表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十九章 次なる戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

621/933

621 聖夜?年末年始?そんな事よりもゲームだ(雑談回)

 今年もあと数時間となった年の暮れにもかかわらず、『異次元都市メイション』は多くのプレイヤーでごった返していた。

 特に人の入りが顕著だったのが、飲食店が建ち並ぶ通称『食道楽』と呼ばれている東の大通りだ。それもそのはず、軒を連ねる各店が年越しそばやお節料理を準備しているとあらかじめ告知していたからだ。


 が、実はそれだけではなく、『OAW』運営が大々的にそれを外部に向けて宣伝していた。

 さらにVR体験会としてゲームを購入していない人でも期間限定で『メイション』内を自由に出歩けるようにしてしまったのである。

 そのため、普段の数倍の数の人で店や大通りがあふれかえっているのだった。


 もちろん身バレを始めとしたトラブルが発生しないように、プレイヤー側にも体験者側にも配慮した対策やスケジュールが組まれてはいたのだが、イベントごとに想定外や予定外はつきものだ。年が変わるまで数時間となったこの頃には、通りの全てを埋め尽くす勢いで人が集まって来ていたのだった。


 当然、食事処も兼ねた酒場『休肝日』にも人の流れは押し寄せてきており、プレイヤーとNPCのスタッフを総動員しても、てんやわんやのてんてこまいという大忙しとなっていた。

 そんな店の中をあちらこちらへと走り回る給仕の中には、オーナーのフローレンス・T・オトロが扮したフローラも含まれていたのだった。



「最近のVRって凄いのね。味覚から食感まで、何から何までリアルそっくり!」


「本当だな。まあ、リアルの腹が膨れないのは残念だが、その分たくさん色々なものを食べられると思えば悪くはないか」


「いや、二人とも、その分金は掛かっているんだからな。体験分としてもらったゲーム内通貨はとっくに使い果たしているんだからな!?」


「はいはい。ちゃんと分かっていますよ。ポチー」


「おう。ここの支払いは父さんたちがするから心配しなくていいぞ。ポチー」


「ちょっ!?人には散々課金するなって言ってるくせに、速攻で何やらかしちゃってんの!」


「それはお前がガチャとか無駄な金の使い方をしているからだ」


「む、無駄じゃねえし!レアアイテムが当たったことだってあるし!っていうか、食ったらなくなるんだから、あんたらの方が無駄な金の使い方してるんじゃねえか」


「さっき母さんが味覚や食感がリアルそっくりだと言ったばかりだろうが。そういう経験ができるんだから、無駄どころか有用な金の使い方だぞ」


「すっげえ屁理屈くせえ……」


「まあ、すぐに理解しろとは言わんよ。だが、これだけは言っておく。これだけの料理をリアルで頼もうとすればこの十倍出しても足りないからな」


「普通はこの十分の一の量も頼まねえよ!」


「騒がしいわねえ。あ、店員さん!メニューのここからここまでお願いします」


「おいいいいい!?大食い番組みたいな注文するなよ!?」


「お!攻めるねえ。それじゃあ俺は目玉の『超豪華おせち十五段セット』をお願いしようかな」


「それ、絶対一人で食うような物じゃないよな!?店員さんも何か言ってやってよ!」


「あ、はい。おせちは様々な種類の品を織り交ぜながら食べていくのが飽きずに食べきるコツになります」


「そうなんだけど、そうじゃない!」


「え?ああ!リアルですとお行儀の面でも衛生の面でも取り箸や取り皿が必要になりますが、こちらではそんなことを気にする必要がないので、ガッといっちゃってください!」


「店員さんとの意思の疎通がはかれない!?」


「ふふふ。たまには礼儀作法にこだわらない食事もいいかもしれないわ」


「そうだな。大人になると他人の目が気になってついつい無難な対応を取ってしまうからな」


「いい話風にまとめようとしても、大食いの事実は変わらないからな!」


「あ、ついでにこの『究極至高年越しそば~立ち食いのトッピング全部乗せちゃいました♪~』もお願い」


「あ、俺も食いたいから二つで」


「はい。少々お待ちください」


「人の話を聞けよおおおおおおおお!!!!」



 叫んでいる一人を不憫に思いながらも、店の売り上げに貢献してくれる二人を優先してしまうフローレンスなのだった。



「いやはや、もうすぐ年が明けるっていう時間なのに大盛況だなあ」


「そうだな。運営の狙いが見事に的中したというべきか」


「まあ、かくいう俺たちも見事にそれに乗せられちゃっている訳だが」


「イベントをやってるMMOのゲームならいざ知らず、まさか『OAW』にログインして年を越すことになるとは、一週間前の俺には想像もつかなかっただろうな」


「そりゃあ、あの頃のお前は「どうすればリア充どもを撲滅できるのか」ってことしか考えていなかったからな」


「ふ……。若さゆえの過ちは認めたくないものだな」


「俺もお前もアラサ……、いや、何でもない。というか、来年も同じことを言っているような気がするぞ」


「いやいやいやいや、何を言っているのかね。今年の今頃こそ俺の隣には可愛い彼女がいてだな」


「その台詞、去年も一昨年も聞いたな」


「ガハッ!?」


「まあ、そんなバカ話はともかく、『ファーム』とかの件だよ」


「一気に話題を変えてきやがったな。まあ、あれ以上突っ込まれても困るからいいけど。で、『テイマーちゃん』のことだよな。年末の最後の最後にあんな特大の爆弾を落とされるとは……。迷宮の攻略をしていたこともビックリだけど、ダンジョンコアをテイムして『ファーム』の中に迷宮を作るとか、ツッコミどころが多過ぎて追いつかないんだが」


「しかもバグとかじゃない上に、『ファーム』の機能のことを既に知っているやつもいたって言うんだから、相変わらずここの運営は妙なところで秘密主義だよなあ」


「そんな連中ですら『ファーム』の中に迷宮を作ったやつはいないって言うんだから、やっぱりあの子ぶっ飛んでるぜ」


「本人いわく、テイムモンスターたちに任せていたから知らなかったらしいけど、あんな貴重で便利なアイテムの使用を、テイムモンスターに任せること自体がまずおかしいんだよなあ」


「まあ、結局はこれまでのやらかしと同じで、ゲーム初心者だったからアイテムの価値が分かっていなかった、ということなんだろう」


「何をやらかすか分からない初心者って怖えな。『OAW』が各プレイヤーのワールドに別れていて良かったぜ。『笑顔』みたいなMMOだったら、今頃大混乱になっていたかもな……」



 大混乱に至っていないのは運営か誰かが情報を加減しているからであり、実際の『テイマーちゃん』のやらかしはもっととんでもないものでは?と推測するフローレンスなのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >年末の最後の最後にあんな特大の爆弾を落とされるとは  ……なるほど。  少し早い落とし(爆)弾か。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ