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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十六章 おいでませメイション

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368 どうしてここに居るのかな?

「あら?あなたたちはあの時のリュカ……、コホン!マスターの仲間だった二人ですわね」

「お久しぶりです。あの時は挨拶くらいしかできませんでしたが、お元気でしたか?」


 切り札で登場が遅かったチーミルとリーネイを中心に、改めてミザリーさんとヤマト君にうちの子たちを紹介していく。

 二人とも『冒険日記』は読んでくれているらしく、それもあって元の人であるミルファとネイトの大まかな性格なども理解してくれていたらしく、会話は終始和やかに行われたのだった。


「いや、ちょっと待とうか!?」

「うわっ!?」

「きゃっ!?」


 突然ボクが発したよう目の言葉に、二人が驚きの悲鳴を上げる。

 うんうん。やっぱり女の子の悲鳴は「きゃっ」に限りますなあ。


 自分ではついつい「ひょえっ」とか「にょわっ」といった少し面白系の悲鳴になってしまうので、こういう女の子らしい悲鳴を素で発せられる人を羨ましく思ってしまうよ。


 ちなみにうちの子たちは、ボクが突然行動することなど日常茶飯事といった様子で平然としております。

 ……なんだかこう書くとボクが奇行を繰り返す危ない人みたいですが、全くもってそんなことはないのであしからず。


 ……おっとと、だからそんなことを考えている場合ではなくてですね。

 久しぶりの再会ということもあってつい和んでしまっていたけれど、一点流してはいけない重要項目があったのだ。


「どうしてヤマト君が『OAW(こっち)』にいるの?合同イベントの時には『笑顔』だけしかプレイしていなかったよね?」


 しかもまだ始めてから間もないとか言っていたような?

 それなのに『OAW』にまでいきなり手を出してきたというのは、何か理由があるように思えた。


 とはいえ、ミザリーさんと二人でいたことを考えると、答えなんて決まっているようなものだったのだけどね。

 すぐにそのことに気が付けなかった辺り、ボクの女子力もまだまだなようで。


「あー、えっと、それはだな……」


 彼にしては珍しく言葉の歯切れが悪い、どころかまともな言葉にすらなっていなかった。

 視線の方もあちこちさ迷っているし、明らかに挙動不審だ。


 ヤマト君の性格上まさか不正や違法行為に関わっているとは思えないが、ボクと関係ができたことで『OAW』の運営から微妙に無茶なお願いをされてという可能性はある。

 アウラロウラさんを始めとして、妙に押しの強い面々であることは疑いようもないからねえ……。

 本気で嫌がっていることを無理強いしたりはしないけれど、少しでも脈ありだと判断すれば、あの手この手を使って誘惑してくるのだ。

 思わずそれに押し切られてしまったのだとしても不思議ではない。


 最悪、運営に抗議文を送ることも頭の片隅で考えていたところ、ヤマト君の視線がミザリーさんへと向いたことに気が付いた。

 そしてそのミザリーさんも、しっかりと視線でヤマト君のことを捕捉している。


「もしかして……、そういうこと、だったりします?」

「多分『テイマーちゃん』が思い浮かべた通りのことだと思います……」


 小声でようやくそれだけを口にしたミザリーさんだったが、頬っぺたどころか顔全体から耳の先まで真っ赤に染め上げていた。

 ダークエルフ風味な褐色肌が真っ赤に染まるとか、相当なものだよね!?

 一方のヤマト君もまた、当然のように顔を赤くしていた。


 これはもう、どこからどう見ても間違いないというやつでしょう。

 思い返してみれば、イベントの時から二人のコンビは息があっていたものね。

 にゅふふ。お馬さんに蹴られたくはないので、これ以上の下世話な詮索はしないので安心してくださいな。

 あ、でも一つだけ確認をさせて欲しい。


「リアルの友達と『笑顔』を遊んでいたのではなかったっけ?」

「あいつらとは週末中心に遊んでいるから問題ないぜ」

「プレイヤースキルが多少伸びるくらいならともかく、レベルに差がつくと一緒に遊んでいても面白くなくなるからどうしようと相談されたので、『OAW』を勧めてみたんです」


 そもそもリアルの都合で平日には集まって遊べなくなったことが発端なのだとか。


「夏の大会が終わって最上級生が抜けたから、部活が忙しくなったやつが多かったんだよ」


 学生あるあるな本気でよくある話だね。

 それにしても恋愛感情の前に友情が儚く消え去ってしまったのではなくて良かったよ。


「そういえば、あっちこっちで『テイマーちゃん』の噂を耳にしたんだけど?何でも、『風卿』以外のエリアの話を聞いて回っているんだって?」

「うん。別のエリアにも行けるようになるかもしれないみたいだけど、あんまり危ない所はちょっと遠慮したいかなと思って。もちろん旅費稼ぎと素材集めのためにクエストを受けたり魔物退治はしたりするつもりだよ。でも、街中は基本的に観光気分で散策していたいから、色々と情報を集めているの」


 ヤマト君やミザリーさんが相手だから、別に全部話してあげても問題はないのだが、どこに人の目や耳があるのか分からない。

 よって、どうしても当たり障りのない回答となってしまう。

 まあ、これだって別に嘘を言っている訳ではない。ただ、内緒にしていることもあるというだけのことなのです。


 二人もその辺りの事情は察してくれているようなので、詳しい話が聞きたいということであれば、個別にメールを送るなりすればいいだろう。


「ところで、二人は何をやっていたの?」


 十中八九ミザリーさんの案内でヤマト君がメイションの観光をして回っていたのだろうが、場所が場所なのでそれこそボクたちのように体を動かしに来たのかもしれない。


「実は『OAW』を始めたのはいいんだけど、『笑顔(あっち)』のキャラとの動きの違いに慣れなくてさ。一度しっかりとどれだけ動けるかの確認をしておいた方が良さそうだってことになったんだよ」


 なまじっかそっくりにキャラを作ってしまったから『笑顔』の時と同じように動こうとしてしまい、違和感が出てしまっているらしいのだ。


「ヤマト君の場合、一時上位職にクラスチェンジできるレベル二十まで上げていたところで、いきなりレベル一からやり直すことになりましたから。私も経験がありますけど、能力値の違いなどで感覚がズレてしまって、結構やり難いんです」


 なるほど。能力値換算で二十ポイント分、仮に各能力に平均的に割り振っていたとしてもそれぞれ五ポイント分は異なることになる。

 ゲームを続けている時はじわじわと上がっていくから感じなかったこともあって、大きな違和感となってしまうようだ。


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