400 ダークなゴブリン
400話達成です!
まだまだ続く(予定)ですので、これからも引き続きよろしくお願いします。
評価とか感想をくれてもいいのよ?
荷馬車を襲っていたのは一メートル程度の大きさ、リアルで俗にいう子どもの身長くらいの人型二足歩行の魔物たちだった。
〔鑑定〕によるとその魔物の名はダークゴブリン。
妖精は悪戯好きというのが定番だけど、そんな中でも悪ふざけが過ぎて暗黒面に堕ちてしまった者たちなのだとか。
他にも人間種を始めとした生き物の負の感情を受けて性質が変化してしまった、などの説もあるそうだ。
が、今のボクたちには特に関係もないので詳しい内容については省きます。
要するに、ファンタジーものの定番悪役であるゴブリンの『OAW』バージョンですな。
ただし雑魚中の雑魚という扱いではなく、それなりの知能を備えていているので、ボロだけど武器は使うし、数の多さでごり押しする程度だが集団戦の真似事だってできてしまうという、それなりに厄介な魔物だったりします。
あ、えっちぃ展開は一切ないので念のため。推奨年齢十歳以上のゲームなのだから当たり前だよね。
ちなみに、十五歳未満は保護者の同意と許可が必要になります。
それはさておき現場の状況だ。ダークゴブリンたちはどうやら街道を封鎖するような形で展開していたようだ。
対して荷馬車の方はそれを無理矢理突破しようとしたのだろう、何体かが車輪の下敷きになっていた。
ここから見える荷馬車の人の数は三人――多分、全員男性――と魔物たちとの数の差は歴然な上に、武器を持ってはいるけれども完全に腰が引けてしまっていて戦い慣れていないのが一発で見て取れる。
慌てて破れかぶれで突撃させたのかと思ったけれど、案外冷静に囲み込まれる前に何とか切り抜けようとしたのかもしれない。
もしも彼我の戦力差をしっかりと認識したうえでの行動であったならば、初手の作戦としては悪くない部類と言えるのではないだろうか。
まあ、現実として荷馬車が動かなくなってしまっているので、失敗ということにはなってしまうだろうし、戦力差を見極められるだけの目があるのなら、最初から護衛を雇うくらいのことはするべきだっただろうね。
と、荷馬車の彼らへの評価はこのくらいにいたしまして。
もうすぐにでも先に飛び出したミルファたちがダークゴブリンたちの一部と接触しそうだ。そろそろ戦闘に集中することにしようか。
「【スラッシュ】!」
すれ違いざまに闘技を発動させて一体を切り捨てるミルファ。
わーお。数が多い代わりに一体毎の強さはそれほどでもないとはいえ、まさか一太刀で倒してしまうとは思わなかった。
いわゆるクリティカルヒットになったのかも。
そしてそれに負けじとエッ君が続く。
「って、それはやり過ぎなのでは!?」
数体が固まっているところに【裂空衝】を撃ち込んで怯ませては【流星脚】でまとめてふっ飛ばしたのだ。
手心を加えろなどとは言わないが、さすがにそれはやり過ぎ、オーバーキルなのではないでせうかね……。
その圧倒的な様子に二人の背中を守る必要はないと判断したのか、リーヴは襲われている荷馬車の前方へと進んでいく。
「うおっ!?な、なんだ!?」
「……た、助けてくれるのか?」
突然魔物との間に割って入ってきた小さな鎧姿に荷馬車の人たちが驚くも、奇声を発しながら飛び掛かってきたダークゴブリンの一体の攻撃を受け止めたことで味方だと判断してくれたようだ。
それでもリーヴ一人だと問題が起きるかもしれない。後方の一団はミルファとエッ君に一旦任せて、ボクもそのまま前へと向かう。
「怪我はないですか?」
不意打ち気味に牙龍槌杖で一体をふっ飛ばして、荷馬車の人たちに近付いていく。
「すまない。助かった」
「俺たちは大丈夫だなんだが、馬をやられた」
その言葉に視線を動かしてみると、荷馬車に繋がれたお馬さんが蹲ってしまっているではありませんか!
「ネイト!お馬さんがピンチ!?」
「すぐに行きます!」
彼女に回復魔法を準備しておいてもらって正解だったね。
リーヴも〔聖属性魔法〕で回復魔法を使えるのだが、お馬さんのゲージを見てみると既に三割を切っているものの、すぐに生死にかかわるほどの傷ではない。
まだまだダークゴブリンからの攻撃が続いている以上、広範囲高性能な防御闘技を使用できるようにMPを温存しておきたかったのだ。
「リーヴはこのままこの場所でネイトと合流。二人でお馬さんと彼らを守って」
新たに指示を出しておく一方で、ボクは御者席に飛び乗ると周囲を見回す。
後方から左手側の連中はネイトとエッ君の二人によってサクサク殲滅されている真っ最中でした。
こまめに位置を変えることでダークゴブリンたちが得意な数頼みの力押しができない状況を作り出しているようだ。
そうなると残るは右手側の一団か。振り返ってみれば案の定じわじわと距離を詰めてきている。
その数は四体。これくらいならボク一人でも最悪みんなが集まってくる時間稼ぎくらいはできるかな。
「でわでわ君たちにはこれをプレゼント。【ウィンドニードル】!」
そう判断すると即座にその集団へと範囲魔法を撃ちこみ、乱れた陣形へと突撃を掛けた。
「【スウィング】!でもって【ピアス】!」
立て続けに闘技を使用して数を減らす。実は武器は持っているけど、防具は装備していないから攻撃を当てることさえできれば倒すこと自体はそれほど難しくなかったりするのよね。
が、調子良く進めたのもそこまでだった。
「にょわっ!?」
闘技発動後の硬直時間を見極めていたかのように残る二体が反撃してきたのだ。
無理矢理回避の体勢を取ったが、完全には避け切れなかったようで軽い衝撃と共にボクのHPゲージが減少していく。
シャンディラで防具を買い足していなかったら大ダメージとなっていたところだ。
「おかしい。さっきまでの連中とは動きが違う気がする」
いくら知能があるとしても、戦術や戦法を理解できるほどではなかったはずだ。それに仲間意識が強いから、仲間を囮にして相手の隙を作り出すような真似をするとは思えない。
このまま訳が分からずに戦い続けるのは危険だ。
すぐさま距離を取ると再び〔鑑定〕技能を使う。
「えー……。ここで外れを引いちゃいますか……」
そこに表示されていたのは、ダークゴブリンはダークゴブリンでも、群れを率いる『リーダー』だった。




