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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十三章 暗い地面の下で

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475 不意討ちと不意討ち

 ちょっとー!?

 いきなり攻撃してくるとか無茶苦茶すぎるでしょうが!


 それに今の攻撃ってもしかしなくても『ドリル』の上位版の『レイ』じゃないかな!?各属性魔法の技能を上級まで強化させることでようやく習得できる高等魔法じゃないですかねえ!?


「んなっ!?人間だと!?お、おのれ、よくもこの俺を騙したなあ!!」


 へっぴり王子が何か言っているけれど、当然のように相手にしている余裕はないので無視ですね、無視。


「ロック様、そのようなことを言っている場合ではないかと……」


 部下の兵士その一からもたしなめられております。ちなみに、この時点でボクはまだ床を転がり中で、ミルファとネイトはようやく起き上がり始めたところだった。


「おい、貴様!なぜ勝手に攻撃をした!?自分の存在を伏すために隷属しているように見せかけてくれと言って、隷属の首輪を持ち込んできたのは貴様の方だろう!」


 兵士その二さん、サスペンスドラマで追い詰められた犯人ばりの解説をどうもありがとう。あなたのことは覚えている間は忘れないよ。

 そして彼の言葉通りであるとするならば、ローブの人物が隷属の首輪などという危険極まりない物の出所であるようだ。


 後はこの場にいるへっぴり王子様を焚きつけただけなのか、それとも反ドワーフ派全体を焚き付けたのかによって、便乗犯なのか黒幕なのかに別れるところかな。

 どちらにしても厄介で面倒で危険で邪魔な存在であることには変わりはなさそうです。


 いきり立つ兵士たちの視線を受けてもなんのその。ローブの人物は気にする風でもなく身を翻して部屋の奥へと向かっていったのだった。

 自由(フリーダム)か。しかし、上級魔法技能習得者を相手にまともにやり合って勝てる見込みなどないので、正直言って立ち去ってくれたのはありがたかった。

 隷属の首輪を付けられているおじいちゃんたち、という不安要素もあったし。


 もちろん、好き勝手やられて腹立たしいことに変わりはないけれどね!


 という訳で、この場にはボクたちとへっぴり王子一行が残されることとなった。


「お、お前た――」

「どうして二人に隷属の首輪を付けたの!?」


 あちらの台詞にかぶせるようにして、きつめの口調で問い質す。

 だって、ボクたちは連中の仲間でもなければ部下でもないので。律儀にあちらの言い分を聞いてやる理由もなければ義理もない。

 先ほどまでの調子から、この場所についてボクたちと同様かそれ以下の知識しか持っていないようだし、長々と相手をする必要はないと判断したのでした。


 一瞬むっとした表情を見せたものの、強者の余裕を演出しようとした――へっぴり腰のままだったのでまるで効果がなかったけれど――のか、不敵な笑みを浮かべながら王子が口を開く。


「ふん!そんなこと決まっているだろう。大国であるジオグラントの王子であるこの俺に楯突いたから、見せしめに隷属化してやったのだ!」


 ……ちょっと待って。

 今、見せしめって言いませんでした?


 え?まさかこの人、大陸中の冒険者にその名が知られている一等級冒険者のディラン(おじいちゃん)と、アンクゥワー大陸における『七神教』の最重要人物と言っても過言ではないクシア高司祭(おばあちゃん)の二人に、公衆の面前で隷属の首輪を取り付けさせたの!?


 うわー……。今頃首都のグランディオには『冒険者協会』と『七神教』の二つの超国家組織から苦情が殺到していることだろうね。

 案外これで中央の貴族たちも身動きが取れなくなって、ドワーフの里への嫌がらせなども解消していくかもしれない。


 そちらの方はともかくとして、要するにこのへっぴり王子は、自分の思い通りにならないことに腹を立てて、おじいちゃんたちを隷属化したということらしい。


「そんなこと……、そんなことのために……!」


 二人の虚ろな表情を見て、再び怒りの炎が燃え上がっていく。

 これはもう、一発お見舞いしてやらないと気が済まないよ!


「ミルファ、ネイト、援護をお願い」

「え?あ、ちょっと!?」

「お待ちなさい!……ああ、もう!」


 返事も反論も聞かずに、王子へと向かって走り出す。兵士たちがそれを塞ごうと動き始めていたが、虚を突かれたのかその動作は緩慢だった。


「貸しにしておきますわよ。【サンダーボール】!」


 ボクの頭上を飛び越えるようにして、ミルファが発射した雷属性を帯びた魔法の球が兵士たちの間に着弾して弾ける。


「ぐわっ!?」

「ぎゃっ!?」


 弱いながらもダメージを受けたことで動きが止まったその隙間を悠々と通り抜けて、王子の正面へと大接近です。


「思いっきりやっちゃってください。【アタックアップ】!」


 ナイスタイミングそしてナイスチョイス!

 驚き呆けているへっぴり王子を前に、ボクはニヤリと悪い笑みを浮かべていた。


「せー、のっ!」


 走り寄った勢いも乗せて振りかぶった右腕を思いっきり振り抜く。


「はぶぁば!?」


 バッチーン!と割とえげつない音を残して、王子は左頬にばっちりと紅葉の跡を付けて吹っ飛んで行ったのだった。


 あっはっはー!たかが平手打ち(ビンタ)と侮るなかれ。魔法によって強化されたことによってロンリーコヨーテ程度なら瞬殺できるほどの攻撃力となっていたのです。

 当の王子もかなりのHPを減少させていた。とはいえ、戦闘不能となるには至らなかったようで。

 そこは腐っても大国の王子ということみたいね。派手な鎧によってダメージの大半を止められてしまったらしい。


 頬っぺたを叩いたのに、鎧の防御力が影響するのはおかしい?

 そこはほら、ゲームですから。

 世の中にはローキックを当てたはずなのに、お腹を押さえて蹲るような反応をする作品だってあるのです。


 などとのんびりしていられる状況ではなかった。


「ロ、ロック様!?」

「おのれ、王子の敵討ちだ!」


 いやいや、殺してませんから。

 あっさりと抜かれて守護対象を傷つけられたことへの憤りもあったのだろう、兵士たちが真っ赤な顔で襲い掛かってきたのだ。

 ただでさえ二対一と数で不利な上に、これまでの連戦や探索の影響もあって完璧には程遠い状況だ。が、泣き言を言ってはいられない。ミルファたちが追いついてくるまで踏ん張らないと!


「悪いがそこまでにしてもらうぜ」

「女の子一人相手に二人で襲い掛かるなんてなってないねえ」


 と、場違いな軽い口調でその動きを止めたのは、隷属の首輪に囚われているはずのおじいちゃんとおばあちゃんだった。


〇各属性魔法の技能で習得できる魔法

 属性の種類は火・水・土・風・光・闇・雷の七つ。


・基本(〇属性魔法)

 ボール  …攻撃魔法。基本単体だが、着弾地点で破裂して周囲にも少量のダメージを与える。

 ニードル …攻撃魔法。針状になったものを多数飛ばす範囲攻撃。

 ドリル  …攻撃魔法。投げ槍のような形状にまとめた単体攻撃。名前の通り回転もさせられる。


・中級(中級〇属性魔法)

 ウォール …防御魔法。壁を作る。

 ウェポン …付与魔法。武器等に属性と魔法攻撃の特性を付ける。

 スター  …攻撃魔法。ボールの強化版。威力だけでなく弾ける範囲も増加。


・上級(上級〇属性魔法)

 レイン  …攻撃魔法。ニードルの強化版。範囲と数が増加。

 レイ   …攻撃魔法ドリルの強化版。回転はなくなったが、そもそもの貫通性能が高い。

 大規模強力魔法 …各属性ごとに異なるが、どれも読んで字のごとくな性能。強い。


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