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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十六章 おいでませメイション

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369 シャッフルしてバトル

 せっかく再会したことだし、その上目的も同じ訓練所で体を動かすことだと判明したため、「どうせならミザリーさんとヤマト君も一緒にやらない?」と聞いてみたところ、二人からは快諾してもらうことができた。


 あ、観客という名の野次馬たちが押し寄せてくるかもしれないこともちゃんと説明ずみですよ。

 いくら合同イベントの時のチームメイトで気安い間柄とはいえ、そんなだまし討ちのような事はしませんから。


「なんか、巻き込んでしまって申し訳ないです」


 手元に表示された観客席の収容人数を見ながら、ぺこりと頭を下げる。


「いえいえ。『テイマーちゃん』に声をかけた時点で目立ってしまうことは分かっていましたから、気にしないでください」


 と、朗らかな言葉でフォローしてくれるミザリーさんだったが、そんな優しさにボクは余計に申し訳なく感じることになってしまっていた。

 なにせ施設に入った時には数人だったはずの人が、いつの間にか数十人にまで膨れ上がっていたからだ。


「うはー。このまま行けば三桁の大台に乗るのも時間の問題だよな」


 一方のヤマト君はボクたちとは対照的に随分と楽しそうにしている。その表情と言葉に裏がないことが救いだよ、ホント。

 ちなみにうちの子たちは全員ヤマト君派だったようで、「見ず知らずの観客なんて畑のカボチャと同じ」だと言わんばかりに、素知らぬ顔で準備運動を始めていた。


「まあ、『OAW』だと普通にジャックオーランタン柄のカボチャが生っていそうだから、それはそれで怖そうな気もするけど」

「え?何か言いましたか?」

「ううん。ただの独り言だから気にしないでください」


 おっとと、いけないいけない。ついつい現実逃避気味にしょうもないことを考えてしまっていたよ。

 もっとも、リアルではなくVRゲームの世界ですけどね!


「さて、そろそろ始めるかい?」

「そうですね。……チーム分けをどうしましょうか?」


 普通ならミザリーさんとヤマト君のコンビ対ボクたちということになるのだろうけど、さすがに人数差が大き過ぎるよね。


「うーん……。どうせならうちの子たちも含めて全員でシャッフルしてチーム決めをしてみない?」

「お、それは面白そうだな!」


 ヤマト君、即座に食いついてきたね。

 苦笑しつつもそれはそれで良い案だと思ってくれたのか、ミザリーさんも頷いて同意してくれたのだった。


 結果から言いますと、色々なパターンでの戦い方に挑戦することができたため、単なる思いつきの割にいい訓練になったと思う。

 ただ、ヤマト君・エッ君・リーヴ・チーミルの前衛組対ミザリーさん・ボク・リーネイの後衛組に分かれてしまった時は、なかなかシャレにならない状況になってしまったけれどね……。

 まさかボクが最前線で四人を相手取って時間を稼がなくちゃいけなくなるとは思ってもいなかったです。


 え?その試合の結果?

 当然のようにボクたちが負けましたとも。


 あちらの連携が取れていない最序盤はなんとか足止めができていたのだけれど、少し経って互いの動きが分かるようになると、あっさりと抜かれてしまい、後方にいたミザリーさんとリーネイがゲームオーバーにされてしまったのだった。

 後はもう、多勢に無勢というか一方的に押し込まれて終わりになりましたとさ。


「いやいやいやいや!その押し込みきるまでにどんだけ時間をかけさせられているんだっての!?」

「はあ、はあ……。まさかマスターの逃げ足があれほど速いとは思いませんでしたわ……」


 さすがはプレイヤーというべきか、走り回らされてバテバテになってしまっているうちの子たち――エッ君は除く――とは違い、ヤマト君にはしっかりと突っ込みを入れるだけの元気が残っていたようだ。


 まあ、残り一人になってしまった時点で、勝手ながらいかに逃げて時間を稼ぐことができるかに方針をシフトさせてもらっていましたので。

 さらに逃げ回るボクを見たエッ君が遊びと勘違いしてしまい、勝手気ままに動き出してしまったことも終了までに時間が掛かってしまったことに大きく影響していたと思う。


「命令系統がしっかりと構築できていないと、いざという時に困ることになるかな?」

「普通は<テイマー>のプレイヤーが敗北してしまった時点で、テイムモンスターたちも強制的に敗北扱いになるので、そこのところを気にする必要はないと思いますよ」


 ボクの疑問にミザリーさんが苦笑しながら答えてくれる。

 そういえば、そんな設定もあったんだったね。だからこそ<テイマー>や<サモナー>を相手にする時には本人を真っ先に狙うという戦法が有効とされているのだった。


「ところでヤマト君、身体の調子はどう?」

「ん?ああ、さっきの追いかけっこのお陰……、と言っていいのか微妙だけど、大体の感覚は掴むことができてきたと思う」


 それなら良かった。訓練を始めてからそれなりに時間が経っており、そろそろお開きにしなくてはいけない頃合いになってきていたからだ。

 こちらから誘った手前「なんの成果も得られませんでした!!」では申し訳ないからね。時間を無駄にさせることにならなくて一安心だ。


「『テイマーちゃん』の方はどうでしたか?私から見る限りでは、しっかりと使いこなせていたように思えたんですけど」

「うん。はっきり言ってとっても使いやすいし、動きやすかったですよ」


 ボクの体格や力量だけでなく、動きの癖のようなものまで含めて作られているように感じられたのだ。


「使い込んでいけばいつかは「手足のように」扱えるようになるかもしれない。まあ、その域に到達できるのはまだまだ先の話だろうけどね」

「へえ。さすがはドワーフの一流職人が手掛けただけのことはある、っていうことか」


 あ!ヤマト君、ボクが言った「手足のように」というところに反応したね?

 やっぱり男の子だとそういう達人っぽい表現にあこがれちゃうのだろうか。


 ふっふっふ。上手く誤魔化したつもりかもしれないけど、ボクたちにはまるっとお見通しですよ。

 ちらりと横目で見てみると、案の定ミザリーさんも微笑ましそうな顔になっている。ボクでも気が付くような事を彼女が見逃すはずがないわよね。ごちそうさまです。


 でも、あまり見ていると胸やけを起こしてしまいそうなので、適度なところで視線を戻すとしましょうか。


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