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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十六章 おいでませメイション

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374 役者が足りない?役が足りない?

評価ポイント2000オーバーしてました♪

ありがとうございます。

 スミスさんたち鍛冶師プレイヤーたちが作り上げた特別製のハルバードを手に持ったままボクは、むうむうと可愛く――ここ重要!――唸っていた。


「どうした?何か不満なところがあるのか?」

「いえ。ハルバードにはまったく全然さっぱり不満なところなんてないです」


 一部に龍――西洋風なドラゴンではなく、東洋風な龍の方です――が巻き付いているというド派手な装飾がなされていたり、その延長で本来なら斧刃となっている部分が鈍器になっていたり、さらには斧刃の反対側の柄に対して垂直に伸びる突起がドラゴンの牙を模していたりと、製作者たちの趣味全開、遊び心満載な仕上がりとなっていたとしても、ボクが扱える物としては一級品であることに間違いはないのだ。


 しかも最初に持った瞬間に感じた手に馴染む感触を始めとして、気に入ったかどうかで言えばこれまた間違いなく気に入ってしまっていたのだった。


「やけに突っ込みどころが多いような気もするけど、要はそれも含めて好みに合ったということかな?」

「まあ、そんなところです。いわゆる男の子的なロマンとかも嫌いじゃないですし」


 そうでなければいくらおじいちゃんたちからの勧めがあったとしても、こんな扱いの難しいハルバードなどという武器を使おうとはしなかっただろう。

 おや?ということはむしろ好きな部類と言えるのかな?

 あ、えっちぃ方面は除きますからね!


「ほほう。『テイマーちゃん』がそっちもイケるくちだったとはな。ふむ……。乗り物がロボットに変形するとか、さらに複数が合体して巨大ロボになるのはどう思う?」

「ある意味定番な内容ですね。でも、だからこそ安定したカッコよさがあると思います。個人的な好みで言えば、搭乗者の鎧だとかパワードスーツ的なものだとか、必殺武器に変形する方が好きですけど」


 ちなみに、一也兄さんや里っちゃんたちと一緒に走り回って遊んでいた小学校入学以前ならともかく、以降その手の番組はほとんど見ていないので、詳しい(ディープな)話にはついていけないのであしからず。


 うん。そう考えるとやっぱり「嫌いじゃない」程度のものでしかないのだろう。

 それでも年頃の女の子としては少数派であったのか、スミスさんは「理解者を得た!」と言わんばかりの全力の笑顔となっていた。


 一方、事情が分からないうちの子たちは、一連の会話が意味することが理解できずに困惑しているようだね。後で「ボクとスミスさんや他の鍛冶職人たちの好みが似通っていた」と軽く説明しておく必要がありそうだ。

 まあ、エッ君だけは我関せずといった具合でリーヴに抱かれたまま店内のあちこちへと視線を向けていたようだけど。


 残る女性二人の反応は対照的なものだった。どうやらボク寄りの趣味嗜好を持っているらしいケイミーさんは苦笑いを浮かべるだけで済んでいた。

 が、そちら方面は一切(たしな)んでいないのか、シュクトウさんは理解不能といったお顔でゆるゆると首を横に振っていたのだった。

 店内に置かれている商品のラインナップからして若い女性をメインターゲットとしているようだし、理解度に差が出てしまうのは仕方のないことだろう。


「気に入っているのであれば、どうしてあんな難しい顔をしていたのかしら?」


 という訳で、シュクトウさんが話の軌道修正を行ったのは当然の成り行きと言えた。


「ああ、それは武器に対してボクでは役者が足りないと思っていたからですよ」

「え!?武器の方じゃなく、『テイマーちゃん』の方が足りないの!?」


 叫ぶように驚きの言葉を発したのはケイミーさんだ。

 そして困ったことに、現状ではこの反応がプレイヤー間では一般的となってしまっているようなのだ。その証拠に、声にこそ出さなかったものの、シュクトウさんもスミスさんも同じように驚いた顔になっていた。


「あのですね、どうしてこんな過大評価をされるようになったのかは分かりませんけれど、ボクはまだVRのゲームを始めてから数か月の素人で、ゲーム内のキャラクターとしてもレベル十二のようやく初心者から抜け出した程度でしかないんです。とてもじゃないけど、鍛冶系のトッププレイヤーが作った武器を所持できるだけの技量なんてものは、持ち合わせていませんから」

「ええっ!?」


 どうしてそこで余計に驚くかな?

 低レベルなのは『冒険日記』でも合同イベントの時にも公表していたはずなのだけど。


「分かった!レベル差が何倍もあるプレイヤーを相手にあれだけの立ち回りができたのは、技能熟練度が高いからじゃない!?」

「ああ。そういえば本編でも熟練度が高ければ、低レベルであっても魔物と渡り合うことができるようになっていたな」


 ケイミーさんの推測にそんな設定もあったなとスミスさんが追従する。

 初戦闘の時、ボクとエッ君がトゥースラット三匹を瞬殺したような状態かな。


「それでもまだ〔槍技〕をマスターできるほどにはなってませんね。あ、でも、この前ようやく【ペネトレイト】は習得しましたよ!」

「この前!?ということは合同イベントの時にはそれよりもまだ熟練度が低かったということ!?」


 確かあの時は技能ポイントを使用した分を合わせても、〔槍技〕の熟練度は七十くらいだったと思う。


「極端に低い訳じゃないが、特筆するほどでもないな」


 スミスさんの話によると戦闘系のプレイヤーはレベルが先行しやすく、反対に<クリエイター>を中心とした非戦闘系のプレイヤーは熟練度が先行しやすいのだそうだ。

 そしてボクの場合は戦闘系に括れば熟練度が高い方だが、非戦闘系としてみれば低いというどっちつかずなものとなっていたらしい。


「え?ちょっと待って!つまり『テイマーちゃん』はそんな状態で『コアラちゃん』と戦ったのに引き分けにまで持ち込んだっていうことだよね!?」


 うちの子たちを全員参加させたのに勝つことができなかった、と言うべきだと思うけどね。

 ただし、ストレートに現実を受け入れるのは悔しいので、それくらい彼女が強かったのだと思うことにしております。


「このまま成長していけば、とんでもないことになりそう……」

「とりあえず今の状態でも間違いなく言えるのは、ハルバードの持ち主として劣っているなんてことはない!ってことよね」

「むしろ『テイマーちゃん』がレベルアップしたら、あっという間にハルバードの方が役不足になるんじゃない?」


 いやいやいやいや!それはないでしょう。


「素材の方はさておき、これでも全員が全力以上の力を出し尽くして作った物なんだがなあ……」


 ちょっ!?

 スミスさんも黄昏れていないで反論してくださいってば!


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