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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十章 土卿王国の旅路

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421 山道は続くよ

 ウーの街を出発してから二日目。

 今日も今日とてえっちらおっちら山道を進んでおります。

 そしていざ乗り込んでみて分かったことなのだけれど、これまでの旅路とは大きく異なり、山道に宿場町などは存在していなかった。


 まあ、よくよく考えてみれば当たり前と言えば当たり前の話だったんだけれどね。

 所々では馬車がすれ違える程度の幅があるとはいえ、山こえ谷こえの険しい道なのだ。周囲は当然緑もまばらで耕作に不向きな土地ばかりが広がっていて、とてもではないけれど村や集落などを作れるほどの環境ではなかったという訳です。


 その上、地下通路を使用することさえできれば一日でドワーフの里にまで辿り着けていたこともあって、危険で厳しい環境下の場所にわざわざ人を配置する理由がなかったのだった。


 もっとも、リアルだとあえてそうした場所で放牧させて、刈り取る毛の品質を高めたりしているそうだけど。

 と、そんなリアル側の事情はさておきまして。

 宿場町がない代わりと言っては何だけれど、山小屋のような施設が準備されておりました。


 そう言えば聞こえが良いが、実際のところは建物だけがぽつんと一軒家な状態で存在しているだけだった。

 それこそ地下通路が完成する以前には管理人もいたようなのだけれど、近年では色々と割に合わないということになったのだろう、風雨にさらされて廃墟一歩手前という有り様になり果てていた。


 それでも、雨風を防げてしかも魔物の襲撃に怯えなくてすむのだから、取り壊さずに放置してくれた先人たちには感謝しなくてはいけないのだろうね。

 お陰でしっかりと夕食を食べることもできましたので。


「宿場町で食べる飯よりも、リュカリュカちゃんたちが作ってくれた昨日の飯の方が美味かった件」


 突然荷馬車で休憩中のヴァイさんがそんなことを言い出した。

 振り返ると昨晩の余り物で作ったサンドイッチを片手に、やけに真剣な顔をしているではありませんか。


「突然どうした?……って聞くまでもなかったな」

「言いたいことはよく分かるぜ。確かに下手な宿場町で出される飯よりも、昨日の飯の方が確実に美味かったからな」


 ボクと同じくエクスカリオン君に並ぶようにして歩いていたインゴさんが声を上げるも、その様子を見て何かを悟ったらしい。

 さらに御者台に座り手綱を手にしていたアッシュさんも、ヴァイさんの言葉に同意していた。


「そうかなあ?これまでにボクたちが立ち寄った宿場町のご飯は結構美味しく頂けたよ?」


 多分、クンビーラでソイソースなどの使用方法を広めたりうどんを流行らせたりした影響が出ているのだろうと思う。


「ですが、シャンディラの支配地域に入って以降は少し味が落ちていたような気もしますわ」

「一定以上の規模の街であれば、さして違和感もなかったのですけれどね」


 先頭を歩くミルファが言うと、後方にいるネイトもそう続ける。

 言われてみると最近は少し味が落ちていたかもしれないような気がしないでもないように思えなくもないかも?

 それ以前にシャンディラに到着してから後は何だかドタバタしてしまい、ゆっくりとご飯を味わう機会が少なくなってしまっていたように思う。


「でも昨日のご飯なんて、ファットダックのお肉をソイソースやお酒やお砂糖とかを合わせたテリヤキ風のたれをからめて焼いただけだよ」


 確かに調味料類のバランスや焼き加減には気を配っていたけれど、逆に言えばそのくらいしかこだわってはいないのだ。

 野菜類などはアイテムボックスに入れておけば新鮮なままであるのをいいことに、切ったりちぎったりして生のままサラダにして提供していた。


 ちなみに、今日のお昼はパンにそれらの残りを適当に詰めたものとなっております。


「いやいや。十分に金を取れるレベルのものだと思うぜ。これだってパンにたれがしみてめっちゃ美味い」

「おい止めろ。俺がその飯を食えるのはまだだいぶ先なんだからな」


 幸せそうにサンドイッチにかぶりつくヴァイさんに、インゴさんが速攻で突っ込みを入れている。

 まあ、他人が食べているものってやたらと美味しそうに見えてしまうよね。ボクも同じく昼食の順番までにはまだかなりの時間があるので、気持ちはよく分かりますとも。


 こんな風に雑談にふけりながらも、〔警戒〕を活用して周囲への注意は怠っていない。むしろ〔警戒〕技能がなければなかなかに辛いことになっていたかもしれない。

 それというのも、尾根伝いの時は見晴らしが良いのだけれど、逆に谷沿いや沢沿いとなってしまうと途端に視界が狭くなってしまうからだ。


 加えて、隊列の方も不意討ちを受けた場合を想定していた。

 先頭と最後尾にそれぞれ守備力が高いミルファとリーヴを配置し、さらに荷馬車を挟むようにしてボクとネイトが前後に着く。エッ君は魔物からの襲撃に臨機応変に対応ができるように荷台の上だ。

 本当はネイトも荷台に乗せておきたかったのだけれど、「後方からの魔物が多かった場合は魔法で足止めをさせる役が必要になる」と説得され、こういう配置となったのだった。


「なんだか手が足りない気がしてくるなあ。テイムモンスターの数を増やしておいた方が良かったかも?」


 レベルが十五に上がったことで、テイムできる数が一体増えていたのだ。

 が、どうにも波長の合う相手と出会えずにそのままとなっていたのだった。


 もちろん、いざという時には最終秘密兵器であるチーミルとリーネイも呼び出す予定でいるけれどね。

 そのために経験値の入り方がばらけてしまうのは覚悟の上で、パーティーをボクとうちの子たち、ミルファとネイトコンビの二つに分けておいたくらいなのだから。


「今さらの話ですわね。けれどいずれはテイムすることになるのでしょう?」

「今からどのような魔物が良いかを考えておくのはアリですね。これまでは成り行きに任せていましたが、今度はこちらからテイムをしに行ってみるというのはどうでしょう」


 おや、ミルファとネイトがノリノリだ。

 だけど二人が言うことも一理あるかもね。


「そうだなあ……。これまで実際に旅をしてみて、歩いて移動を続けるっていうのは結構大変だって分かったから、今度テイムするなら荷車を引けるような子がいいかもしれない」


 そうするとエクスカリオンのような馬とかロバとか、そっち系統の魔物になるかな。


「あ、でも戦力としても活躍できる方がいいよね」


 ボクたちのパーティーはどちらかと言えば前衛向きのメンバーが多いので、中衛から後衛を任せられるようなタイプが欲しいかな。


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