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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十九章 土卿王国へ2 国境の街 

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409 くさっちゃってます

「できることなら、今日中にジオグランド側の国境の街まで到着しておきたいんだが」

「ボクたちの方も特に変わった用事がある訳じゃないから、その方針でいいですよ」


 既に『転移門』への登録を終えているので、後は冒険者協会の支部へ行ってダークゴブリンの件を報告して報奨金を貰うこと、それとアッシュさんたち三人から正式な護衛依頼を受けることだけだ。


 もっとも、それが一番トラブルが発生しやすそうだったりもするのだけれどね……。

 と、この想像が決め手になったのかどうかは分からないが、案の定冒険者協会の支部で問題が起こることになった。


「七等級の三人で二十体を越える数のダークゴブリンの群れを倒しただって?おいおい、自分たちを大きく見せたいっていう気持ちは分かるが、嘘はいかんぞ、嘘は」

「ああん?せっかくお前たちが戻ってくるだろうから他の仕事は受けずに待っていてやったっていうのに、俺たちに護衛の仕事を出さないとはどういうことだ?」


 ただいま絶賛二カ所で絡まれ中です。

 今日中に国境を越えるために、時間短縮を図って二手に分かれたのも失敗だった。


 国境間の護衛を専門にしている連中が難癖をつけてくるかもしれないことは予想していたが、まさか討伐証明部位があるにもかかわらず、協会の職員が問答無用で嘘だと断定するとは思わなかったわ。

 ちゃんとリーダーの討伐証明もあったんだけどねえ……。


「ですから、わたくしたちだけではなくテイムモンスターの二人も戦いに加わっていたと言っていますでしょう。それに先ほども説明した通り、追いついた時には襲われていた行商人の方々が馬車を暴走させて何体かを既に倒していたのですわ」


 苛立ちを抑え込みながらミルファが言葉を付け加えるも、担当の職員はどこ吹く風といった様子だ。

 これは完全にこちらの言うことを信用する気がないようだわね。


 ちなみに、買い取りなどを行っている場所にボクとミルファが、依頼を申請する場所にアッシュさんたち三人とネイトで向かってもらっていた。

 エッ君たちテイムモンスター組は、どうにも嫌な予感が拭いきれなかったので『ファーム』でお休み中です。ナイス判断だったね。


 その職員の肩越しに奥にいる人たちへと視線を向けてみるも、怯えている風でもなければ困っている風でもなく、平常通りといった感じだ。

 つまり、残念ながらこの応対している職員だけが性質が悪いということではないということのようだ。

 個人じゃなく組織ぐるみで腐敗が進んでいるとなると、本格的に領主たち街の上層部もまた怪しく思えてくる。

 最低限の用件だけを済ませて、とっとと出発するに限るかな。


「ミルファ、もういいよ」

「リュカリュカ?ですが!」

「報告の義務は果たしたんだし、これ以上ボクたちにできることはないよ。それにこの街にはこの街のやり方っていうものがあるのだろうから、ね」


 そう言って不満げなミルファを宥める。

 食い下がり過ぎたことで疑いをもたれてしまい、ミルファの身分やボクたちとクンビーラとの関係を知られてしまえば、余計な面倒事に発展する危険性もある。

 ここは適当にやり過ごすのが一番だ。


 それに、この状況を改善してやろうという崇高な使命感を持っているのでもなければ、そんなことをしている時間がある訳でもない。


 ……やめよう。

 これ以上考えていると、レジスタンスの構成員やシャンディラの密偵といった妙な相手との出会いが発生してしまいそうだから。


「ともかく討伐証明部位はあるんだから、その分の報奨金は支払って下さい。ああ、彼らが倒した分はこちらでちゃんと渡しますからご心配なく。ダークゴブリン二十体とダークゴブリンリーダー一体、規定通りの金額でお願いしますよ」


 先回りして難癖をつけてきそうなところを潰してやると、職員は悔しそうに顔をゆがめていた。


 ……本気でそう言ってくるつもりだったんかい。


 まったくもってやれやれだ。内心でため息を吐く。

 しかも性懲りもなくまだ悪あがきをしようとしているのか、報奨金を支払う手続きを行おうともせずに黙り込んでいた。


 ……ふーん、そうなんだ。

 そちらがそういうつもりであるなら、こちらも相応の対応をさせて頂くから。

 おもむろにカウンターに置いていたダークゴブリンの討伐部位証明が入った袋を取り、アイテムボックスへと仕舞い込む。


「え?」

「行こう、ミルファ」


 呆気にとられた声を出す男性を無視してその場を後にする。

 実は魔物の討伐報酬に関しては、証明部位さえあればどこの支部であっても同一の価格を支払ってくれることになっているのだ。


 アイテムボックスにさえ入れておけば生物であっても痛むことはないが、その部位が右耳ということで長い期間持ち歩きたくなかった。

 言ってみれば『ボーダータウン』で換金しようとした理由はそれだけだった。

 値引きを要求されるというメリット以上のデメリットが提示されたのだから、交渉を取り止めるのは当然のことなのだ。


 ちなみに、冒険者協会の各支部からすると、多少ではあるが討伐の実績として反映されることになっているとのこと。

 基本的には討伐した場所から最寄りの支部で換金することになるのだから、ある意味当然のシステムかな。

 そしてあの職員が少しの金をケチったせいで、討伐実績を稼ぐ機会を失ってしまったという訳だ。


 まあ、場所柄少し本気になればすぐにでも取り戻せる程度でしかないだろうけれどね。

 それでも余計な手間を掛けなくてはいけないことになったことには間違いない。もしかすると、ボクたちの応対をしていた彼は、しばらくの間は他の職員たちから白い目で見られることになるかもね。


「あの時、リュカリュカが危惧していたのはこういうことでしたのね」

「正確にはちょっとばかり方向性が違うかな。腐ってるってことで言えば似たようなものかもしれないけど」


 先の職員とのやり取りだけでは、残念ながらこの街がどこまでジオグランド側に取り込まれているのか、はっきりとしたことは分からなかった。

 ただ、冒険者を扱いやすい体のいい駒か何かのように考えているらしいことは何となく感じ取れた。

 その冒険者があってこそ、自分たちの生活が成り立っているということには気が付いていないのだろう。


 まあ、放っておいてもどこからか噂が広がっていき、いずれは断罪されることになるだろうさ。

 ボクたちだって本日換金できなかった分をどこかの街の冒険者協会で行う必要がある。その時には当然、色々と詳しい経緯を説明することになるのだろうからねえ。

 うふふのふ。


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