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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十章 『風卿エリア』、そして『水卿エリア』へ

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649 『土卿王国』のその後

 手加減をしてという公主様には、苦笑いを浮かべることで一旦はうやむやにしておきます。

 安請け合いをした結果、約束を守ることができずに反故にしてしまうことの方が迷惑になってしまいますので。


 できないことはできないとはっきり言ってしまうのが一番なのだけれど、どちらの世界であっても残念ながらそれが通用しない状況はいくらでもあるのだよねえ……。

 だから時と場合によっては「できると言えなくもないことはないと思うかもしれないと考えられなくもない」といった調子で煙に巻いてしまうことも必要なのです。


 さて、小難しくて面倒くさい社会の歩き方はこのくらいにしておきまして。公主様と宰相さんが出て行ったことで、部屋にはボクにミルファとネイト、ディラン(おじいちゃん)とデュラン支部長、クシア高司祭(おばあちゃん)、ついでにエルといった面子(めんつ)が残されることになった。


「うちの扱いだけ悪い気がするんやけど?」

「き、キノセイダヨー……」


 なぜバレたし!?というか、部屋の隅でひっそりとたたずんでいれば、誰だっていないものとして扱おうとすると思うの。

 まあ、偉大な先達が三人もいるから、おとなしく聞き役に徹しようとするのも分からないではないけれどさ。

 こちらとしてはエルーニのこととかを詳しく聞いておきたかったのだが、これはそのことを込みで先手を打って逃げられてしまったということなのかな?


「せっかく公主様方が場をこしらえてくれたんだ。昨日の話の続きをしておくか」


 そういえば、ボクたちがどうなってそうなってこうなったのかは公主様たちを相手に結構詳しく話していたが、おじいちゃんたちの側、『土卿王国』で何が起きたのかについては、まさに説明してもらっている途中だったのだ。

 隠れ里にあるマヨヒガへの訪問があったせいで、なんだかずいぶんと昔のことのように思えてしまう。が、実際にはゲームの中でも、そしてリアル換算でもまだ昨日の出来事のはずなのだけれどねえ。


「お前たちがいなくなったのと同時に、あのローブのやつも姿を消した。残念ながら生死の方は不明だがな」


 計画の根幹だった緋晶玉を入手することができなくなったから、別の計画を練り直しているのだろう、というのがおじいちゃんたちの推論だ。

 でも、『火卿帝国』のローブの人物がイフリートの攻撃であっさりこの世界から退場していたので、意外と緋晶玉の暴発や洞窟の崩落に巻き込まれてお亡くなりになってしまっている可能性は高い気もするよ。


「そして現地での指揮官を失ったことで部隊はまとまりを失った。あの場にいた兵士たちの大半はろくすっぽに説明もされることもなく、それでいて拒否することもできずにほとんど強制的に連れてこられていたやつばかりだったそうだ」

「第六王子を連れてきてはいたけど、あれが神輿として担がれているだけなのは誰の目から見ても明らかだったからねえ。むしろ行軍中からわがままを言いたい放題だったせいで、評判と信用は地の底にまで落ちていたって話だったよ」


 そんな状況だったから、本来ならば上役となるはずの王子や彼に近い数名の近衛兵が命令をしたところで、兵たちはまともに動こうとはしなかったらしい。

 まあ、その裏ではおじいちゃんたちの説得や暗躍があったようだけれどね。なにせ冒険者だけでなく、一般人にまで名の知られた二人を違法なやり方で従属させていたのだからね。


 そうこうしているうちに『土卿王国』に大勢の冒険者や冒険者協会職員たちがやって来る。表向きは冒険者協会支部の査察ということになっていたが、王国が冒険者たちを無理やりに近い形で従軍させて働かせていたことなどを調査するために派遣されてきていたのだった。


 もちろん、おじいちゃんたちが隷属の首輪を取り付けられていたことも問題として取り上げられたのだとか。


 対応が早過ぎる?実はおじいちゃんたち、あの山中の洞窟までの道中で立ち寄った町の冒険者協会の支部に、隷属の首輪が使用されていることを報告していたそうです。

 まあ、そこにも『土卿王国』や中央の貴族たちに忖度していたり悪い意味で仲良くしていたりしていた連中がいたようで、ひと悶着(もんちゃく)どころか余計な手間が目白押しになってしまったらしい。


 そんな小悪党な連中も冒険者協会本部主導の調査によって、軒並み捕縛されるか更迭させられてしまった。


「これであの国の冒険者協会も、風通しが良くなってまともになることだろうよ」


 アッシュさんたち行商人トリオのようなまじめで堅実にやっている人たちのためにも、そうなってくれることを祈るよ。


 話をおじいちゃんたちの方へと戻しまして。山中の洞窟調査に赴いていた部隊にも、ついに中央から帰還命令が下された。一応は王子を頭に据えていたためか、簡単な指令を伝えるための魔道具を持たされていたそうです。


 ボクも『メイション』で同じ魔道具を売っているのを見たことがあるけれど、このアイテム、はっきり言って使い勝手が悪いのよね。

 一度きりの使い捨てだし、あらかじめ登録しておいた内容しか伝えられないし、使用するためには大量の魔力が必要だし、距離によってさらに必要魔力が増加していくし、値段もべらぼうに高いし、といった具合で欠点を上げればきりがないくらいなのだ。


 ちなみに、通信系の魔道具の開発は可能だけれど、他のプレイヤーに譲渡したり販売したりすることはできないようになっています。

 運営の説明によると「世界が壊れてしまう可能性があるため」らしい。『転移門』というとんでもない技術が普通に使われているから今さらのように思えるのだけれど、『OAW』運営からするとその二つの間には許容できない明確な違いがあるのだろうね。

 正直よく分からないけれどさ。


 話が脱線してしまったね。で、首都グランディオへと戻った二人は証人となり、こっそり保管していた隷属の首輪を証拠の品として提出したことで、ジオグランド王家や中央の高位貴族たちは言い逃れができなくなってしまった。


 さすがに王様の首を()げ替えることはできなかったものの、冒険者の強制労働にドワーフの里への襲撃、隷属の首輪の使用のそれぞれの責任者として、高位貴族の当主が一斉に隠居することになったそうです。


「空を征く船の製作にも『冒険者協会』がかかわることで、他国への侵攻ができないようにするらしいぞ」


 ……これはちょっと『冒険者協会』ばかりの利になっている気がするから、少し注意してみておくべきかもしれない。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >高位貴族の頭首  普通なら○○家の“当主”とかって、こっちの漢字を使うのだと思います。  なにせ“頭首”はちょっと調べると、お頭とか頭目とか。 野盗なんかの無頼ものの集団で目にする…
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