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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十八章 土卿王国へ1 迷宮都市シャンディラ

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393 冒険者協会への不安

 武器と防具のお店を出たボクたちは、近く……、にはなかったので食べ物関係を扱って一角にあるカフェで休憩がてら軽食を取っていた。

 まあ、一人明らかに軽くはない量を食べている子がいたのだけれど。


 シャンディラへ入る際の待ち時間を利用して、空腹度を減少させるための食事は取ったはずなんですがねえ……。

 昨日泊まった近くの村にある宿で準備してもらったお弁当だったので、味気なかったのかもしれない。

 なんだかんだあって『猟犬のあくび亭』では色々な料理が出てくるようになっていたので。


 うあー……そんなことを考えてしまったせいで、無性にギルウッドさんが作ったご飯が食べたくなってしまったよ。


 エリアを跨ぐと『転移門』による移動料金が一気に高くなるという噂もあるから、ジオグランドとの国境にある町に到着したら、一度クンビーラに顔を出しておいてもいいかもしれない。

 公主様たちと進捗状況というか情報の共有もしておくできだろうからね。

 ……べ、別に宰相さん(ミルファパパ)にお小遣いの追加(おかわり)をおねだりしようというつもりはありませんですわよ!?


 そんな話題をお供にしながら軽食を終えると、サササッと周りを見回してから本題に入ることにした。


「二人とも、さっきの店員さんの話はどう思う?」

「ジオグランドが傭兵だけでなく、冒険者を始めとした腕の立つ者たちをかき集めているという内容でしたね。この近辺の中核都市とはいえ他国の街にまで聞こえてきているとなると、それなりに信憑性(しんぴょうせい)は高いのではないでしょうか」


 ふむふむ。人の口に戸は立てられないということで、シャンディラにまで話が出回っていることそれ自体が証拠になるということだね。


「しかし本当であれ嘘であれ、この手の話は出回ってはいけないものではなくて?戦力を拡充しているなど、侵略の準備をしていると捉えられてもおかしくありませんわよ」


 お互いに少人数同士であるならともかく、国同士のような大きな組織になると「そんなつもりはなかった」は言い訳にすらならない。

 特に規模が同程度の相手であれば、逆に攻め込まれる格好の口実にすらなり得てしまうのだ。


 ジオグランドの場合、直接している『風卿エリア』の都市国家群とは比べ物にならない力量差があるとしても、その先には同等規模のアキューエリオスやフレイムタンが存在している。

 迂闊な行動は新たな『三国戦争』の引き金にすらなってしまうかもしれない。


 そういう意味では、実際の戦場になりかねない『風卿エリア』にいるボクたちの方が、ピンチが危険な状況だということになってしまいそうだ。

 それはともかくとして、ミルファが言いたいことをまとめるとすると。


「あえて偽情報を流しているのかもしれない、っていうことかな?」

「その通りですわ。……もっとも、その可能性も捨てきれないのではないか?くらいの確度でしかありませんけれど」


 仮にその意見が正しかったとして、何のためにそんな危険な橋を渡っているのか?という理由がさっぱり分からないものね。

 現状では全くの予想外だったと驚いて戸惑って身動きが取れなくならないようにするための保険的な意味合いしかないのかもしれない。


「ミルファの意見も参考にしつつも、噂自体は真実だと仮定しておくね」


 二人とも頷いているのでここまでは良しとして、問題はこの次だ。


「それじゃあ、新しく集められるようになった人たちが無理矢理戦わされている、なんてことはあると思う?」


 店員さんとの会話で懸念となっていたことについて、ズバリ尋ねてみたのだった。


「それはないと思いますわよ」

「ええ。いくらジオグランドが大国だとしても、仮にそのような卑劣な行いがあれば『冒険者協会』が見逃すことはないはずです」


 これについては二人とも店員さんと同じ考えのようだ。

 まあ、ボクとしても自分の考えがひねくれ過ぎているという自覚はあったので、特に二人が楽観的過ぎると言うつもりはない。


「リュカリュカは、あの店員にも同じことを問いかけていましたね。何か引っ掛かることでもあるのですか?」

「うーん……。引っ掛かるというより、『冒険者協会』をそこまで信用しきれていない、かな」

「え!?『冒険者協会』が信用できない!?」


 この回答は二人にとっては全く想像がつかなかったもののようで、揃って驚きの声を発することになってしまったらしい。

 ふう、カフェの店内が他のお客さんたちの会話でざわついていて良かったよ。

 そうでなければ周りの人たちに平謝りしなくてはいけないところだったね。


 視線で「ごめんなさい」「気を付けてね」というやり取りを交わしてから、説明を始める。


「信用しきれていないのは『冒険者協会』そのものというより、そこに居る人たちの方かな。もちろんデュランさんを始めとしたクンビーラの支部の職員さんのような人たちがほとんどだとは思ってるよ。でも、協会関係者全員が「人々の安全のため」っていう理念に燃えているとは思えないし、そんな中には冒険者のフォローなんて二の次で、私腹を肥やすことしか考えていないような人だって紛れていると思うんだよね」


 そこまでいかなくとも、地元の権力者との間に軋轢(あつれき)が発生するのを嫌う事なかれ主義的な人ならば、多かれ少なかれどこの支部にだっているはずだ。


「つまりリュカリュカは、ジオグランド国内の冒険者協会の者たちが、ひどい扱いを受けている冒険者たちの様子を見て見ぬふりをしているかもしれない、と考えているのですか?」

「どのくらいの規模でそうなっているのかは分からないけれど、可能性はあると思ってる」


 最小だと首都グランディオにある支部のそれまた一部の人だけが関わっているだけとなるが、逆に最悪の展開では『土卿エリア』内全ての支部が関与しているということになる。

 まあ、深読みのし過ぎという線もなくはないだろうけれどね。


「そんな訳で、用心だけはしておくことに越したことはないんじゃないかな」


 ボクが抱いていた懸念が理解できたらしく、神妙な顔で頷くミルファとネイト。


「とりあえず、中には厄介で態度の悪い職員だっているのだ、くらいに考えておけばいいと思うよ」


 深刻になり過ぎてもいけないのでそう付け足すと、二人からは即座に「度合いが違い過ぎる」と突っ込みが入れられたのだった。


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