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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十九章 次なる戦い

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614/933

614 vs イフリート 前編

「【ライトボール】!」

「【アタックアップ】!【マジックアップ】!」


 ローブの人物の行動を邪魔するという役割をきっちりと受け持ってくれるつもりであるようで、戦いが始まるとすぐにミルファが攻撃魔法を放つことで牽制し、その隙にネイトが強化魔法でそれぞれの得意分野を補強していく。


 相手に自由に行動させないようにするならば、回避するなり防備御するなりといった、こちらからのアクションの対処に専念させることが一番手っ取り早い。そのためにも脅威だと感じられるだけの攻撃力は必須条件となるのだ。

 この点からもネイトの選択はベストのものだったと思うよ。


 案の定と言うべきか、ローブの人物は苦虫を噛み潰したような表情……、かどうかは深くかぶったフードでよく見えなかったけれど、それっぽい雰囲気を醸し出していたように感じられた。

 意外と感情豊かなのか、それとも突発的な事態に弱いのか。ボクたちからすれば、より有利になる後者であって欲しいところだね。

 とにもかくにも、ミルファとネイトの二人に任せておけば、ローブの人物がボクたちとイフリート氏の戦いに介入することはできないだろう。


 そんな訳で視点をこちらの戦いへと移しまして。

 ネイトと同様に開幕早々リーネイが強化魔法をかけてくれる。


「リーネイ、程々でMPを温存しておいて」

「分かりました」


 が、本人と異なり彼女のMPは少ない。後々は回復魔法が必要になる局面もきっと出てくるだろうから、ここは抑えめにしておかなくてはいけない。

 まあ、回復が必要になるほどのダメージを受ける前に速攻で倒すというのも戦術としてはアリだとは思うのだけれど、残念ながら今のボクたちにはそれを実行できるだけの力量はないだろう。


 しかしながら、実は長期戦に持ち込むこともできなかったりするのよね。

 それというのも、ローブの人物の横槍が入っては勝ち目がなくなってしまうので、ミルファたちがあちらを抑えていられる間に勝利をもぎ取らなくてはいけないのだ。


「いやはや、なかなかにハードモードだわ」

「割といつものことですわね!」


 愚痴めいたボクの軽口に答えながら、その脇をチーミルがすり抜けていく。


「やあっ!」

「チィッ!?」


 正面のリーヴや空中のエッ君、さらには遠距離から飛来するトレアの矢に気を取られていたイフリート氏は、その死角からの攻撃をまともに受けてHPを減らす。


「なんだ大したことなグワバハア!?」


 予想したよりもダメージ量が低かったのか、イフリート氏が安堵したその瞬間、待ち構えていたかのようにエッ君が【流星脚】をお見舞いする。

 防御力無視の効果とも相まって、見事な大ダメージでございます。


「わたくしの攻撃の威力が低いことなど、とうの昔に織り込み済みでしてよ」

「ぐふっ!」


 ニヒルにうそぶくチーミルの台詞がボクの心にクリティカルヒット!

 装備の新調が後回しになってしまって申し訳ない……。お金が貯まったらチーミルとリーネイの装備も整えてあげないとなあ。


「そのためにも、さっさとやられちゃって!」

「意味が分からない上に無茶苦茶な理屈だぞ!?」


 龍爪剣斧で斬りつけるも、先の一件で微妙に間が開いてしまったこともあってボクの攻撃はギリギリでかわされてしまう。


「ぐわっ。あっちこっちから好き勝手攻撃しやがって!」


 でも、その後のリーヴの追撃とトレアの矢はしっかりと命中していました。

 くっくっく。戦いは数なのだよ、イフリート氏。


 それにしても今一ダメージ量が伸び悩んでいるのが気にかかる。

 特にトレアの一撃は並みのスナイパーでは束になっても敵わない精度で、首筋という急所へと直撃していたにもかかわらず、HP全体の一割すらも削れていない。

 無傷ではないから、物理攻撃無効と言った反則じみた能力を持っている訳ではないと思われるのだけれど。

 真相やいかに!?


「がっはっは!俺様のような大精霊ともなれば急所攻撃は無効で、その上物理攻撃への耐性が大幅にアップされるのだあ!」


 はい。解説のイフリートさん、説明どうもありがとうございました。

 なるほど。エッ君の【流星脚】は防御力無視の効果が付加されているから、他の攻撃に比べて段違いのダメージ量となったということのようだ。


 はい、そこ!

 ボクの攻撃は当たらなかったとか、そんな昔のことは蒸し返さないように!


「全員防御力無効化の闘技か魔法で攻撃ー!」

「ぐわー!?」


 ズドドドド!と効果音が尽きそうな勢いでボクたちの攻撃がイフリート氏に殺到する。HPの残量は五割を大きく下回り、もうすぐ三割にも届こうかというところまできていた。

 まさかこちらのメンバーのほとんどが防御力無効の闘技を使用できるとは思ってもいなかったのだろうね。ナイス失言でした。


 ところが、そこからが大変だった。

 さすがはイフリート氏とでも言うべきか、腐っても大精霊に分類されるだけあって勢いに乗ったボクたちの攻撃を受けきり押し止め、さらには手痛い反撃を繰り出してきたのだ。


「燃やし尽くせ!その空気さえも!」


 火属性大規模強力魔法のフレアかと見間違えそうな超高熱の炎がイフリート氏を中心に燃え広がったかと思えば、突然体の力が抜けて視界がブラックアウトしそうになる。

 冷静に後から思い返してみると、彼の言葉通り空気さえも燃やし尽くされてしまい、瞬間的に酸欠状態に(おちい)ってしまったのだろうね。


 ボクたちのピンチはさらに続く。酸欠になるほど酸素を燃やし尽くされたことによって、局所的に気圧が低下、そこに周囲から空気が流入してきたのだ。

 ボクたちからすれば背後からの暴風に押しやられて、イフリート氏に吸い寄せられるような形となった。

 半ば意識が刈り取られた状態のボクたちにそれに抵抗する手段はなく、前衛で戦っていたボク、エッ君、リーヴ、チーミルの四人は抗うこともできずに転がるよう近寄っていく羽目になる。


「くらえ!必殺イフリートパンチ!」


 要するにただのパンチですね。

 まあ、渾身の力が込められていたのか小さくないダメージを負うことになったのだけれど、何とか全員リタイアすることなく生き残ることができていた。

 仮に先ほどと同じ超高熱の炎であれば、この時点で間違いなくゲームオーバーになっていたはずだ。


「みんな、しっかり!【エリアヒール】!」


 リーネイのMPを温存しておいて正解だったわ。

 さあ、何とかここから立て直さないと!


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