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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十四章 リアルの平凡かもしれない日常

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497 おかわりきた!?

 文化祭から一週間後、学生会と演劇部の面々にボクを加えた一行は、大きくポップな字体とカラフルな色合いで書かれた『学校祭』の看板を見上げていた。

 県下トップクラスの進学校だからどうなのかと思っていたが、うちの学校に勝るとも劣らないはっちゃけっぷりだわね。

 校内案内の掲示板などもお祭り仕様となっているのか、大概にファンシーかつファンキーな装飾を施されていた。やっぱり文化祭や学祭というのは、どこの学校にとっても一大イベントということなのだろう。


 まあ、だからと言ってボクたちのかもし出す場違い感がなくなる訳ではないのだけれど。


「どうしてこうなった……」


 全員の心情を代表して呟いたのは、演劇部の副部長である二年の男子学生――彼女募集中――だ。道具作成班班長を兼任してもいて、エッ君の縫いぐるみや、ドラゴンの頭――顔色を変えるギミック付き――などは彼が指揮して突貫工事で作り上げたものだったそうです。


 彼の疑問に答える形で話を進めるならば、ボクたちがここにいる原因は間違いなくあの『テイマーちゃん』の演劇ということになる。

 見る人が見れば変化したドラゴン役で出演していたのが里っちゃんだということは丸分かりだった。

 返す返すも無断撮影されたものがネットに上げられたのが痛いね。あれさえなければ、ちょっとした悪戯ですんだ?はずだったのに。


 そしてその映像を見てしまった人たちの中には、里っちゃんが通う高校の学生たちも含まれていた。

 で、「学生会所属の彼女が他校で何やってるの!?」という騒ぎになり、それがどこをどう三回転半捻りを加えてしまったのか、「うちの学生に何をやらせちゃってくれてる訳!?」的な半ばイチャモンじみた苦情として、ボクたちの学校へと届けられることになってしまった。


 ただ、里っちゃんが黙ってそれを見ているはずもなく。「経緯はどうあれ、やったことは事実ですから」と自分から責任を取る形で学生会から辞任すると宣言してしまった。


 これに慌てたのが学校側だ。一年生であるにもかかわらず、既に里っちゃんは学生会の主力の一人としてその存在感を高めていた。

 学校祭の準備でも各所との調整に七転八倒、もとい、八面六臂の活躍を見せていたそうだ。

 本番が目前に迫る中、彼女が抜けてしまうとスケジュール自体が立ち行かなくなってしまう部門すらあったらしい。


 なんとか里っちゃんを引き留めつつ、学生たちの不満も解消しようと向こうの学校側が提案してきたのがこちら。


「諸々の問題や苦情には目をつむるから、優華が通う高校(そちら)でやったのと同じ演目を里香の通う高校(こっち)の学校祭でもやって!」


 うちの学校としても部外者を引っ張り込んだ引け目があるので、二つ返事で了承することになったのだとか。

 随分と大事になって時間も相応に経過したように思えるかもしれないけれど、実はこの間わずか三日という超展開です。


 ボク視点で語ると、代休明けの火曜日に登校したところ、向こうの学校から苦情が入っていると知る、からの翌日水曜日の昼休みに、学生会室に呼ばれて提案を受け入れたことを聞かされる、とさらに一日短縮した形だね。

 お小言連発だった前日とは打って変わって、「頑張って来てください」と笑顔で激励してくる一部先生たちに、不信感を覚えてしまったのは秘密です。


 まあ、ボクとしては里っちゃんの進退が掛かっているようなので、元より受ける以外に選択肢はなかったようなものなのだけれど。


 浮かれた雰囲気で行き交う人々の中、そうした経緯を辿っていたためかどこかやる気を出し辛いボクたちは控えめに言っても浮いていた。

 正直、今すぐにでも回れ右をして帰りたい。が、先方から待ち合わせの場所としてここを指定されていたため、離れることができないのだった。

 田舎のうちの学校とは違って街中にあるためなのか、他の学校の学生たちが結構出入りしているので、変に目立つことがなかったのは救いだね。


「お待たせしてしまって申し訳ない」


 居心地の悪い思いをしながら待つこと数分、ようやく待ち合わせの相手が現れた。


「よく来てくれた。無理を聞き入れてくれてどうもありがとう」


 初手から低姿勢で挨拶をしてきたのは、あちらの学生会長さんだ。


「こちらの方こそ、色々とご面倒を掛けることになってしまってごめんなさい」


 田端会長が謝罪の言葉を返したことに続いて、ボクたちも全員で頭を下げる。

 無茶振りに近い提案をほぼ強制で受けさせられたのだとしても、先にやらかしてしまったのはこちらの方だからね。


「さっそくで申し訳ないけれど、控室に案内するよ」


 時間も人的な労力も余裕がないのだろう。そう言って歩き始める会長さんに続いて、ボクたちは敷地内へと足を踏み入れたのだった。


 と、まるで敵地へと侵入したかのように語ってしまった訳ですが、ここから先はとんとん拍子に事は進んでいった。

 演劇の内容に変更はなく、しかも昨日一昨日と何度も練習をしておりましたので。


 大道具なども既に昨日の段階で持ち込まれており、ドラマなどのようにそれらが紛失していたり破損していたりといった不測の事態も発生していなかった。

 仮にそんなことが起きればあちらの責任問題に発展するからね。ある意味当然と言えば当然の話なのです。


 まあ、中にはそれこそ高圧的な態度を取る人や、明らかにこちらを見下したような目をしている人もいたけれど、そういう連中はどこにでも一定数はいるものなので。

 大らかな心でもって華麗にスルーするのが一番ですよ。


 ただ、ですね。

 これは本気で想定外だったな、と。


「里っちゃんさんや、あちらに立派なビデオカメラらしきものが据え付けられているのですが?」

「うん、そうだね。……あれ?優ちゃん知らなかった?私たちの学校の学校際には毎年いくつかのテレビ局が取材に来ていて、ローカルニュースで放送されているよ」


 ああ、そう言えばそんな様子をテレビ越しに見たことがあったかもね、あはははは……。


 その日の夜、ボクと里っちゃんが大立ち回りをしているシーンが、複数のローカルニュースで大々的に放送されましたとさ。

 二人とも演劇二部に所属している訳でもないずぶの素人なのだけど、本当に良かったんですかねえ?


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[気になる点] >その日の夜、ボクと里っちゃんが大立ち回りをしているシーンが、複数のローカルニュースで大々的に放送されましたとさ そっちの方はネットへ放流したのと違って、ちゃんと許可を取ってある? …
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