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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十二章 山高く谷深い場所で

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460 ヒント頂きました!

 消えゆくマーダーグリズリーの姿を見ながら、誰からともなくその場に腰を下ろしていく。


「よ、ようやく終わった……」


 さすがに今回は疲れましたわ。完全な安全地帯だと気を抜いていた訳ではなかったのだけれど、まさかここまで強力凶悪な魔物をぶつけられるとは思ってもみなかったよ。

 と、疲れ果ててぼんやりしていたところに……。


《特殊ランダムイベント『不法占拠者を追い払え』が完了しました。結果を精査しています。しばらくお待ちください》


 あー、うん。やっぱりというか、いつもの通りだったね。ある意味予定調和と言えるのかもしれない?

 まあ、とりあえず怪我はあったけれど――それもリアルとは違って魔法やアイテムで感知できるのだから、ゲームって便利だ――誰もやられることなくクリアすることができたので、結果オーライというところかな。

 魔物との戦いはこれまでの道中にも何度も発生していたことだし、タダで何かしらのアイテムを貰えることになったと思えば、そう悪いことでもないでしょう。

 もっとも、そう考えでもしないとやっていられない、という部分も確かにあるのだけれどね……。


 ところで、放棄されて久しい集落跡――前にも言ったが、規模的には村跡といった方が適切な気がする――なのに不法占拠という言い方は少しおかしな気がしないでもないよね。

 これではまるで、この場所を何かに利用することを前提としているようではないですか。


 一体全体これはどういうことなのだろう。などと考えていたところにインフォメーションの続きが頭の中に流れてくる。


《精査が完了しました。結果を発表します。

 対象の魔物…討伐。ボーナスとして技能ポイントを一個お送りします。また、プレイヤー側の戦力に対して著しく強力な魔物が選択されていたため、技能ポイント一個を追加としてお送りします。

 NPC…死傷者なしですが、そもそもプレイヤーパーティーのみのため、この項目自体を無効とします。

 施設…被害なしですが、破壊にデメリットが伴うものを発見できていないため、この項目自体を無効とします》


 一つ目はともかく、無効にするなら残る二つは記載しなければ良かったのではないのでせうか?

 元々タダでもらえるボーナスというつもりだったとはいえ、色々と無駄になってしまったように思えて、徒労感が半端ないんですけど……。


「そういえは特殊ランダムイベントって書いてあったっけ。トレアと出会った時のような長期イベントの最中に起きる特殊なもの扱いだった?」


 今回のボクたちの旅はドワーフ里からの依頼こそないけれど、彼らが暮らしていた旧集落に隠されているだろう謎を解くためのものだ。

 さらに言えばワールドイベントの『天空の島へ至る道』を進めている真っ最中ということで、特殊イベントが発生する条件に合致していると考えられます。


 要するに、話の展開次第では同行者のNPCがいたりだとか、宿泊場所として利用していた山小屋のあった場所だったりで、この特殊イベントが発生したかもしれないということなのだろう。


 ちなみに、アッシュさんたちの護衛は個別のイベント――『冒険者協会』を通したから依頼(クエスト)としてだけれど――として扱われたのに対して、今回の旅は実はイベントとして成立していなかったりするのよね。


 これは『空を征く船』といういかにも空飛ぶ島に関係しそうな内容だったから、多分ワールドクエストに吸収統合されているのではないかと予想していています。

 まあ、まったく見当違いの方向へと突っ走ってはいないと思いたい、という気持ちがあることは否定しないけれど。


 おっと、無軌道に広がっていく思考を元に戻しまして、と。

 結局のところ、イベントが発生するためには下地が必要であり、この場所はそうした条件をクリアしているということになるのだと思う。

 つまり、


「探せば何かが出てくる確率が高そうですなあ」


 ということではないかな。

 いやあ、演出とは異なるシステム面からヒントが貰えるとはラッキーだったね。思わず口角が上がってしまいそうですのことよ、うふふのふ。


 ただ、不具合の可能性もあるので運営へ報告もしておくけれど。

 べ、別に「他のプレイヤーの皆を苦労させてやろう」だなんて底意地が悪く狭量な考えを持っていた訳じゃないからね!?

 一応これでも有名プレイヤーの端くれで、その上『冒険日記』の提出と引き換えではあるけれど、運営からは少しばかりの優遇を受けている身だから、こういうことはしっかりと報告しておく義務があったりするのですよ!

 本当なんだからね!


 さて、脳内でのコントはこれくらいにしておくとして。

 時間が経過したことで仲間たちも疲労が抜けて動けるようになってきたらしい。一人また一人と立ち上がっては、ネイトの側へと集まっていく。


 邪推する人がいるといけないので説明しておくと、別にボクが嫌われているとかそういうことではなく、ネイトは戦いの終盤で痛手を負ってしまったリーヴの治療に当たっていたので、みんなその容態を知りたいと思っていたというだけの話だ。

 NPCとテイムモンスターという違いなど一切感じさせずに仲良くしてくれているのは嬉しい限りだね。


 加えて、戦っている最中に移動していたのか、ボクを含む前戦組が腰を下ろしていたのは集落跡に隣接する元畑区画近くだったことも関係していた。

 元々は丹精込めて育てられていたのであろう植物たちは、放置されていた長い年月のうちに半野生化していて並の藪などでは太刀打ちできないほどに盛大に茂っていたのだ。

 つまり、何かが潜んでいても簡単には見つけられない状態であり、距離を取ろうとする仲間たちの心理は至極真っ当なものだったという訳だね。

 逆に言えば、すぐにはそれすらもできない程、先の戦いでは全員が疲弊してしまっていたのだった。


 それではボクもそろそろみんなに合流しようか。……おっと、その前に周囲に魔物がいないかを探っておかないと。

 ネイトに比べれば劣ることになるけれど、彼女がリーヴやみんなの治療に当たっている以上、ボクがその役を担わなければいけない。

 仲間たちを中心に十メートルほど離れてぐるりと円を描くように移動しながら、〔警戒〕技能で周囲に潜んだ魔物がいないか注意深く探っていく。


 幸いにも怪しい気配はなく、激戦の後に連戦という事態は避けることができたみたい。


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