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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十九章 次なる戦い

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618 倒しきれないなら捕まえてしまえばいい

 前話のあらすじを三行で。


 イフリート氏が契約破棄でバーサークする。(あんたとはもうやっとれんわ!)

 ローブの人物がプチッ!とされる。(悪役のまれによくあるやられ方)

 イフリートはしつこく生き残る。(いや、もう、ホントしつこい)


 どれもそれなりに突っ込みどころがあるのだが、強いて挙げるならば二つ目かな。

 いやはや、まさかより強敵だと睨んでいた方が先に退場することになるとは思いもよらなかった。しかも代わりにイフリートがブチ切れて厄介さが増しましになっていることから、それほど楽になったとは言えそうにもないというオマケ付き。

 やっぱりローブ姿のあの連中は敵だ!と再認識することになったのだった。


 後、あいつがさっさか退場した裏には、情報を与えまいとする運営の思惑があったのではないだろうか。

 何となくでしかないけれどあの連中、お口のセキュリティーが緩そうに思えたのよね。

 質問をすれば「冥途の土産だ」とか何とか言って、ぺらぺらと目的や計画を話してくれた気がする。


 インフォメーションで暴露してしまったように、あの連中が『天空の島に至る道』のワールドイベントに関連しているらしいので、そちら方面でネタバレしないよう急遽(きゅうきょ)手を打ったのかもしれないです。


 まあ、あのインフォメーションについては運営の失態だと断定するのは少しばかり気の毒かもしれない。

 恐らくは一つ目のイベントをクリアする過程で、ローブの人物たち――インフォメーションによれば『暗躍者』だったかな――が各地で怪しい動きをしていることが発覚するようになっていたのだろう。


 もしかすると『土卿エリア』のあの洞窟では、おじいちゃんたちと一緒に捕らえられるというのが――運営が思い描いていた――正規のルートだったのかもしれないね。


 ところがどっこい、ボクが感情に任せて魔法を暴発させてしまい、保管されていた緋晶玉が反応して魔力を放出、それを受けて放置されて機能を停止していた転移の魔法陣を強制起動するという、ピタゴラなスイッチもビックリな現象が発生してしまう。

 その結果ボクたちパーティーは『風卿エリア』を挟んだ大陸の反対側、東部の『火卿エリア』にまでワープしてしまったのだった。


 ううむ……。冷静に思い返してみると、往年のコントの爆発オチ並みにとんでもない超展開だわね……。

 いや、あちらは爆発することをあらかじめにおわせているので、ボクたちの方がより酷いと言えるかもしれない。


 当然、シナリオの修正はとんでもなく大変なことになっただろう。それこそ、インフォメーションの文言の一つを見落としてしまうほどに。


 もっとも、これはあくまでもボクの予想なので、実際は全くの見当違いの的外れという可能性もあるのだけれどね。


「うーん……。時間をおいても変化はなしかあ……。こうやって存在しているだけでもMPを消費して、いずれは勝手に消え失せるっていう流れを期待してたんだけど」

「いくらなんでも、そう都合良くはいかないでしょう……」

「逆に周囲から魔力を取り込むようなことがなかっただけでもマシですわ」


 なんやかんやで現実逃避的に色々と考えを巡らせていたのは、短時間ながらもイフリートの様子を探るためでもあったのでした。

 先の〔鑑定〕を行った際に、MP自動回復とかMP吸収といった文字が見られなかったからできたことでもある。つまりミルファが言ったような事態にはならないとあらかじめ知っていたのでした。


 その当のイフリートだが、ローブの人物こと暗躍者を倒した攻撃を行って以降はただその場に(たたず)んでいた。MPの残りが心もとなくなっているのか、さっきまでの暴れっぷりが嘘のような静けさです。

 メタ的にゲーム風に言うなら、アクティブモードが解除されてノンアクティブモードになったような感じかな。


 実はボクたちが下手に動けないのも、アクティブモードに移行するためのキーアクションが何か分かっていないから、という部分もあったりします。

 一定距離以内への接近なのか、攻撃に該当する動作なのか、それとも逆に逃げようと背を向けることで追い討ちを行うようになっているのかもしれないぞ。


 契約を解除されてバーサークしたことで、イフリート氏という面白おかしな個体情報は引きはがされ、単なるイフリートという扱いになっているようにも思える。

 リアル顔負けの細かさで反応を返してくる『OAW』の魔物たちだが、全ての魔物がそれに該当する訳ではない。群れであればリーダーや中心となる個体だけで、残りはそれに追随したり特定ルーチンを組み込まれたアルゴリズムに従っているだけだったりするのだ。


 改めて〔鑑定〕でイフリートのデータを表示させる。一見すると大人しくなったようだが、相変わらずバーサークの状態異常は付いたままだった。

 変化がないと言えば瀕死の状態も続いていた。


「瀕死、か……。テイムする気はないけど、捕獲とかできないかな?」


 某有名狩ゲームのシステムを思い出す。確かあのゲームだと罠にはめてから捕獲用のアイテムを使用する必要があるのだったかな?

 捕獲用アイテムを連続で二個使わなくちゃいけないのが分からなくて何度も失敗した、と里っちゃんから愚痴られた記憶がある。


「捕獲してもテイムした訳ではないのですから、扱いに困るだけではありませんこと?」

「そもそもの話、イフリートを捕獲できるようなアイテムがあるなんて、聞いたこともありませんからね」


 ミルファやネイトの言う通りだわね。

 ボクとしても別に捕獲がしたい訳ではなく、単にこの戦闘を終わらせる方法として思い浮かべただけのことだった。


 だけ、だったのだけれどね……。


 まさかまさかそんなボクの呟きをすくい上げてしまえる存在がいたとは。


「え?アコ?」


 突然『ファーム』からひょっこり飛び出してきた――普段は自力で動いたりできないのに、どうやったの?――アコがピカッと光線を発射したかと思えば、それを受けたイフリートが光に包まれ、次の瞬間には跡形もなく消え去っていた。


「え?え?え?」


 いきなりの事態に頭上に大量の???(ハテナマーク)を浮かべるボクたちに、インフォメーションがさらなる追撃をしてくる。


《アコがイフリートを捕獲し、展開中の迷宮に配置しました》


 どうやらボクたちの知らないところで何かが進行中みたいです。


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