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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十一章 ドワーフの里で

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434/933

434 順番に倒しましょう

「ひらり♪」


 高速で空から降ってきた何かを軽やかにかわす。

 擬音語を口で言い表せるほどの楽勝具合です。


 見下ろせば天から堕ちてきた哀れな存在こと、ダイヴイーグル君が身体を伸ばしきったまま嘴を地面に突き立てるというポーズで固まっていた。

 ううむ。相変わらず戦闘の緊迫感を消し飛ばしてしまいかねない凶悪な面白光景さだわね。


 ちなみにこれ、動()ないのではなく動()ないというのが正解であるらしい。

 まあ、超が付くくらいの高速で空から落ちてくる訳だから、その衝撃はとてつもない威力ということなのだろうね。


 予定通り全員による本気の集中攻撃によってマーダーグリズリーを瞬殺することができたボクたちに、次に襲い掛かってきたのがこのギャグ担当、ではなくダイヴイーグルだった。

 しかしながら彼の得意技は一直線で急降下してくるというものなので、見えていれば回避はそれほど難しいものではなかったりするのよね。


 そして必殺の一撃であるがゆえに避けられてしまうと立て直すこともできず……。

 突き刺さって硬直しているところをボクたちに総出で攻撃されて、ダイブヴイーグル君は早々(はやばや)と退場となったのでした。


「よし!これで残るはロックリザードが三体だけだね」


 もっとも、そのロックリザードは生半可な攻撃など全て跳ね返してしまうほどの堅い外皮に覆われている。

 どれほどの堅さなのかというと、闘技なしでのボクの攻撃ではかすり傷くらいのダメージしか与えられないレベルで、トレアの攻撃に至ってはまったくの無傷という有り様だった。

 そのため、まだまだ気を抜くことはできない状況です。


 それでも最悪のパターンだった乱戦を回避できたのは大きい。

 思い浮かべてみて欲しい。他の魔物と戦っている時にそんな面倒な相手が後ろまたは横から不意打ちに近い形で攻撃してくる様を。


 もう分が悪いとかそういう次元の問題ではない状況だよね。

 その上、空ではダイヴイーグルが隙あらば強襲しようと虎視眈々と狙っているというオマケ付き。もはや嫌がらせの境地ってなもんです。


 余談だけど、仲間全員の全力全開であっさり仕留めたように見えるマーダーグリズリーだが、あれだって本当は並大抵の強さでは太刀打ちできないほどの凶悪な魔物だったりするからね。

 言い方を変えるならば、全力全開で全ての攻撃を集中してやらないと倒すことができない強者(つわもの)なのだ。


 実際にここまでの道中での遭遇戦で、ミルファやエッ君、さらにリーヴまでもが瀕死に近い大ダメージを負っている。

 四本の前足から繰り出される熊パンチ四連撃は圧凶悪の一言でしたよ……。


 加えて、公式掲示板の人気スレッドの一つである『笑いたければ笑え!公開敗北動画集』によると、さらに極悪な熊くまラッシュなる技までも持ち合わせているらしい。

 フルプレートメイルを着込んだプレイヤーですらその一回で敗北してしまうという極悪性能っぷりだが、こちらは『リーダー』のような特別な個体のみが使用できる特殊なものとのこと。……怖っ!?


 おっとと、いけない。今は出会ったことのない魔物のことよりも、目の前にいる魔物を殲滅することを考えないと。

 幸いにも隙をついて攻撃してくるようなこともなく、ロックリザードは三体とも岩への擬態を続けていた。


「リュカリュカ、どこにいますの?」


 ミルファに問いかけられ、〔警戒〕を頼りに正確な位置を割り出していく。

 ロックリザードあの擬態は技能の〔気配遮断〕の強化版のようなもので、〔警戒〕などの対処法がなければ、漠然とした「なにかいる?」という感覚止まりとなってしまうのだ。


「えーと……。ああ、あそこ!寄り添うように三つの岩が並んでいるのが見えるかな?」

「ん……、あれですわね!……しかしいつも思うことですが、気が付いてみれば違和感があるのがはっきりと分かりますわね」


 しかし、一旦認識してしまうとミルファの言ったように違和感有りありとなってしまうのだった。

 リアルでも同じような経験をしたことがある人は多いのではないかな。ほら、どうしてこれを見つけられなかったのだろう?と不思議に思えるような場所に探し物があった、とかね。


 ということで、相手の居場所が分かっているという点では五分の状態に引き戻すことができていることになる。

 魔法やトレアの弓といった遠距離攻撃手段があるので一方的に攻撃できる分有利に思われるかもしれないが、これでも精々が敵方の持つ頑丈な外皮と相殺というところだろう。


「まあ、でも、攻略法がない訳でもないしね」


 要はその堅い殻をなんとかしてやればいいのだ。

 しかも特化したものがある反動を表現しているのか、同じ生息地域の魔物に比べてロックリザードのHPは極端に低く設定されていた。

 よって、ダメージさえ通すことができれば案外何とかなる敵だったりする。


 そしてこちらには〔強化魔法〕で仲間の攻撃力をアップさせることができるネイトとリーネイがいるどころか、防御力低下効果を備えた闘技【ディフェンスブレイク】を使用できるリーヴまでいるのだ。

 ついでに言えばボク、ミルファ、エッ君の三人は防御力無効の闘技を使える。

 負ける要素がない、とまでは言わないが、勝利するための強力な手札が何枚もある状態なのだ。


「ネイトとリーネイはそれぞれトレアとエッ君の攻撃力アップをお願い。囲まれたり連携を取られたりすると面倒だから、ミルファにリーヴとエッ君の三人はできるだけ一対一になるように位置取りをお願い」

「了解ですわ。……ところで、あなたはどうするおつもり?」


 ミルファの言葉にニヤリと笑う。


「せっかく集まってくれているんだから、三体まとめて攻撃しちゃおうかなと思って。風が弱点属性みたいだし、限界ギリギリまでMPを過剰積み込み(オーバーロード)させてやれば【ウィンドニードル】でも大ダメージを狙えるんじゃないかな」


 これまであまり気にしてこなかった――そこまで頭を回す余裕がなかったとも言う――のだけれど、実は大半の魔物には得意属性というものがある。

 さてさて、すっかりド忘れしてしまっているかもしれないが、雷を除いた残る六つの属性にはそれぞれ有利、不利な関係があるのだ。

 例えば火属性の場合だと風属性に有利で水属性に不利になる、という具合だ。


 そしてロックリザードは名前から分かるように土属性となっていて、風属性に不利となっていた。

 MP切れとなってもドワーフの里のすぐ側なので、仮に新たに魔物が出現したとしても街の中に逃げ込んでしまえばいい。

 ここまでお膳立てされているからには、やらない訳にはいかないよね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 硬い敵と戦う場合は、 目だ、目を狙え。 他の部位より、間違いなくダメージが通る。 ……トレアなら多分射抜けるでしょ(なげやり)
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