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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十二章 山高く谷深い場所で

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461 休息後、探索再開

「突然の激戦お疲れさまでした。みんなが頑張ってくれたお陰で勝つことができたよ」


 色々と問題点や注意点もあったけれど、まずは強敵相手に誰一人欠けることなく勝利できたことを労い喜ぶべきだろうね。

 という訳でいち早く近づいてきたエッ君を抱きとめながら、仲間たちの輪に入っていく。


「ネイト、みんなの傷の具合はどうなってるかな?」

「あなたを除いて全員治療済みですよ」


 さすがはネイトさん。仕事が早いね。

 ただ、彼女はこっそりと人知れずに無理をするタイプなので、ちょっとだけ心配かな。


「了解。ボクの怪我は放っておいても治りそうなものだから気にしないで。リーヴとトレアを側に置いておくから、しばらく休憩しておいて。あ、時々〔警戒〕だけはしてもらえるとありがたいです」

「それくらいなら負担にはならないので、問題ありませんよ。魔物が近づいていないか、しっかり見張っておきます」


 実際ネイトの技能熟練度であれば、休憩中の片手間くらいであっても十分に効果があるだろう。


「うん、お願い。リーヴとトレアもネイトの護衛をよろしくね」


 HPは回復したと言っても負傷をした直後であることに変わりはないからね。こう言って役目を与えておけば、生真面目なリーヴも無理せず体を休めることができるはずだ。


 一方のトレアだけど、こちらは大きな怪我はなかったが仲間になってからまだ日が浅く、レベルも低めとなっている。

 連日の山歩きで体力を使っていたところに先の激戦となったことから、精神的にも疲労している可能性が高い。そのためそろそろ休息が必要になっていたはずだ。


 さて、対して残るボクたちですが。


「エッ君とミルファの二人も疲れているだろうけれど……、って、あんまり疲れているようには見えないね?」


 あれだけ激しく動き回らされた後だというのに、ミルファは「疲労?何それ美味しいの?」と言わんばかりにけろりと顔をしていた。

 それを見てエッ君も自分も元気だと主張するように足と尻尾をピコピコと動かす。どうやら抱き着いてきたのは単に甘えたくなっただけだったようだ。


「騎士たちの訓練には、フルプレートの鎧を着込んだまま数時間走り回るという過酷なものもありますのよ。それに比べればこのくらいの疲れなど大したことはありませんわね」


 それはもう、過酷を超えて地獄の訓練のように思えるのはボクだけでしょうか……。

 まあ、元気なのであれば頼み事もし易いということでポジティブに考えることにしよう。


「それじゃあ、二人はボクと一緒に探索の続きね」

「それは構いませんけれど、本当にこんな場所に何かありますの?」

「ボクたちの目的である浮遊島にどれだけ関係しているのかは不明だけど、何かが隠されていることだけは間違いないと思うよ」


 なにしろあんなインフォメーション(ヒント)が流れたくらいだもの。

 ……しまった!あれが聞こえるのはボクだけだというのをド忘れしてました!?


「リュカリュカがそこまで言うのですから信じることにしますわ。後は……、見つけやすい場所にあることを祈るばかりですわね」


 そう言って「フッ」と一つ軽やかに笑うと、ミルファはそのまま近くの建物跡へと向かったのだった。

 お、おおう!その信頼のあつさが嬉しい反面、ほんのちょっぴりプレッシャーに!これはもう、何が何でも何かを何としかして発見しなければいけなくなってしまいましたよ!?


 そんなボクの決意?が伝わったのか、エッ君もボクの腕の中からぴょんと飛び降りると、ミルファとはまた別の方角へとトテテと駆けて行く。

 ご主人様(テイムマスター)としては情けないかもしれないけれど、その意気で隠されている何かをぜひ見つけて頂きたいと心の中で応援するボクなのでした。


 三人での探索を始めて十分ほど経った頃、大きな建物跡の一角に妙な部分があることに気が付いた。


「ミルファ、エッ君。ちょっと来てー」

「どうかなさいましたの?」

「ここ見て。周りに比べてここだけは草の茂り方が弱くないかな?」


 周辺はそれこそ建物の基礎になった石材の類ですら碌に見えなくなるほど雑草が生い茂っているというのに、この場所だけはそれなりに地面が見えていたのだ。

「本当ですわね。何が違っているのかしら?」


 既に一度探索で土まみれになった上に二頭の六つ足熊さんとの戦闘で汚れてしまったこともあって、ボクたちは汚れるのを気に留めることもなくその場に(ひざまず)いた。


「あれ?ここだけ土の色が違ってない?」


 草をかき分けたりしてよく目を凝らしてみると、草が余り生えていないその一角の地面は、他に比べると白っぽいことが見て取れた。


「感触もこちらの土の方がサラサラしていますわね」


 ミルファに言われて触り比べてみると、白い土の方は粒子が細かい割に水分の保有量が少ないのか乾ききった砂のような手触り具合だった。


「うーむ……。ん?」


 地面ばかりに注意を払っていたから見落としていたけれど、この周りだけやけにしっかりと石組が残っているような?しかもなんだか所々黒ずんでいる気がする。

 と、ミルファたちに説明してみたところ、


「わたくしが知る限りこれに一番近いのは、すす汚れかしら。日常的に火を焚いていた場所だったのではなくて。……だとすれば地面の白っぽい砂のようなものは、灰だったものかもしれませんわね」


 なるほど。灰に覆われていたから雑草も生えにくかったのかも。


「日常的に火がたかれていた場所となると、炊事場とか台所のかまどか何かだったのかな?」


 石窯という可能性もあるかもしれないね。


「……かまどや窯であれば、灰を掻き出さなければ使えなくなってしまいますわよ」

「あ……」

「リュカリュカは時々本当にとんでもない世間知らずになりますわね」


 はぐう!

 クンビーラ公主の血筋で箱入りお嬢様――最近は怪しく思えてきてしまうけれど――のはずのミルファに世間知らずと言われてしまった……。


 ガクリと膝をついて項垂れていると、何かの遊びと勘違いしたらしくエッ君がてこてこと近づいてくる。


「エッ君、ボクはもうダメかもしれない。ボクがいなくなってもリーヴとトレアの二人と一緒に頑張って生き抜いていくんだよ……」


 そんな卵ボディをガバッと抱きすくめて深刻そうに告げてみたのだが、やっぱり遊びだと思われたのか、本気にすることなくワチャワチャと楽しそうに尻尾を振るばかりだったのでした。

 いや、もちろん単なるおふざけなのだけれどね。


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― 新着の感想 ―
[一言] ……この廃墟内のどこかに、地下がありそうだ。 その臭いを嗅ぎとって、クマが来ていた……ってこじつけも考えられる。 探すのに楽そうなのは、辺りに水をぶちまける方法かな? 水の流れ(広がり)…
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