表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十一章 ドワーフの里で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

431/933

431 一等地の条件

 トレアをテイムしてから二日後の午後のこと。ボクたちはようやくドワーフの里が見える場所にまでやって来ていた。


「おー、あれがドワーフの里ですか。……なんか小さくない?」


 そこは山々に囲まれた盆地のような地形だった。

 ちなみに、今ボクたちがいるのはその取り囲んでいる大和山との間の稜線上なので、里までは後一歩というところだね。


 まあ、それはいいとしまして、問題は見えている建物の数だ。想像していた以上に少なく、これでは精々が中程度の町くらいでしかなかった。

 隠れ里ならそれでも十分な規模といえるのかもしれないが、『土卿エリア』随一のドワーフたちが集う場所としては物足りないように思えるのだった。


「それは、ここから見えているのは表向きの街だからさ」

「表向き?」


 何ですか、ということはイリーガルでアウトローな裏の顔があるってこと?

 そりゃあ、武器や防具などを製作している訳だから、リアルで例えれば兵器関連部品の工場がある街のようなものだ。表沙汰にできない取引等が行われていたとしても不思議じゃない、ような気もする。


「こらこら。その言い方だと誤解を招いちまうだろうが。リュカリュカちゃん、見えているのは全部商店や鍛冶屋に宿屋、それに役所関係の建物ばかりなんだよ」


 アッシュさんの追加で説明によると、住居など一般の里の人たちの施設はすべて地下というか山の中にあり、見える場所にあるのは外部との交易のための施設や、公共の施設が大半を占めているのだとか。


「ああ、つまり外向きの街、ってことですね」

「そういうことだな」


 ただし鍛冶屋だけは例外で、こちらは水路や換気さらには騒音対策などの都合から、地表にある工房が一等地という扱いになっているそうだ。

 そのため特に優れた一流の鍛冶師だけがこちらの工房区画に居を構えることができるようになっていて、ドワーフ職人たちにとって憧れの場所となっているのらしい。


「普通に足を延ばせる場所に一級どころかそれを超えるような品が平然と置かれていることもあるから、目利きを鍛えるのにも都合がいいんだ」

「とはいえ、残念ながら俺たちには装備品を見極める目はなかったみたいだけどな」

「ない物ねだりをしても始まらないだろ。鉱石だとか素材を見る目は一応あったんだから、それで何とかやっていくしかねえさ」


 才能がないと分かってもくさることなく、できることをやって曲がりなりにも利益を上げ続けている行商人トリオは立派だと思う。


 それにしても目利きかあ……。確かミルファがそのままの名前の技能を持っていたはずだし、いざとなればボクの〔鑑定〕技能だってある。

 上手く掘り出し物を見つけることができれば、安く装備を整えることだってできてしまうかもしれないね。


「そろそろ街に向かいませんこと?あまり長居をしていては、また魔物に襲われてしまうかもしれませんもの」

「私も彼女の意見に賛成です。まだ距離は離れていますが、いくつか魔物の気配がしています」

「おっと、それはいけない!さっさとドワーフの里へと入ってしまおう!」


 こうしてボクたち一行は街の入り口へと、てってこ坂道を下っていくのだった。


 さて、ここで少しこの二日間の出来事をまとめておこう。

 まずはなんと言ってもトレアと出会ったあの一件のことからだね。彼女とは偶然遭遇した……、訳ではなく、ランダムに発生するイベントによるものだったのだ。

 あれ?ランダムだから偶然であることには変わりはないのかな?


 実は『OAW』には、長期のクエスト中にランダムに発生するという特殊なイベントがいくつか存在していた。

 例えばボクたちが請けていたような護衛の依頼だと、盗賊の集団に襲われるだとか、追加で商品を確保しなくてはいけなくなるといったイベントが発生したことがあるそうだ。


 そんなイベントの一つに『お腹が空いた……』というものがありまして。

 はい。トレアと出会った時の状況そのままですね。


 ただし、掲示板でのまとめによると約八割が魔物との戦いで怪我をして動けなくなった冒険者――その内半数がベテランクラスのおじさんで、二割が新米イケメンお兄さん、残る三割がそこそこな腕前の美人お姉さん――で、助けると一時的に護衛のお手伝いをしてくれるようになるのだとか。


 残りの内一割がこれまた魔物に襲われて壊滅したキャラバンの生き残りで、この場合は助けると護衛の完了時に追加ボーナスが発生するようになる。


 最後の一割がボクの引いたものと同じく魔物で、こちらは助けると屋外の戦闘でピンチになった時に一度だけ助けにきてくれるようになるらしい。

 冒険者のパターンと違って時間と場所に制限がなく、一月後とか忘れた頃になって助けられたというプレイヤーもいるそうです。


 選ばれる魔物はその地だけではなく近辺からということになっているため、ケンタウロスだったことに特におかしな点はなかった。

 女の子だったのはちょうどその数日前のアップデートの際にこっそりと魔物の女性が登場するような更新が行われていたからだそうだ。

 しかしまさかその登場第一号をボクが引き当て、その上テイムしてしまうとはAIであるアウラロウラさんたちを含めた運営の誰一人として予想していなかったようで。


 これは本当におかしなバグが存在しているのかもしれないということで、『笑顔』のスタッフに出張してきてもらって色々と調査を行ったそうです。

 平日の日中に行ってくれたのは、こちらのゲームができる時間を考えてのことだったようです。

 しかし結局おかしな所やまずい部分は一つも発見できず、「何の成果も得られませんでしたー!」とやけっぱちな口調で報告して帰っていったらしい。

 まあ、そこのところはアウラロウラさん流の冗談なのだろうけれど。……冗談だよね?


 そしてこれらのことを『冒険日記』に書いたところ、プレイヤーたちから新たに『レアイベホイホイ』なるさっぱり嬉しくない二つ名を贈られることになってしまったのだった。


「同じレアでもレアアイテムが発見しやすくなるとかなら良かったのに……」

「いえ、それだと本気でゲームバランスが崩れてしまいかねませんので。ですが、既に二つもグロウアームズを入手していることですし、今の内に何かしらの手を打っておいた方が良いのかもしれませんね……」


 冗談半分で言った呟きを拾ったアウラロウラさんが、真剣に考えこむなんて出来事があったとかなかったとか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 約半分の確率でベテラン冒険者に恩を売れるとは...最高の偶発イベントでは?
[一言] 高運命力持ちじゃなきゃ、主人公張れませんって。 『マスクデータ(公開されない隠しデータ)に、運命力が存在します』とかって公式に発表させれば、良いんじゃないですかね? しかもアカウント紐…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ