472 隠れろ!
お? おおー!
ブックマークの件数が1000を超えているとな!(11月21日時点。減っていなければいいなあ……)
皆さん、ありがとうございます。
……ポイントの方も入れてくれていいのよ?
火力を高めて高温を生み出すことができれば、それだけ様々な種類の鉱物や金属を取り扱うことができただろう。
「高温にするやり方自体は集落に伝わる秘伝だとか言って誤魔化しておいて、緋晶玉のことやこの場所のことは秘密にしていたんじゃないかな」
対立しているとまではいかなくても、それぞれの集落がライバル関係にあったのであれば、そうした事情を秘匿していても不思議ではないと思われます。
「ドワーフの里に合流した際に秘密にしたのは何故なのでしょうか?」
「秘密を抱えていたことを後ろめたく感じて言い出せなかったのか、それとも逆にドワーフの里の中で自分たちが主導権を握るためだったのか。想像するだけならいくらでも理由を挙げることはできるけれど、それが当たっているのかと問われるとちょっと自信はないかな」
真実は過去の闇の中に消え去った、というところか。とはいえ実のところを言うと、そうした当時の状況を事細かく詳らかにするのが目的ではないので割とどうでも良かったりするのよね。
今現在のドワーフの里の進退に直結している、隠されていた秘密というのが何だったのかを知ることの方が重要なのです。
まあ、十中八九で緋晶玉関連のことなのだろうけれど。
「それじゃあ、探索を続けようか」
「その意見には賛成ですけれど、この空間にはこれ以上怪しい所もなさそうですわよ」
明らかに作業用の場所ということで、罠が仕掛けられていることもなければ貴重品が入った宝箱が設置されているなどということもなかった。
強いて怪しい所を挙げるならば、ボクたちが通ってきた非常用通路へと繋がる隠し扉があった壁くらいのものかな。
それとて現状では開かれているので、「怪しかった場所」と過去形の言い方をするべきかもしれない。
ちなみに、後は正式な出入り口へと繋がっているのだろう大き目の扉が一つあるだけとなっていた。
微妙に換気とかどうなっているのか?と突っ込みたくなるが、その辺りのアバウトさはゲームだからということなのかもしれない。
「その扉から先に進む、しか選択肢はないよねえ」
「来た道を戻ったところで、地上に出る手段がありませんからね」
うん。取っ掛かりもなしに垂直の壁を登るなんて技能もなければ、怪力もありませんので。
できることが限られていることに不安を覚えないではないが、選択肢すらない状況よりは幾分かはマシというものでしょう。
「ではでは扉を開ける……、前に向こう側の様子をできるだけ探っておかないと」
明けた途端に魔物さんとこんにちは、なんてことが起きないとも限らないからねえ。
これまで遭遇しなかったからと言って、これから先も魔物に出くわさないという根拠にはならない。
それに、ネイトが察知した集落に接近していた存在と鉢合わせしてしまう可能性だってあるのだ。少しでも多くの情報を仕入れておくに越したことはないはず。
ところが。
「って、言ったそばから扉が開きそう!?」
まさかまさかの事態が発生。向こう側にいる何者かによって開けられそうになっているではありませんか!
長年放置されていたことによって堆積した埃や細かな砂が噛んでいるらしく、ギシギシという音を立てながら扉が揺すぶられている。その様子からほとんど猶予がないことが伺われた。
「間仕切りされた小部屋……、へ逃げたところで隠れる場所がない?」
その上袋小路なので逃げ場もない。相手の力量や数次第では反抗もできずに取り押さえられてしまうだろう。
そうこう考えている間にいよいよ扉が開きそうになっていた。
「エッ君たちは『ファーム』に戻って。二人はこっちに!」
勘が閃くがままにうちの子たちに指示を出して移動させると、ミルファとネイトの二人を伴って壁際へと張り付く。
それと同時に轟音を上げて扉が開かれた。
「…………!!」
見るからに頑丈そうな金属製の扉が目の前にまで迫り、思わず悲鳴を上げそうになってしまう。
「お、おい!気を付けないか!どんな衝撃で崩壊するかも分からないのだぞ!」
「申し訳ありません!」
「し、失礼しました!」
どうやら無理矢理開けた勢いを抑えきれずに開いてきてしまったらしい。そのお陰でボクたち三人の姿は壁と扉で挟まれる形で隠されることとなったのだった。
蝶番が見えたので「内開きなら扉の陰に隠れることができるかも!」という予想が見事に的中した 形です。
対して、先ほどのやり取りから扉を開けた連中は最低でも三人はいるようだ。が、コツコツと響いてきた足音の数は明らかにそれよりも多かった。
うーん……。これは多少の危険を冒してでもあちらの様子を確認しておかないと、行動のしようがなさそうね。
ミルファとネイトも同じ考えだったようで、三人で顔を突き合わせて頷きあう。
トーテムポールよろしく扉の陰から顔だけを突き出して様子を探ります。
アニメ等であれば、ド・レ・ミ♪と音階の付いた効果音が流れたことでしょう。
作業場へと入って来ていたのは六人だった。その内先に立って奥へと進んでいた三名がきょろきょろと周囲を見回していた。しかし幸運なことにほぼ真後ろに当たるこちらにまで視線を向ける者はおらず、ボクたちの存在に気が付いた様子はない。
最前列の二人は同一の見た目の鎧兜を着用していて、その姿は兵士を連想させる。
どこかの私兵なのか、それとも土卿王国の所属なのかは定かではないけれど、この予想はまず間違ってはいないだろうと思う。
その仕えるべき相手なのだろうか、豪華というか派手な鎧を着込んだ男性がその後ろに続き、忙しなく周囲へと視線を配っていた。
こう書くと一角の人物のように思えるかもしれないが、実際には微妙に腰が引けており、見回す動きにも脅えが含まれているようだった。
こうした探索に慣れているようには到底見えないことから、冒険者ではなく兵士たちに身を守らせている貴人というのが適当な気がするね。
恐らく、先ほどの会話を行っていたのもこの三人だろう。
そんなちぐはぐな様でありながらもどことなく一体感のある前方三人組とは異なり、残る三人は動き易さを重視した軽鎧やら、裾が長いながらもこれまた動き易そうにまとめられた丈夫そうな衣服やら、頭まですっぽりとフードで覆われた怪しさ満点のローブ姿と、てんでバラバラな姿格好をしていた。




