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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十章 土卿王国の旅路

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428 もうすぐ文化祭

 体育祭や校外学習に文化祭もしくは学園祭と、秋は学校行事が多い季節だ。

 ボクや雪っちゃんが通う高校でも、そして里っちゃんが通う高校でもそれは変わらない。ああ、でも、春に新入生の歓迎を兼ねて体育祭を行っているボクたちの学校はまだゆとりがあると言えるのかもしれないね。


 一年生なのに春から学生会に所属している里っちゃんは、諸々の行事の準備や根回しに、片付けや反省会と――え?不穏当な単語が混じっていたって?あはは。気のせい、ではないです。一体何をやっているんだろうね、あの子は……――まさに目の回るほどの忙しさであるらしい。


 当然ゲームをする暇もなく、時折ボクに「どこか誰も知らないような場所に行きたい……」とちょっぴり危なげな文面のメールが届くほどだった。

 『笑顔』で『新天地放浪団』なんていうギルドのマスターを務めていたのは、単なる趣味だけではなくリアルでのストレスを発散させる意味合いもあったもようです。


 さて、話をうちの学校の、ボクのクラスのことに移そうか。

 約一月後に文化祭が迫ってきていたこの日、ボクが所属するクラスでは放課後直前のロングホームルームで当日の出し物についての話し合いが行われていた。


「それでは多数決の結果を発表します」


 黒板の前に立った文化祭実行委員の長谷(はせ)君がそう言うと、ノリのいい男子数名が「でれれれれれれれれ……」とドラムロールらしき音を口ずさんでおります。

 もっとも統一されずに好き勝手に「どるるるるるるる……」とか「たららららららら……」とも言っていたので、合わせて謎の怪音波になってしまっていたけれど。


「えー……、うちのクラスの出し物は、『キーホルダー釣り』になりました」


 苦笑しながらも話を進める長谷君。まあ、これくらいなら茶々の内にも入らないからね。


 そして『キーホルダー釣り』ですが、こちらは読んで字のごとくで、釣り竿に見立てた棒の先に糸と鉤状のフックを取り付けて、魚ならぬキーホルダーを釣ってもらおうというものだ。

 キーホルダーには鍵を取り付けるための輪っかなどがあるから、フックを掛けやすいようにいい感じに立ててやればそれだけで準備完了というお手軽仕様だね。


 お土産などで貰ったのはいいけれど、使われずに埃をかぶっているキーホルダーを持ち寄って再利用してしまおうという魂胆です。

 まあ、さすがにこれだけだと手抜き過ぎなので、プラ板で手作りキーホルダーも作る予定だけれどね。

 こちらは吸盤付きフックでも張り付けてやればオッケーでしょう。フックの大きさや形を変えてやれば、多少は難易度に変化をつけることだってできるはずだ。


「これなら遊び要素もある上、記念にもなるから売上金上位を狙うこともできるはず!」


 と、クラスメイトの一部が燃えているのも仕方のない話でして。

 売上金の上位となったクラスやクラブには、商品として協賛してくれている地元商店街で使用できる割引券が贈られるからだ。

 しかも一人当たり千五百円分の大盤振る舞いとなります。


 もちろん一回での利用金額の上限に制限を設けるなど商店街側が損するようにはなっておらず、学生が繰り返し訪れることで地元を活気づかせる狙いもあるそうだ。

 それでも特に、エンゲル係数が高くなりがちな男子や運動部所属の女子たちにとってはありがたい仕組みになっているようでして。


 ちなみに売上金と言っているが、実際には原材料費を始めとして諸経費分は引かれるようになっている。つまり、人件費を除いた純利益ということになるね。

 さらに余談だけど、打ち上げ費用として学校が許可している五千円を上回った分は、全て有名どころのチャリティー事業へと寄付されるようになっている。


「でも、集客が上手くいくかどうかは他のクラスの出し物次第なところもあるんじゃない?」

「部活組がどれだけ誘導させられるかにもよるだろうなあ」


 ボクたちの学校では部活、特に運動部が食べ物系の屋台を出すことが多く、クラスでの出し物は一部が休憩場所を兼ねた喫茶店っぽいものを開く以外は、もっぱら物品販売の出し物をするのが伝統となっている。

 別にクラスで屋台や食べ物を指すことが禁止されている訳ではないのだけれど、それぞれの部ごとに長年先輩から後輩へと伝わってきている伝統の一品を持っているため、生半可な商品では太刀打ちができないのだった。


 まあ、祭りとして楽しむ分にはそれでも十分な利を上げることはできるようなのだけれどね。

 どうせやるなら売上金上位を目指したいという人が多いようで、のんびりエンジョイ勢なクラスは毎年ごく少数となってしまうのだとか。


「プラ板でどれだけの数を作るのかは、皆がキーホルダーを持ち寄ってからでもいいんじゃないか?」

「あまり少な過ぎるのも問題よ。そういうお手製の物を好む人も多いだろうし」

「元にするイラストくらいはあらかじめ決めておくべきじゃないかしら」


 基本的にはネット上に公開されている、代金いらずで利用責任も発生しないフリー素材を使用することになりそうだ。

 が、そういった素材も大量にあるからね。あえて担当になった各人に選択を任せるというのも面白いかもしれないけれど、極端に売れ残ったりすると後々の不和の元になってしまう可能性もある。

 せめて大枠として、いくつか種類を決める程度のことはしておいた方が良さそう。


 そう思って発言してみたところ、クラスメイトたちにはすぐに受け入れてもらえたのだった。

 しかし、そこからが大変だった。


「そこはやっぱり子ども受けしそうなアニメとか漫画のキャラが一番だって!」

「いやいや。うちの学校、来場規制があって子どもだけじゃ入れないから」


 正確には子どもだけではなく大人もとなります。

 基本的に来場が許されているのは学生の家族だけで、他には数名の来賓と協賛してくれている地元商店街の皆様くらいなもので、完全な部外者は絶対に立ち入れないようになっている。

 大らかな校風のところや地元との関係を密にしているところだともっと規制が緩やからしいのだが、田舎の保守的な思想が根強いこの地域ではなかなか門戸が開くことは難しいようす。


 余談だけど、他校の学生は同年代に限り認めるということになっている。

 が、制服着用の上に学生証を携行していつでも見せられるようにしておかなくてはいかなかったり、こうした学校行事は日程が重なっていたりすることも多いので、よほど中学時代に仲が良かった友人などでもない限り、やって来ることはないという話だった。


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