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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十九章 土卿王国へ2 国境の街 

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413 緊急帰還

 ボクたちの方は一段落ついたが、この街でやること、この街のためにやることはまだ残っている。


「アッシュさん、申し訳ないのだけれど少しだけ待っていてくれませんか」

「どうしたんだ?あんなことがあったばかりだし、早めにこの街を出て国境を越えた方がいいと思うんだが」

「それには心の底から賛成なんですけど、あの状態を放置しておくのは危険過ぎるので……。何とかしてくれるかもしれない相手に心当たりがあるので、『転移門』を使って報告に行っておきたいな、と」


 あくまでも予想だと前置きしておいてから、冒険者協会の腐敗から第二次三国戦争勃発までの最悪の展開を話していく。

 すると彼らは顔を青くして、ボクが行動することを認めてくれたのだった。


 果たして、単なる与太話だとは一笑にされなかったのは良かったのかどうか。

 ボクのことを信頼してくれている現れだといえるのだろうけれど、それだけこの街の冒険者協会が不安の種になっている証拠とも取れる訳でして……。

 何とも悩ましいところであります。


 まあ、他所を知らないのならばともかく、彼らの場合は行商であちこちの町や村などを訪れているから、その異常性にも気が付くことになったのだろう。


 おっと、せっかく許可を貰えたのだからさっさと行動を始めないとね。


「料金がもったいないし、ボク一人で行ってくるよ。ミルファとネイトはこっちに残っておいて。エッ君とリーヴも置いて行くからみんなでアッシュさんたちの護衛に就いておいて。さっきの連中が腹いせに仕返しをしてくるかもしれないから注意してね」

「分かりましたわ。ですが、嫌がらせということであればこの三人よりも、積み荷やエクスカリオンを狙うということも十分に考えられますわね」

「……肝っ玉が小さそうな連中だったし、やりかねないか」

「それは困る!積み荷に手を出されるのも問題だが、エクスのやつは小さい頃からの仲間なんだ!怪我なんてさせられないぜ!?」


 ダークゴブリンにやられたこともあってか、過保護気味になっているインゴさんです。

 だけど動物好きなボクとしては共感できるので問題なし。


「それではエクスとも合流して全員で待機しておいた方が無難ですね」


 あの偽冒険者たちにとってこの街はいわばホームグラウンドだ。冒険者協会の職員以外にも協力者や仲間がいてもおかしくはない。

 こっそりと手引きをするといったことに始まり、事件を起こしてもなかったことにされてしまうかも。


「これは街に居残る方が危険かな。状況次第では街から出て先に国境前の検問所近くにまで進んでおいても構わないよ。判断はみんなに任せます」


 これは報告だけじゃなくて、誰かに協力をお願いしないといけないかもしれない。

 エッ君とリーヴを『ファーム』から呼び出してミルファたちの指示に従うように言い含めると、みんなと別れてボクは一人『転移門』の設置されている七神教の建物へと向かったのだった。


 幸いにもトラブルや面倒事が発生することもなく、無事に『転移門』を利用することができた。

 クンビーラ東のコムトの町では管理をしていた神官戦士たちの態度が微妙だったので、ちょっぴり拍子抜けしてしまう。


 そういえばシャンディラまでの道のりでも特におかしな態度を取られることもなかったので、やはりあの時はブラックドラゴンとのあれこれが伝わっていたのか、それともディラン(おじいちゃん)やゾイさんのような高等級冒険者と一緒に居たことで不審がられたか、だったのだろう。


 安いとは言えない金額を支払い、『転移門』を起動させて一路向かったのは懐かしのクンビーラだ。

 冒険者関係でボクが頼れる相手となると、おじいちゃんたちかデュランさんくらいなものなので。


 通り抜けた先は馴染みのない建物の中だった。クンビーラにある七神教が管理する『転移門』が設置された場所だ。

 これまでにも数回しか足を運んだことのない場所なので、見慣れないのも当然だろう。

 しかもこの建物、データ削減のためなのかどこの街でも似たり寄ったりな装飾のため「本当に目的地へと到着しているの?」と、どうにも不安感に(さいな)まれてしまうのだった。


 そんな感情に急かされるように急いで建物の外へと出ると、懐かしい景色が目に飛び込んできて、ようやく安心することができた。


「はあ……、良かった……。って、いけないいけない!のんびりしている暇はないんだった」


 あちらでは今も絡まれないように気を張っているだろうからね。

 冒険者協会の支部がある中央広場に急がないと。


 ……あ、でも少しくらいなら食べ物の屋台に寄り道しても平気かな?

 やっぱダメ?

 ですよねー……。


 結論から言いましょう。冒険者協会国境の街支部の腐敗については、デュランさんがすぐに調査を行うことを約束してくれた。

 同時に公主様にも報告を上げて、クンビーラからシャンディラを通して国境の街そのものについても探りを入れてもらえるように掛け合ってみてくれるとのこと。


「再び『三国戦争』のような大規模な戦いにはならないにしても、シャンディラを包囲されたりすれば迷宮産の希少な素材の流通がストップしてしまうだろう。そんなことになってはクンビーラとしても大打撃となってしまうし、公主様や宰相様ならすぐにでも行動してくれるだろうさ」


 というのがデュラン支部長の予想だったりします。


 また、最近になってジオグランドに向かった冒険者たちが戻ってこないという事例はクンビーラでも噂になり始めているらしく、この点についても情報を集めるべきと判断してくれた。


 そしてその調査役に抜擢されたのが、おじいちゃんだった。

 というか、他所のエリアまで自由に動き回ることができる人材が他にはいなかった、というのが本当のところだったみたい。


 力量的にはゾイさんやサイティーさんでも問題なかったようなのだけれど、この二人は何だかんだでクンビーラの冒険者たちのまとめ役となってしまっていたからだ。

 加えて、ブラックドラゴンという超ド級の強さを誇る存在が街のすぐ側にいるということで、高等級の冒険者の在留が求められていたのだった。


 その点、<オールレンジ>のディランことおじいちゃんは自由が利く存在だった。

 そもそも彼がクンビーラにやって来たのは、ブラックドラゴンが暴れるようなことになってしまった際の保険にするためデュランさんが呼び寄せたからだ。

 まあ、本人いわく「あんなもんに暴れられた日には、俺なんかいたところでどうにもならねえよ」ということだったようだけど。


 それはともかくとして、守護竜となり立場的にも落ち着いたことから、おじいちゃんがクンビーラにいる必要性は薄くなっていた、という訳なのでした。


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