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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十章 『風卿エリア』、そして『水卿エリア』へ

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631 編集さん、上手くつないで下さいね

 アコから――チーミルとリーネイ経由でだけれど――呼び出した理由を聞いた瞬間、


「ほえええええええ!?!?」


 ボクたちはびっくりを通り越しておったまげていた。

 ちなみに「魂消(たまげ)る」と書くそうで、最初に文字と意味を知った時には「いやいや、魂が消えるとか死んじゃってるじゃん。大袈裟過ぎだよ」などと思っていたのだけれどね……。いやはや、今回ばかりは本当にそれくらい驚いた。


 ミルファとネイトも同様だったみたいで、「わたくし、実は心臓が止まってしまっているのではありませんの?」とか、「死んだことに気が付かずに都合の良い夢に浸っている……?」などと驚き過ぎて物騒な台詞を口走っております。

 つまりはそれくらいとんでもない内容だったのだ。


 いい加減引っ張り過ぎるのもよろしくないので、そろそろ正解を発表しようか。

 答えの予想はできていますか?ファイナルアンサー?当たっても何もあげられませんがね!


「ボクたちをクンビーラにまで転移させる、って……。本当にそんなことができちゃうの?」


 思わず尋ね返したボクに、アコは(イエス)の思念を送り返してきたのだった。

 クンビーラに帰り着くまでの期間をおおよそで一カ月と見積もっていた。移動距離だけでも相当なもので、何の足止めをされることがなくても半月は要することだろう。

 それらの時間と労力がなくなるというのだ。当人のボクたちでなくても驚くのは当たり前だと思うの。

 いや、まあ、後から冷静に振り返ってみると、「死にそうになるほど」というのは少々どころではなく極端な物言いだったと思いますです、はい。


 さて、ここからはどうやってクンビーラまでの転移を行うのか、の説明へと入っていこうか。

 使用するのは『ファーム』、ではなくアコの迷宮の力だ。アウラロウラさんの話によれば『ファーム』を強化することで町や都市にある『転移門』に類するものを設置することができるらしいのだが、その肝心のアイテムは全て使用してしまっていて現在手持ちは品切れ中だからね。


「でも、アコの迷宮ってこの前できたばかりだよね?それなのにクンビーラなんて遠く離れた街に転移ができるのはおかしくない?」


 最初期からそんなことができるとなれば、ぶっ壊れ性能もいいところだ。下手をすればゲームが根本から崩壊してしまう。


「そこは色々と条件などがあるのですわ」


 チーミル経由の解説によると、(かぎ)になるのはアホ領主の領都で大量に購入した緋晶玉とのこと。


「あのたくさんの緋晶玉をアコが迷宮に取り込んだ結果、クンビーラへの転移が可能となったのですわ。もっとも、本来であれば迷宮の格が足りていないため一度きりということになりますけれど」

「蓄えた魔力もほとんど全て使い果たすことになるだろう、とのことです」


 説明を聞き終えた時、ボクは口元を抑えて明後日の方向へと顔を逸らしてしまった。

 そうしないと嗚咽(おえつ)が漏れてしまいそうだったから。

 そうしないと決壊したまなじりから溢れ出す涙を見られてしまうから。


 繰り返しの解説になるが『緋晶玉』は天然の蓄魔石で、その内包される魔力は大陸統一国家時代の空飛ぶ島の動力にされたかもしれないほどの強大なものだ。

 品質や大きさにばらつきはあれども、アコはその緋晶玉を万は下らない数で取り込んだのだ。迷宮を強化しようと思えば好き放題にできたことだろう。

 もしかするとアコがいたあの迷宮くらいまでは成長させられていたかもしれない。


 それなのに、この子はその力を全てボクたちのために使おうとしている。

 マスターとして申し訳なく思う反面、ボクはとても嬉しく感じてしまっていた。


 だから、この気持ちを素直に伝えようと思う。

 汚さや嫌らしさといった心の弱いところまで全てを含めて。


「アコ……。ありがとうね」


 それに応えるように一際明るくピカピカと明滅を繰り返す。ズルいボクはそれを見て、アコもまた喜んでくれていると思ってしまうのだった。


「転移できるのが一度だけというのは理解できたのですが、転移先がクンビーラだけなのはなぜなのでしょうか?」


 ボクが落ち着くのを待っていたのだろう、しばらくしてネイトが疑問を口にする。

 言われてみれば確かに、ゲームスタート地点であり何かと縁深い街ではあるが、あの場所だけというのは不思議な気がする。


「それはブラックドラゴン様のお陰ですわ」


 んん?ブラックドラゴン?

 どうしてここで彼が出てくるの?


「ブラックドラゴン様が守護竜となってくれたことで、あの方の魔力がクンビーラとその地に流れ込んでいるのですわ」


 加えて彼の御方は血脈的にエッ君と近しい。こうした事情からクンビーラだけは位置を特定できて、一時的に転移先として繋げることができるのだそうだ。

 これまでやってきたことが間違いではなかったと認められたようで嬉しく思うね。


 それに、この説明から察するに転移先はあくまでもクンビーラに紐付けされているようだ。

 いやあ、ブラックドラゴンの名前が飛び出てきたことで、クンビーラではなく彼の元に転移先が固定されてしまったのかと考えてしまったのよね。

 だから、もしかするとクンビーラへ移動したつもりが、どことも分からないお散歩最中のブラックドラゴンの居場所に転移してしまった!?なんてことになるのではないかと邪推してしまったという訳だ。


 これまでの突拍子もない展開から、『OAW』の運営であれば、それくらいのことしでかしても不思議ではない、という嫌な信頼がボクの中ではでき上がっていた。


「一カ月かそれ以上の時間と労力が短縮できるのは、素直にありがたいよ」


 結局のところはそれに尽きる。改めてアコに感謝の言葉を述べてから、ボクたちは臨時で作り上げられた転移の魔法陣へと飛び込んで行ったのだった。


「……すごい。本当に帰ってきた」

「ああ、懐かしいですわ……」

「すぐ側にブラックドラゴン様のあの大きな体が見える以上、クンビーラで間違いないでしょう」


 ランドマークか何かのような扱いをされているブラックドラゴンだけれど、クンビーラは外壁が高くて中の建物などは見えないから仕方がないよね。


 追伸、『火卿帝国』の林で『ファーム』の中へと移動したボクたちだったが、ゲーム的な処理のされ方というべきか、そちらに放置したままとはならず、しっかりアイテムボックスの中へと『ファーム』は収納されていましたとさ。


サブタイトルはひと昔のバラエティー番組とかでよくあった、移動の際の演出をイメージしています。

ジャンプして場面転換するっていう、アレですww

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