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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十章 『風卿エリア』、そして『水卿エリア』へ

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636 迷い込む

 公主様一家への詳しい説明をミルファに任せて、ボクとネイトは一足早くクンビーラのお城から退去することになった。

 その時背後から「ふ、二人ともズルいですわよおおお!?」という叫び声が聞こえたような気がしないでもないが、きっと聞き間違いだろう。

 久しぶりに近しい血縁者たちとゆっくり過ごす機会なのだから、恨み言を言われるはずなんてないよね!


 そして貴族街である北東地区を出た所でネイトとも一旦お別れとなる。彼女はクシア高司祭が逗留しているらしい『七神教』の神殿へと顔を出すとのことだった。


「神殿があるのは南の広場だったよね?余裕があるようなら『商業組合』で組合長さんたちにも挨拶しておいてくれる?」

「構いませんよ。『商業組合』は南東地区、食料品関係の市場の先にあるのでしたか。ついでに残り少なくなっていたソイソースなどの調味料も買い込んでおきますね」


 パーティーで使用するものだからと、半ば強引に買い物用のお金を押し付けてネイトを送り出す。

 こうでもしないと「わたしも欲しかったものですから」とか言っていつの間にか自腹で買いこんできてしまうからね。

 献身的なのは悪いことではないのだけれど、ボクとしては対等なパーティーメンバーとしてお金の貸し借りはできるだけしたくはないのだ。


 一人になったところで近くにいた衛兵さんに許可を貰い、うちの子たちを呼び出す。


「おお……!このように理知的な瞳をしたケンタウロスをテイムするとは、さすがはリュカリュカちゃんだな」

「よく見ればエッ君とリーヴも少しばかり姿が変わっているじゃないか。進化したのか」


 貴族街の入り口には市民が間違って入り込んだり、冒険心溢れるお年頃の貴族の子どもたちが脱走したりしないように見張り役として衛兵さんが立っているのだ。初お披露目となったトレアはともかく、エッ君たちの変化に気が付くとはやりますね!


「ケンタウロスが蛮族っていうのは大陸共通なんですか?」


 トレアを見て感心したように呟いていた衛兵さんに疑問を投げかける。


「まあ、そうだな……。俺は若い頃に冒険者をしていて、『水卿公国』の街まで護衛として付いて行ったことがあるんだが、その途中で遭遇したケンタウロスは控えめに言っても脳筋でヒャッハーな魔物だったな。もっとも、そのお陰で生き残れたっていう面もあるんだが」


 なんでも、その時に襲い掛かってきたのは三十体以上にもなる群れで、仮に野盗並みの貧相な策であっても、(ろう)されていれば確実に全滅することになっていただろうとのこと。


「装備も粗末な手槍や手斧だけで、防具もなしだったから何とか戦いになったというところだ。それでもあの機動力と膂力(りょりょく)は危険な代物だったがな」


 これから先、遭遇することもあるかもしれないから十分注意するようにしよう。


 余談ですが、チーミルとリーネイは本体であるミルファとネイトの活動に支障が出てはいけないということでパス。アコはダンジョンコアの特性でマスターとなったボクと視覚や聴覚を共有できるそうで、『ファーム』の中というか、さらにその中で現在鋭意作成中である迷宮の中に引きこもっていたりします。


「分かっているとは思うが、街の中で騒ぎを起こさないようにな」

「はーい」


 定番の注意を受けてから衛兵さんたちと別れて、西へと進んでいく。目指すはいつもの定宿の『猟犬のあくび亭』だ。

 初めての来訪となったトレアが目をキラキラさせて周囲を見回しているのを微笑ましく思いながらのんびりと歩く。


 ゲームを始めてから一週間ほどは、初心者冒険者として街中でこなせる依頼を受けてはあっちにこっちにと走り回っていたからね。裏道もほとんど網羅していてミニマップは埋め尽くされているのだ。

 つまり何が言いたいのかというと……。

 ふっふっふ。もう初日のような迷子にはならないよ。


「……あっれー?どこだここ?しかもミニマップも表示されなくなってるんですけど!?」


 いつの間にでてきたのやら濃い霧が立ち込めており、十メートルほど離れた先は白濁の中へと呑み込まれてしまっていた。

 ついでに言うと、何やら空気も変わっている感じがする。


《イベント『彷徨(さまよ)いの小道』が発生しました》


 おおう!?これはまた珍しい。ランダムじゃない普通のイベント?が発生したみたいですよ。

 ちょいとメニュー画面から詳しく確認してみましょうか。


「えーと、なになに……。発生条件はマップ踏破率が九十五パーセント以上の街中で、なおかつNPCを連れていないこと、の二点ね」


 なるほど。クンビーラの場合はお城とその周辺も含まれるから、ボクの場合は踏破率が合格点に達するころにはミルファと同行するようになっていた。そのため二つ目の条件に引っ掛かってしまい、これまで発生することがなかった、と考えられます。

 まあ、マスクデータ等による内緒の条件があったのかもしれないけれど、そこは考えたところで答えは出ないので放置します。


「歩いてきた方向に戻れば元の街へと帰ることができるけど、イベント自体は失敗扱いになるのかあ。しかもリセットしてもこれは消えずに残るのね。再度挑戦するためには別の街で条件を達成する必要がある、と……」


 再挑戦が可能な点は温情があるようにも思うが、万全の状態でなくてもいきなり発生して開始するというのは、なかなかにえげつない仕様ではないでせうか。


「さて、どうしようか……、って聞くまでもなかったみたい」


 なぜだか知らないけれど、うちの子たちすっごくやる気を出しております。どうやらクンビーラに帰還する際、アコがとても頑張ってくれたことに影響を受けているようだ。

 あまり仲間内で張り合うような真似はして欲しくないのだけれど、そういうことがやる気とかモチベーションを高めてくれるケースもままあるので、たしなめるかどうかの判断が難しいところだわね。


 まあ、今回は街中で発生したイベントなので、危険は少ない――といいなあ……――だろうからこのまま進むことにする。

 アイテム類に少し不安はあるけれど、昨晩はふかふかのベッドで眠りに就いたので気力と体力はばっちりですから!


「何が待っているのかな?」


 鬼が出るか蛇が出るか。……うん、どちらもいらないね。

 どうせなら可愛らしいマスコット的な生き物とか、天使とか妖精さんを希望しますですよ。


ちょっ!? リュカリュカちゃん、何言いだしちゃってるの!? そんな予定なかったんですけど!?

ほら、イベントが発生しちゃったじゃん!? マジでこれからどうなるの……?(作者困惑)

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― 新着の感想 ―
[一言] >どうせなら可愛らしいマスコット的な生き物とか、天使とか妖精さんを希望しますですよ。 孵卵器(インキュベーター)「やあ、呼ばれたから来たよ。 それで……君は僕と契約して、魔法少女になって…
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