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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十九章 次なる戦い

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613/933

613 決断

 ボクは運営の人間ではない。だからシステムに介入する術なんて持っていない。

 ボクは神様じゃない。だから誰も彼も皆みんなを救えるわけじゃない。


 優華(ボク)はどこにでもいる一介のプレイヤーでしかなく、リュカリュカ(ボク)は特別な力なんて持っていない一キャラクターに過ぎない。


 あー……、なんだか色々と小難しく考え過ぎていたみたい。

 あちらこちらで『テイマーちゃん』としてちやほやされていたことで、無意識に「何でもできる、何でもできなくちゃいけない」と思い上がっていたのかもしれない。


 にょわあぁぁぁ……。

 こいつはとっても恥ずかしいですぜ……。


 大体、ボクの知らない所で不幸な出来事が起きているなんて当たり前のことなのだよね。

 ボクの視界や行動できる範囲は広くはなく、世界全体からすれば見えていない部分の方が圧倒的に多いのだから。これはリアルでも『OAW』でも変わりはない。

 まあ、こちらの場合はサーバー等のキャパシティの都合上、発生しているイベント関連の箇所であったり、関わったことのある人物であったりという制限が設けられているようではあるのだけれど。


「うちの子たちみんなと悪印象が強い連中。どちらを取るのか問われているのなら、答えは当然うちの子たちでしょう!」


 もちろん、心の底から納得できている訳ではない。今もどこかで悲劇が発生しているかもしれないと想像してしまっているし、どちらかと言えば開き直ったという感じだろうか。

 つまり、ボクは今とても気分が悪い。


「八つ当たりな部分があるのは重々承知しているけど、元はと言えばそちらが仕掛けてきたことが原因だから。諦めてぶっ飛ばされてね」


 ボクの言葉に合わせて、うちの子たち並びにミルファとネイトが戦闘態勢に入る。


 あ、うん。やる気になっているところに水を差すようで申し訳ないけれど、アコちゃんは『ファーム』に戻っておこうか。迷宮核(ダンジョンコア)という種族的に迷宮作成に特化しているので直接的な戦闘力は皆無だからね。こればかりは仕方がないです。


「ふん!雑魚がいくら集まったところで俺様の相手になるものかよ!」


 ピクッ。

 ほっほーう。そんなことを言ってしまいますか。


 まあ、ね。確かに前回の戦いでは召喚の繋がりを絶って追い返すことを中心にしていたから、イフリート氏とはまともに戦ってはいなかった。

 が、しかし、結果を見れば二対一という数で有利だったにもかかわらず、ものの見事にボクの策略に引っ掛かって敗北した、ということになるのだ。


「ボク一人にすらいいようにやられたのに、随分とまあ偉そうな口を利くトカゲちゃんだこと」

「んなっ!お、お前ぇ……、今俺のことをサラマンダーって言ったな!」


 途端に激昂するイフリート氏。火蜥蜴(サラマンダー)というのは火の精霊のことで、外見的には体中に火をまとった蜥蜴(とかげ)というのが一般的だ。

 ちなみに人型にもなることもできて、その際はヒューマンの子どもに近い体形になる。


 ところで、なぜイフリート氏が怒りをあらわにしているのかと言えば、大精霊の彼からしてみればサラマンダーたちは下位の存在となるから、なのだろう。

 要するに「下っ端と同じ扱いをしたな!」という感じだと思われます。


「えー、なんですかあ?ボクはただトカゲちゃんって言っただけで、サラマンダーだなんて一言も言ってませんけどー」


 白々しく言い返してやると、顔を真っ赤に染めて……、火の大精霊だから元々赤かったわね。

 とりあえず怒りを越えて、激おこになっていることは間違いないみたい。


 この辺りの反応や感性は個体差があるようで、子どもや(ひな)といった守るべき対象としてみる場合もあるのだとか。

 むしろボクが調べたり聞いたりしたものの中だと、そちらの方が大多数だったのだけれど。


「もしかして、サラマンダーからイフリートになったばかりだったとか?」


 テイムモンスターやサモンモンスターと同様に、『OAW』では特定のイベントに関連するものを始めとした一部の魔物はレベルアップしたり進化したりすることがあるのだ。


「ギクッ!?」


 そしてイフリート氏は、今時ギャグ漫画でも言わないような言葉を口走りながら、これ以上ないくらいに動揺をしていた。

 仮に演技だとすればとんでもない役者っぷりだと言える。よって、これは当たりとみてまず間違いないでしょう。


 ちなみに一部の魔物に制限しているのは、『笑顔』リリース前の最初期の実験段階で、放っておくと時間の経過で勝手にレベルアップや進化をしてしまい、NPCどころか当時のテストプレイヤーですらも手も足も出せなくなった、なんて事件が発生したためなのだとか。


 なんでも当初予定していたエンドコンテンツに登場させるつもりだった魔物すらも瞬殺してしまうようなとんでもない化け物たちが、フィールド上を我が物顔で歩き回っているという恐ろしい光景が広がっていたそうです。


 それはともかく、自力で進化したことは凄いと感心するけれど、だからといって元の同族たちを下に見るイフリート氏の態度はぶっちゃけ最悪だと思う。


「余計に負けたくなくなった」


 元より負けるつもりなんてなかったのだけれど、今は絶対に負けたくないという気持ちになっていた。


「今度はどうやっても言い訳できないまでコテンパンにのしてあげるよ」

「お前たちごときにこの俺様が負けるか!」


 上等。すぐにその台詞を後悔させてあげる。


「ミルファ、ネイト!イフリートはボクたちだけでやっつけるから、二人はローブのあいつを相手しておいて!」

「え?」

「どういうことですの?」

「ああいうやつを放っておくと、戦いのさなかにどんな嫌がらせじみたことをしてくるか分かったものじゃないから。邪魔をしてこないように牽制をお願い」

「そういうことでしたら」

「わたしたちに任せておいてください!」


 これで余計な介入は防ぐことができるはず。

 あとは失神していたアホ領主たち悪者御一行様だけれど……。


「リュカリュカちゃん!領主たちの身柄はこっちで確保しておいたから、思う存分やっちまえ!」


 リシウさん、ナイスタイミングです!まあ、実際にやってくれたのは部下の人たちなのだろうけれど、それは言わないお約束というやつだわね。


「ありがとうございます!さあ、みんな。イフリート討伐を始めるよ!」


 はい。ぶっちゃけ本作を続けるという都合上、リュカリュカちゃんはこのまま続行を選択することになります。


 しかし、やめること、やり直すことを否定するつもりはありません。


 大前提として、ゲームは楽しむべきものだと思っています。

 なので、心の折り合いがつかなければ無理して続ける必要はないでしょう。


 実際作者の私自身、様々な理由からプレイを中断して積みゲーと化してしまっているものがいくつもありますし、主人公のパラメータなどが納得できるまでリセマラを繰り返した経験は、それこそ掃いて捨てるほどありますので……(汗)


 なんなら裏技やチートコードを使って無理矢理クリアしたゲームだってあります。

 あ、もちろんオフゲの話ですよ。

 オンラインゲームでチートコードの使用はダメ、絶対!


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― 新着の感想 ―
[一言] >当初予定していたエンドコンテンツに登場させるつもりだった魔物すらも瞬殺してしまうようなとんでもない化け物たちが、フィールド上を我が物顔で歩き回っているという恐ろしい光景が広がっていたそうで…
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