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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十九章 次なる戦い

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620 運営公認超便利アイテム

 突然ですが、うちの子たちのお家である『ファーム』を購入した時のことを覚えているだろうか?

 そうそう。おじいちゃんとゾイさんの二人に同行してもらって、クンビーラの東隣にある『武闘都市ヴァジュラ』に行った時のことだ。


 あの店の人、ボクたちがクンビーラから来たから嫌がらせをしようとしたのか、それともヴァジュラ以外の田舎者だと見下してぼったくろうとしたのか、思いきり高額を吹っ掛けてきたのよね。

 そのせいでおじいちゃんがブチ切れてしまって、あやうくヴァジュラの街の一角が瓦礫の山と化すところだった。

 まあ、最高級品を適正価格で購入することができたから、結果的には悪くない取引だったと言えなくはないかな。


 その後、冒険者協会のヴァジュラ支部に併設されていた酒場で休憩する際についつい疲労もあってかその時のことを口にしてしまったり、クンビーラに戻ってサイティーさんたちとお喋りをしていた時に話題に上ったりはしたけれど、件のお店の売り上げが激減することになった事とはきっと関係がないはず。


 余談だが、ヴァジュラの東は『火卿帝国フレイムタン』と接しており、ここを通る街道が現状では唯一の『風卿エリア』と『火卿エリア』を繋ぐ交易路となっていた。

 本当は大きい道ならもう一つ、小さい道なら三つほどあるのだけれど、どれも『三国戦争』の折にフレイムタン軍による侵略によって『風卿エリア』側の道沿いにあった集落や村などが壊滅してしまった。


 結果、まともに体を休めることができる場所がなくなってしまい、長期間野宿をしなくてはいかなくなっているのだとか。

 さらに魔物だけでなく野盗も頻繁に出現する危険区域となってしまっているらしい。こうした事情から、ヴァジュラを通るルート以外の交易はほとんどなくなってしまっているのだった。


 うおっと!すっかり話が横道に逸れてしまったので修正しようか。

 さて、その『ファーム』を購入した際に、おまけとして内部環境を変化させるアイテムを五個サービスしてくれていたのですが……。

 いやあ、すっかりそのことをド忘れして放置してしまっていたのだ。

 正確に言えば、実際に利用するエッ君たちが快適に過ごせるように自由に使ってもらえればいい、とうちの子たちに丸投げしていたのだった。


 ところがどっこい、どうやらうちの子たちはつい最近までそれらを使用してはいなかったようで。


「最高級品だったこともあって、デフォルト状態でも何の問題もありませんでしたから」


 というのはリーネイの談です。なんでもぽかぽかとした小春日和の草原っぽい空間が、数百メートル四方に渡って広がっているそうです。

 地面も草原っぽい何かであって、草原そのものではないため、寝転がっても違和感がないのだとか。なにそれボクも行ってみたい。


 はい。ここまで話せば何が起きたのか予想が付いたことだろう。

 つまり、『ファーム』内の環境を変化させるアイテムを用いてアコが迷宮を設置するための下地を作っていた、ということのようだ。


「そんな反則じみた方法、アリなんですか?」


 うちの子たちから一連の流れの説明を受けた後、心配になって運営の窓口(アウラロウラさん)に是非を尋ねたのは当然の反応だと思う。


 あ、場所は相談用の特殊空間へと移動しております。デフォルト設定なのか、床面に当たる部分にグリッド線が引かれているだけの簡素を通り越して虚無にすら感じられる空間だけれどね。せめて部屋くらいは作りませんか?


「アリですね。そういった一見ズルいと思われるような便利機能まで搭載できるのが『ファーム』のウリですので。ちなみに、<テイマー>以外の職業向けに同様の性能へと進化させることができるアイテムも存在しています。持ち運びのできるホームのようなものですね。ですからテイマーばかりをひいきしているわけではありませんよ」


 ボクの心の声を察すこともなく、アウラロウラさんが説明をしてくれた。……のは良いのだけれど、さらりと重大事項の情報を混ぜるのは止めて欲しいのですが!?

 ハチャメチャに便利アイテムじゃないですか!?


「まあ、シークレット情報のため自力で辿り着かなくてはいけないので、知っているプレイヤー極々少数にとどまっていますが。そろそろ『メイション』で話題に出すことは解禁するべきかもしれません」


 アコ関連のことを『冒険日記』に書くためには、このことに触れない訳にはいかないので、その点を含めての配慮なのかもしれない。いやはや、気を遣って頂いて申し訳ないです。

 うん?元々運営(あちら)からの依頼だったから、対応して当然なのかな?


「それにしても、いくら迷宮を設置するためとはいえ、環境変化アイテムを五個とも使ってしまうなんて、随分と思い切ったことをしましたね」


 呆れ半分、感心半分といった声音でアウラロウラさんが言う。なんでもこのアイテム、お金を出せば買えるというものではないのだとか。

 ボクがやったような交渉――脅迫?いえ、あれはちゃんとした話し合いでしたよ――でも入手することはできるのだが、基本的にはクエスト大成功のボーナスのような形でしか手に入れるのが普通なのだとか。

 もっとも、その機会すらほとんどないという話だった。

 まあ、ねえ。持ち運びができる拠点ができるようなものだもの。さもありなんと言うべきか。


「うちの子たちに任せていましたから、ボクがやった訳じゃないですけどね」


 迷宮を設置するだけでなく、成長をさせるためにその周囲にだけ(・・)魔物が出現――これまでに遭遇したことのある魔物のみ――するようにしたため、件のアイテムを全て使用してしまったらしい。

 余談ですが、それらの魔物を狩ってレベルアップや熟練度アップをさせたり、ドロップ品を獲得したりするには、十個以上の環境変化アイテムが必要となるらしいです。

 そのため下手に魔物が出現するようにしてしまうと、メリットを全く享受できないということにもなりかねない訳でして……。うん。これ、割とトラップ感満載の機能よね。


「一方通行ながら、『転移門』の効果を持たせることも可能だったのですが」

「なんですと!?それって、出先でピンチになったらすぐに帰還ができてしまうってことですか!?」


 復路のことを考えなくて良い、そちらに力を残す必要がないというのは、冒険をする上で大きなメリットとなるのだ。もはや単なる便利アイテムどころじゃないよ、それ!?

 情報規制を行っていた訳だ。下手に公開すると、大炎上してしまうかもしれないもの。


「その通りです。まあ、リュカリュカさんの場合は迷宮の機能で似たことができるようになるので問題ありませんよ」


 いやいや、問題だらけですからね!

 その後、「そうした機能が解放されるためには迷宮の成長が必須となるので、実際に活用できるようになるのはまだまだ先のことになりますけれど」と聞かされて、ホッと安堵の息をついたのは言うまでもない。


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