしまう。


「いや、まあ、確かにそうなんだがな……。しかし、そのお陰であいつらに受け入れられただろう」

「ええ。その側面は否定しませんよ」


 前にも話したことがあったけれど、超国家組織の『冒険者協会』といえども職員は基本的にはそれぞれその土地の人たちを採用している。

 また、冒険者の方もボクたちやディラン(おじいちゃん)たちのような大陸中を旅している者がいる反面、拠点にした街に根差した活動をしている人たちも多い。

 つまりは国や街の影響を受けていることも多い訳で、ジェミの冒険者協会の場合、国境を越えて(クン)も近くにある他国(ビーラ)から来たボクたちは仮想敵とまではいかないにしても警戒すべき対象だった。


 しかし、そんな負の感情は可愛くてカッコイイうちの子たちを見た瞬間霧散することになる。そしてそうなるように仕向けた張本人こそ、この支部長だったという訳だ。

 まあ、ジェミニ侯爵からの要望や思惑も多分に絡んでいたようですが。


「お前さんたちがやられたあの外道な作戦を、もう一度仕掛けてこないとは言い切れないからな。せめてこの街にいる冒険者たちにはストレイキャッツへの対処法を知らしめておく必要があったんだよ」


 ボクたちが全滅するどころか、近くの村や領都ジェミ、ニミの街などが次々に壊滅する可能性もあっただけに支部長の声は堅かった。

 表情?もちろん見れたものではないくらいにやけていましたとも。

 緊迫した話が台無しになってしまいそうなので、ボクたちはそろって明後日の方向へ顔を向ける羽目になっていた。


「そのために実物というか、うちの子たちを見せるのが一番説得力のある方法だったのは理解してますけどね……」


 冒険者協会を訪ねたその日に、先ほどまでと同じように訓練場でタマちゃんズを披露して見せたのだが、まさか毎日見たいと言い出すとは思わなかった。

 その日は「機会があれば」と言って逃げたのだが、翌日には倍以上の冒険者たちが集まっていた。


「あれを見た瞬間、合わせない訳にはいかないと悟りましたから……」

「そこは俺も甘く見ていたと反省している……」


 タマちゃんズ、というかストレイキャッツは〔群体〕と〔魅了〕と〔ライフドレイン〕の三つの技能を持っているようなのだけれど、その中の二つ〔魅了〕と〔ライフドレイン〕は空腹度マックスの飢餓状態になることが発動条件であるらしい。

 つまりこの大人気な状況は、魅了の状態異常によるものではなくタマちゃんズの素の力ということになるのだ。


 恐るべし、ストレイキャッツの、愛らしさ。


「でも、本当のところストレイキャッツを何度もけしかけるようなことが可能なんでしょうかね?」

「そこは何とも言えん。お前さんたちも知っての通り、ストレイキャッツに遭遇して生き残ったという事例そのものが圧倒的に少ないからな。複数のストレイキャッツに続けざまに出会ったという世にも不幸なやつだって、実は意外に多いかもしれない」


 あるのかないのか判別がつかないのであれば、あると仮定して対策をしておくべきだということだね。


「それにしても、本当に発見者として名乗りでなくても良かったのか?協会の方で確認が取れてからにはなるが、お前さんたちなら四等級、いや、三等級にだってなれたかもしれない」


 公的には、ストレイキャッツ対策を発見したのは領内の見回りを行っていたジェミニの警備兵団員ということにされている。

 『水卿公国アキューエリオス』の大公様へはジェミニ侯爵自身によって、『冒険者協会』へはこの支部を通じて報告が行われていた。

 今頃は支部長が言ったように真偽を明らかにするため、あちらこちらへと人が派遣されているところだろうと思われる。


「高等級であることを誇ってずっと街にいるとか、もしくはどこかに仕官するというならそれでもいいかもね。でも、ボクたちはまだ自分たちの足で世界を見て回るつもりだから、そんな大層な肩書はいらないよ。それに、肩書ばかり立派で中身が伴っていないだなんて、張子の虎にも劣るじゃないですか」


 等級的には妥当でも能力にそぐわない難易度の高い依頼しか受けられない、なんてことになったら冒険者を廃業するしかなくなってしまう。

 ボクはちゃんと自分の()というものを知っているのです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >ボクはちゃんと自分の分というものを知っているのです。 ???「分かってないですわね」 ???「ええ、まったく」 ???「リュカリュカの分は、低い立場を利用しての自由な物言いからの精神滅多…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ