表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十七章 事件です

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

381/933

381 犯行の狙いを探れ

今話でついに、100万文字達成です。


これからも頑張って書いていきますので、よろしくお願いします。

 犯人が既に捕まっていることを公表しているのであれば、プレイヤーたちがすぐに暴走するような事態に発展することはないだろう。

 とはいえ、向こうの狙いが何だったのかによっては、悠長にしていられる時間がないことに変わりはない。


「せっかく犯人をスピード捕縛しているんですから、このままスピード解決といきたいところですよね」


 と言ったものの、それがいかに無茶振りなのかは理解しているつもりだ。

 それでもこの件が片付かないと落ち着いて本編のお話を進めることもできない。それどころかゲームを続けること自体が難しくなってしまうかもしれない。

 まあ、こうした事情が重なったことで、つい願望が口から出てしまったというだけのことだった。


「ワタクシたちとしても、その点は同じです」


 すぐにコンテンツの停止ということにはならないとしても、対応を誤れば顧客であるプレイヤーを一気に失うことになってしまうかもしれないのだ。

 むしろボクなんかよりもよほど切実だろう。

 込み上げてくる頭痛を懸命に堪えようとしているのか、すっかり難しい表情が常となってしまっている猫さんだったが、その心境は他の運営スタッフたちも同じことなのだろうね。


 さて、アウラロウラさんから運営上層部へと送ってもらった、ボクの提案というか要求への回答は未だやってくる気配はなかった。

 幸いにもケイミーさんたちとお話ししてスミスさんからでき上がった牙龍槌杖を受け取っただけなので、ログアウトしなくてはいけない時間まではいましばらくの猶予がある。

 なのでもう少し彼女とお話でもしていようか。


 なんてことを思って会話を始めてみたのだけれど、気が付けば事件についてもう少し突っ込んだことを尋ねてしまっていた。

 再び意識を取り戻すまで三十分もかかったことといい、自分で意識しているよりも重圧となってしまっているのかもしれない。


「……えーと、つまり犯行そのものは捕まっている犯人単独のものだけど、計画とか準備とかにはもっと多くの人たちが関わっている可能性があると?」

「はい。それが仲間もしくは協力者なのか、それとも事件を裏で操った黒幕なのかは分かりませんが、完全な単一犯によるものではないとワタクシたちは考えています」


 アウラロウラさんたち運営がその根拠として目を付けていたのが、他プレイヤーはおろかNPCにすら危害を加えることができないはずの『異次元都市メイション』で凶行に及んでいること、つまりは運営の構築したシステムへと侵入して、さらには一時的で部分的にせよ書き換えを行っていたことだった。


「ご存知の通りこの『OAW』は『Other World On-line』、通称『笑顔』と呼ばれているMMORPGのシステムの多くをベースとして作られており、同時にあちらのプレイヤーでもある人を多く取り込んでいます。そのためか、サービス開始直後などはあちらと同じルールであると思い込んだプレイヤーも多数いて、いくつかの問題が起きたりもしていたのです」


 その一つがPvPとPKだったそうで、早い話が『笑顔』ではプレイヤー間の問題の解決策として以上の二つがそれなりに幅を利かせていた時期があったらしい。


「なにその脳筋思考……」


 と思わず呟いてしまったボクは悪くないはず。

 どちらかというと弱肉強食で世紀末なヒャッハーといった方が適当だったかもしれないけれど。


 まあ、ボクの感想は置いておくとして、とにかくリアルの鬱憤が溜まっていたのかどうなのかは不明ながら、「意見や主張を押し通したいなら、それに相応しいだけの力が必要だ」という考え方がまかり通っていた時分もあったのだとか。


 余談だけど、『笑顔』でも有数の人気を誇るギルドの『新天地放浪団』は、フリーダムにどんどんと新しいエリアを開拓していく一方で、イチャモンや難癖をつけて襲ってくる連中を返り討ちにしたり、様々な理由で困っているプレイヤーの手助けをしたりしていたそうだ。


 そんな行動がヒャッハーな時代を終わらせる一番の要因となった、らしいです。

 そのギルドの(マスター)を務めているのが『コアラちゃん』ことユーカリちゃんなのだけど、本当に一体どこに向かおうとしているのだろうね、ボクの従姉妹様は……。

 閑話休題でした。


「そうしたあちらの事情もありまして、『OAW』のサービス開始後間もない頃のメイションでは、やたらと喧嘩っ早いプレイヤーたちがいたのです。彼らへの対処という意味合いも含めて、PvPもPKも一切を不可としてある、という訳ですね」


 しかも突発的にバグが発生して設定が無効になったりしないように、複数人の担当者によって積層かつ互いが絡みあるようにプロテクトが構築されていたのだそうだ。

 よって、これを改ざんするには同等の力量を持つ複数の人間が必要になると考えているとのことだった。


 システムへの侵入による非正規なログインという点だけから見れば、それぞれのプレイヤーごとのワールドへと潜り込むことも、『異次元都市メイション』へとやって来ることも同程度の難易度となってしまうのだけれど、犯人はそれに加えてわざわざ余計な手間が必要なメイション内でボクを襲撃したということになるらしいです。


 おや?これってもしかしなくても犯人たちの狙いを探るための重要なポイントになるのではないかしらん?


「ボクを害するだけであれば、ボクのワールドへと入り込んだ方が簡単だったはず……。それと個人的な意見ですけど、誰にも助けを求めることができないそちらの方が恐怖を感じることになったような気がするよ……」


 もしもトラウマを植え付けようとするのであれば、うちの子たちやミルファにネイト、そしてボクが仲良くなっているNPCたちを片っ端から殺戮して回れば、これほど効果的なものはなかっただろうと思われる。


 そもそも、運営の裏をかいてあれだけのことができる技術と手間暇があるなら、もっと根本的に『OAW』世界を破壊するような、例えばコンピュータウィルスのようなものを作ることだってできたのではないだろうか。


「つまり、襲撃場所が『異次元都市メイション』でなくてはいけない理由があったということになる?」


 『OAW』でメイションだけが持っている特徴。どうやらこれが鍵になりそうな予感です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >今話でついに、100万文字達成です 大台突破お疲れ様です! 自分じゃ10万字すらネタ切れで、そんなに続かないってのに。 書ける人ってホント羨ましい。 [一言] 取り敢えずここまで読ん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ