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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十一章 『水卿エリア』での冒険

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668 忍び寄る悪意

ゲームに戻ります。



そして評価して頂けた読者の方の数がついに、つーいーに! 100人になりました!

ありがとうございます!


はい、そこ!ようやくとか言わない!ww

 突然ですが!

 『OAW』には『運営の悪意』とか『外道の所業』と呼ばれている魔物が存在している。


 唐突に一体何を?と思った人もいるだろうから端的に説明すると、ボクたちは今、その恐ろしい魔物と戦う羽目になってしまっているのだ。


「こ、こんなのどうすればいいんですのー!?」

「なんてこった……。こんな所で『ベルーウェンの悪夢』に出会っちまうとは……」


 ミルファの――微妙に崩れたお嬢様言葉の――悲鳴じみた絶叫が青空の下に響き渡る。

 行商の経験が豊富で何だかんだ言いながらも取り乱すことの少ないボッターさんですら絶望して頭を抱えていた。

 それも致し方ない話で、なんと彼の魔物は単独で都市一つを壊滅させた逸話まで持っているのだ。


「くっ……!ダメ、です……。攻撃できません……」


 戦況を立て直そうと四苦八苦していたネイトも、ついにガクリと膝をついてしまう。

 しかし、うちの子たちですら困惑して手が出せない状態だったのだ。彼女を攻めるのは(こく)というものだろう。


「あー、もー!本気でえげつないね!」

「ニャー」

「ウナー」

「ゴロゴロ」

「ミャッ!」


 苛立ち交じりに吐き捨てるように言ったボクの言葉に反応したのか、魔物たちが一斉に声を上げ始めたのだった。


 今の一幕でキュピーン!と気が付いてしまった察しのいい人(にゅーたいぷ)たちもいるかもしれない。

 そう、この魔物は見た目から行動まで、まんま子猫たちなのです!

 しかも生後一か月から二か月程度の可愛い盛りときた!

 その上そんな可愛い子たちが十匹!


 こんなのよほどの動物嫌いか何かでもない限り、手を出すことなんてできないでしょう!?

 どうしてプレイヤーから『運営の悪意』などと言われているかが分かってもらえたよね。


 魔物、『迷子猫(ストレイキャッツ)』は十匹で一体という、いわゆる群体の魔物だ。先にも述べたようにそれぞれ小さな子猫の外見をしているため攻撃は皆無、かと言えばそうではない。

 確かに直接的な戦闘能力はゼロにも等しい。甘噛みもネコパンチも、荷馬車を引いている馬の防御すら抜くことはできていなかったのだから。


 だけど、それだけならNPCたちに『ベルーウェンの悪夢』などとは呼ばれていないだろうし、プレイヤーからもこれほど非難されることはないはずだ。

 つまり、そう言われるだけの理由というものが存在するのです。


 ストレイキャッツがプレイヤーたちにその存在を知られるようになったのは、『OAW』のリリースからおおよそ一か月後の五月半ばのことだった。

 ゲーム内からも閲覧や書き込みができる公式掲示板の一つに、以下のようながメッセージが寄せられたのだ。


『こねこ包囲網に捕まった!?魔物みたいだけど可愛すぎ!』


 そしてこの一言に、ちょうど掲示板にいた人たちが沸いた。『可愛いだと!?』『そんな情報に釣られクマー』『証拠を出せ!スクショはよ!』と次々に書き込まれていく。

 どうしてこんなことになっていたかというと、スタート直後に遭遇する魔物たちのほとんどが可愛くなかったからだ。

 ボクの場合はトゥースラットやブレードラビットとなる訳ですが……。うん。間違いなく可愛くなかったね。まあ、ブレードラビットのお肉は美味しかったけれど。


 話を戻そう。要望通りスクリーンショットが投下され、あわや炎上という勢いでコメントが加速していく最中に、情報提供者だったプレイヤーから不穏なコメントが寄せられた。


『しにもどり、なう』


 愛らしい子猫たちのスクショ並びに動画が投稿されていた直後の出来事だっただけに、掲示板は混乱した。詳しい説明を求められた情報提供主は、


『あ、ありのまま以下略。ニャンコたちと(たわむ)れていたと思ったら、いつの間にかHPがなくなっていて死に戻っていた。何を言っているのかわからねえと思うがホントに訳分らん!もう、ホント何なの!?』


 とコメント。これに対して『ネタをやるなら最後までやれよ』『君にはがっかりだよ』と辛らつな書き込みが返され……、おっと、これはどうでもいい話だわね。


 とにかく、情報提供者が意味不明なまま死に戻ったこと、さらにはすぐに元の場所に戻ってみたが再び遭遇することはできなかったこともあり、今度こそ掲示板は大炎上して紛糾することになった。

 一時はガセネタや虚偽情報なのでは?と疑われたのだが、すぐに運営が間違いなくゲーム内に存在する魔物だと発表したことで鎮静化に向かった。


 その後、専用のスレッドが立ち上げられ目撃情報や詳しい生態の調査が進められていくことになるのだが、この過程でNPCからは『ベルーウェンの悪夢』と恐れられていることも判明する。

 その一方で調査の方は難航することになる。ストレイキャッツの名前の通り、特定の生息場所を持たないこの魔物には遭遇すること自体が難しかったのだ。

 しかも出会えたとしてもその可愛らしさに陥落する者が続出し、デレッデレになって相手をしている内に死に戻るという、「何の成果も得られませんでしたー!」な展開ばかりとなっていた。


 ようやく調査が進展したのは、『笑顔』との合同イベントとなった『銀河大戦』が終わった直後のことだった。


 とあるプレイヤーがフィールドで、NPC冒険者がストレイキャッツにまとわりつかれている現場に出くわしたのだ。

 攻撃力が皆無とはいえ魔物は魔物だ。一応声をかけておこうと近付いたのだが、そこで彼は恐るべき光景を目にすることになる。

 なんとまとわりつかれていたNPCのHPが見る見るうちに減少していったのだ。

 慌てて助けようと割り込んだことで子猫たちの興味が移ったのか、今度はそのプレイヤーがまとわりつかれることになる。


 先ほどの光景を見てしまったことで可愛らしいはずの子猫たちが不気味に感じられたものの、手荒な真似をする気にもなれずに困っていると、数秒ごとに自分のHPが減少していくことに気が付いた。

 今度こそ危機感を抱いた彼は急いで逃げようとするが、好奇心旺盛な子猫たちは追いかけてくる始末。

 結局、NPCは礼を言って逃げおおせることができたが、プレイヤーは死に戻ることになってしまったのだった。


 この出来事が契機となり、ストレイキャットは可愛いだけではなく危険な魔物だという認識がプレイヤー間に広がっていく。

 調査も本格的なものとなり、有志たちの尊い犠牲もあって、ストレイキャッツは周囲にライフドレインを使用していることが判明したのだった。


 しかし、この調査結果はプレイヤーたちにさらなる絶望をもたらすことにしかならなかった。

 なぜなら、このライフドレインは無意識恒常的に加えて際限なく効果が発揮されるもので、ストレイキャッツを倒すこと以外では解くことができなかったからだ。


「む、無理だ……。俺にはニャンコたちを倒すことなんてできない」


 絶望しながらも、どこか晴れやかな表情で死に戻るプレイヤーが後を絶たなかったとか。


刺客はニャンコ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ストレイキャッツは周囲にライフドレインを使用していることが判明したのだった。  つまり、猫吸いが有るならば、逆に人吸いしてもええやろ。  そんなノリですな。
[一言] ...逆に言えばテイム出来さえすればテイム枠1枠で10匹の子猫を...?!
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