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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十章 『風卿エリア』、そして『水卿エリア』へ

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651 どこへ行こうかな?

 『冒険者協会』の一人勝ちを阻んで権力と戦力の一極集中化を防ぐため、『七神教』を舞台へと引きずり上げることにします。

 『放浪の洗礼者』や『旅する高司祭』といった二つ名持ちのクシア高司祭(おばあちゃん)という名も実もある人がいるから、そのこと自体はさほど難しいことではないと思う。


 何といっても彼女自身が隷属の首輪の犠牲者となっている上、『ドワーフの里』にある神殿の司祭や神官を無断で強制的に他の街へと移動させていたことなど、参加させる理由にも事欠かないというのもいい。


 とはいえ、だからと言って問題がない訳ではないのが困ったところだ。

 こういう権力争い的なことというのは、いわゆる『お菓子(パイ)の奪い合い』というやつでして。つまり『冒険者協会』に集まるはずだった力を削いだ分、そのまま『七神教』の力となってしまうのだ。


「調子づいて勘違いするおバカが出ないように、しっかりと見張らせておかなくちゃいけないねえ……」


 盛大なため息を吐きながらおばあちゃんが愚痴じみた台詞をこぼす。たとえ宗教であっても人間が運営している組織であることに変わりはなく、そうなるとどうしても空気を読めなかったり自己中心的だったり何か根本的なところから勘違いしていたりするおバカが一定数は湧いてきてしまうらしい。


「神殿なんてしょせんは時と場所、そしてきっかけを与えているに過ぎないんだがねえ……。自分の心の底から神様たちとの対話を望まなけりゃ何の意味もないっていうのに、そのことを忘れて見た目だけの外面ばかりを気にする連中が多くて困るよ」


 長年旅を続ける中で見出した、おばあちゃんなりの真理がそれなのだろう。孫弟子に当たるネイトなど一言一句をすべて記憶しようとしているのか、真剣な顔で聞き入っていた。


 でも、それはきっと常に神様との在り方を自問自答し続けてきたからこそ到達するに至った、いわば悟りのようなものだとも思えるのだよね。

 一般人な身としては、それこそ「時と場所ときっかけ」を提供されないと、神様について思いをはせることすらできないと思うのですよ。


 まあ、難しいことは全て大人たちに任せてしまうとしましょうか。

 ボクはただ起きるかもしれない――ただしその可能性は高いと思う――未来に警告を出して、そのための対策案を提示して見せただけだ。採用するかどうかの最終的な選択権は、おじいちゃんたちやおばあちゃんにあるのだから。


「ふう。後はこちらで話し合って調整していくとするよ」


 話題から抜けようとしている気配を察してくれたのだろう、デュラン支部長が終了を宣言してくれたのだった。

 細かい部分を詰める作業は大変だろうけれど、よろしくお願いします。

 案を出した責任もあるから、相談くらいは乗りますので。


「ところで、リュカリュカたちはこれからどうするつもりなんだ?」


 アバウトな問いかけだなと感じた直後、そうとしか尋ねようがないのかと思い直す。


「うーん……。最初はクンビーラ近くの地下遺跡にあったみたいに、各国に浮遊島と行き来できるような転移魔法陣があるんだ、と思っていたんですよね」


 それらをぶっ壊して、浮遊島から大陸統一家時代の亡霊たちがさまよい出ないようにすることが当面の目的だった。


「だけど『土卿王国』でも『火卿帝国』でも、関係がありそうな場所は発見できても浮遊島とは直接繋がってはいなかった」


 これはアコから聞いた話なのだけれど、実はボクたちが攻略した『火卿エリア』の迷宮の最下層には隠し部屋があり、そこにあの『土卿エリア』山間の洞窟にあったものの対になる転移魔法陣が設置されていたのだそうだ。

 さらに、地下一階と行き来できるエレベーターのような直通路――使用するためには疑似ダンジョンマスターに認められる必要があった――もあったらしい。


 要するに、地下一階で採掘された緋晶玉は隠し直通路を使って最下層へと運ばれ、そこから転移魔法陣で『土卿エリア』へと移動させられていた、ということになるのだった。


 ドワーフの集落があった辺りでは、『大陸統一国家』時代には緋晶玉の精錬や、それを燃料にした魔道具の開発などが行われていたのかもしれない。


 ちなみに、ボクたちが攻略して迷宮そのものが消失してしまったから、対になる転移魔法陣の方も完全に消滅したみたいだけれどね。

 図らずとも「転移魔法陣をぶっ壊す」という目的だけは果たしていた、ということになる。


 ……うん。なぜだかよく分からないけれど触れただけで壊してしまう、機械音痴なキャラクターにでもなったような感じで微妙に嫌だわね。


「どちらも緋晶玉関連の施設が在った訳ですから、まったくの見当違いということではないんでしょうけど、『水卿公国』まで足を延ばすのにそれだけを根拠にするのは弱いかな、と」


 とりあえず突撃してみても、ゲームのイベント管理が働くだろうから関係のある場所には誘導させられるだろうが、事前情報や前知識等が何もないと『火卿エリア』の時のように着いてから右往左往する羽目になってしまいそうでもある。


「ですが、先ほどの異界の件もありますから、クンビーラに逗留しながら情報を集めるような真似は難しいですわよ」

「ああ、それもあったね……」


 明確な制限時間がない分、いつ爆発するのか不明な時限爆弾を抱えているようなものだ。見ず知らずのNPCである可能性が高いとはいえ、ボクが原因で被害にあうような展開はご免です。

 やっぱりできるだけ早く旅を再開させるべきだろう。


「問題は行き先ですね」

「ああああ……。結局そこに帰ってくるのかあ……」


 一応ボクたちも当事者だから、下手に顔を出しては『冒険者協会』から派遣されてきた人たちに根掘り葉掘り事情を聴かれるか、それともおばあちゃんたち『七神教』が一枚噛むための手伝いをさせられることになるだろう。

 よって『土卿エリア』は却下。


 次に『火卿エリア』だが、リシウさんに通行手形を強請(ねだ)っておきながら、ボクたちはそれを使わないままアコの力でクンビーラのすぐそばまでワープしてきているのよね。

 だから、あちらからすれば突然消息が途絶えたことになる訳で、そんなところにのこのこと顔を出すなど、捕まえてくれと言っているようなものだ。

 こちらも目的地候補しては不適当となる。


 残るは当初の予定通りに『水卿エリア』へと向かうか、はたまた『風卿エリア』内を動き回るかだけれど……。

 さて、どうしましょうか。


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[一言] >残るは当初の予定通りに『水卿エリア』へと向かうか、はたまた『風卿エリア』内を動き回るかだけれど……。 >さて、どうしましょうか。  (  ̄- ̄)じーー。 >第四十章 『風卿エリア』、そし…
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