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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十七章 事件です

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379/933

379 改め、『テイマーちゃん』傷害事件

 ガバッと飛び起きたのは、知らない部屋のベッドの上だった。


「ここは……?」


 というか、何が起きたのだろうか。

 確かケイミーさんたちと別れて、てくてくとメイション内の路地を歩いていたはず……?


 !!


 それよりもうちの子たちはどうなったの!?


「良かった。お目覚めになられていたのですね」


 大絶賛混乱中のボクに話しかけてきたのは、運営のネコさんAIであるアウラロウラさんだった。


「焦らないで。まず一番に知りたいだろうあなたのテイムモンスターたちのことですが、一旦『ファーム』の中へと戻ってもらっています」


 目が合った瞬間に質問攻めにしようとしたボクを、掌を見せることでやんわり押し止めると、的確に一番望んでいる回答を示してくれた。

 相変わらず有能なお人だ。あ、残念ながら?彼女のお手々は人間と同じ形で、肉球も存在してはいませんのであしからず。


「ああ、良かった……。みんな無事みたいだね」


 そんなことを考えながらも手の方は勝手に操作を行っていて、アイテムボックス内の『ファーム』に全員揃っていることが確認できたのだった。


 余談だが、ボクはおよそ三十分ほど眠り続けていたらしい。突然の事態に精神が落ち着くまでにはそのくらいの時間を必要としたようだ。

 目が覚めたところでパニックにならなかったのはそのお陰、だったのかもしれない。


「申し訳ありませんが、テイムモンスターたちを呼び出すのは少し待ってください。何分突然の出来事だったのでかなり錯乱していたようでして。このまま放置しては騒ぎが大きくなりそうだったので、半ば強制的に『ファーム』へと入ってもらったのです」


 落ち着かせるための冷却期間が必要ということかな。

 でもアウラロウラさんの半強制となると、うちの子たちがかなり怖い思いをしたという可能性もアリ?うん。無駄に怯えさせる必要はないよね。


「それと、できるならまずはリュカリュカさんお一人に説明を聞いて頂きたいというのもありまして」


 ……やっぱりうちの子たちを呼んではダメですかね?

 主にボクの精神安定剤的な用途のために必須な気がするんですけど。


「えーと、何だか聞くのが怖くなってきたような……」

「正直こちらとしても、話さなくても良いのであればそうしたいと思ってしまっているというのが本音のところですね。残念ながら目撃者も多数存在しているので、隠しきれるものではないという結論に達していますが」


 頭痛が痛いと頭部を押さえて項垂(うなだ)れてしまうアウラロウラさん。

 彼女がここまで追いつめられているということ自体、かなり面倒で厄介な状況になっている証拠というものだろう。

 つまり、「聞きたくないいいい!!」という思いがより強くなってしまいましたよ!


 とりあえず気持ちを落ち着かせるため、心配して送られてきたメールの返信がてら、『笑顔』側のプレイヤーを含む全フレンド登録相手に、「無事であることと、現在状況についての説明を聞いている最中であること」を伝えておきます。

 まあ、話を聞く覚悟を決めるためと言いますか、現実逃避の時間稼ぎのためと言った方が適当だったかもしれないけれど。


「まず、何が起きたかを時系列にごとにお話しします。メイション内の路地を歩いていたリュカリュカさんは突然背後から攻撃を受けました。そのダメージは大きく、本来であればHPが全損してしまうところだったのですが、以前お渡ししておいた『帰還の首飾り』の効果によって防がれ、さらに安全圏へと移動されることになりました。この際に状況を把握したワタクシたち運営の手によって、移動先にはこの場所を指定させて頂くことになりました」


 ちなみに、メイション内にある運営の拠点の一つであるらしい。

 プレイヤー同士の喧嘩や暴力行為などが起こらないように『異次元都市メイション』では訓練所などの特別な施設を除いて、誰かに危害を加えることはできないようになっているはずだった。

 そのため『帰還の首飾り』の移動効果では通常出現ポイントである『噴水広場』へと送られる予定となっていたのだという。


 ところがそうした制限があったにもかかわらず、このような事件が起きてしまったということで、慌てて他のプレイヤーが絶対に手出しできないこの場所へと移動先を変更させたのだそうだ。


「ほへー……。転ばぬ先の杖と言いますか、世の中どこで何が役に立つか分からないものなんですねー」


 本編内ではまったく活躍の機会がなかったから、『帰還の首飾り』を持っていたことすら忘れかけていたくらいだ。

 それが、まさかまさかメイションという特別な場所で効果を発揮することになるとは、未来を見通すような能力を持たないボクには想像もつかないことだった。


 突然のことだったために今一襲われたという実感が薄く、のほほんとしているボクに対して、アウラロウラさんは終始重苦しい雰囲気を纏ったままとなっていた。


「後日改めて上の者が謝罪に伺うとは思いますが、この度の失態並びに不用意にリュカリュカさんの心身を傷つけることになってしまったことに、『OAW』運営を代表して深くお詫び申し上げます」


 なんて言って、深々と頭を下げてくるほどだった。


「え、えーと……、それで、ボクに攻撃してきたという人はどうなったんですかね!?」


 居心地の悪さを覚えて、慌てて話題を逸らす。

 もっとも、一番の関心ごとではあったので、あながち適当なことを言った訳でもないのだけれど。


「その人物については『OAW(こちら)』とリアルの両方で捕縛済みです。現在は動機や背後関係について探っている最中、ということになります」


 先日の合同イベント後に行われた大捕り物のこともあって、運営とリアルの当局との間にはしっかりと協力体制ができ上がっていたらしい。今回あっという間に身元やログインした場所が判明して捕まえるところまで進められたのは、そういう事情もあってのことだったようだ。

 まあ、それにしてもボクが眠りこけている間のわずか三十分程度で片が付いたというのは、いくら何でも早過ぎるとは思うけどね。もしかすると、あらかじめ犯人だった人に目星をつけていたのかもしれない。


 ただ、捕まえたのはいいものの、どうにも心神喪失っぽいと言いますか、会話をしていても要領を得ない部分があるらしい。

 そう装っているだけという面も含めて、慎重に捜査をする必要がありそうとのことだった。


「ふむふむ。つまりもうボクでは手出しができないところにまで話が進んでいるということですね」


 別に復讐しようなどという気持ちを持っていた訳ではないけれど、逃げられたままということであれば後々に危険が持ち越されてしまったかもしれないからね。

 捕まっているのであれば一安心だ。


 ……うん?そういえば先ほどのアウラロウラさんの台詞に、不穏なものが混ざっていたような?


「ああっ!?あ、謝るの禁止!」


 もしも、うちの両親に今日の一件がバレちゃったりなんかしたら!

 最悪の場合、ゲーム禁止令が出されてしまうかもしれないもの!


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