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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十六章 おいでませメイション

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361 熱くなってきた! らしい

 ボクが渡した龍爪剣斧を、スミスさんは様々な角度から眺めては時に軽く叩いたり何かを見通すかのようにじっと見つめてみたりしている。

 そのただならぬ気配に、集まっていた野次馬なプレイヤーたちも余計な口を叩くこともなく静かに息をのんで見守っていた。


「まあ、何だ。今までも散々あるんじゃないかと噂されていたから、見つかったこと自体に問題はないと思う。だが……」

「発見者がボクであるということが、騒ぎの種になるかもしれないんですね?」

「残念ながらその可能性は十分にあるだろう。『冒険日記』と先日の公式イベントでの活躍で、『テイマーちゃん』は完全に有名プレイヤーの一人だと言われるようになってしまっているからな。その上、アウラロウラが下に置かない扱いをしていたことで、一部のプレイヤーからは運営に近い存在だと思われている節もある」


 何となくそんな予感はしていたけれど、やっぱりそう捉えてしまう人もいたらしい。


「まあ、初心者プレイヤーということで親しくというか、親切にしてもらっていた自覚はありますね」


 ということで、運営との距離が近いという言い分に対しては何の異論もなければ文句もなかったりします。


「ただし、優遇されているだとか依怙贔屓(えこひいき)されているという言いがかりに関しては、断固として違うと言っておきますけど」


 これでも『冒険日記』を書くのはそれなりに苦労しているし、公式イベントのような特別な時に大勢の前に姿を現すというのは、相応のリスクを抱えることにもなるのだ。

 そうした部分をまるっと無視して、まるでボクが大量の特典を受け取っているかのように言われるのは、はなはだ不愉快だった。


「というか、本当に贔屓されているなら今頃もっと高レベルになっているって話ですよ。その上、当然隠し情報なんかもリークされているだろうから、謎解きなんかもあれほど苦労するようなことはなかったと思います!」

「あー……、何だかよく分からないが、色々と苦労したみたいだな」


 うおっと、いけない!つい地下遺跡でのあれやこれやを思い出してイラッときてしまった。

 そういえばあの壁画を始め、結局はっきりしたことが分からないまま謎として残ってしまっているものがいくつもあるのだよね。

 これから冒険を続けていく事で、判明していく事になるのだろうか?


「まず疑うというか、文句をつけるところから始めるやつらはどこにでも一定数はいるものだからなあ。ただ、そういう連中っていうのは基本的に、本気で糾弾するような気概がある訳でもなければ度胸がある訳でもない。まともにとり合ったりはせずに適度に受け流しておくのが無難というものだろうさ」


 スミスさんいわく、「あわよくばおこぼれに預かろうとしているだけの小物」であるそうな。

 前回お話した時には気が付かなかったけれど、どうやら結構毒舌なところもあったりするご様子。新たな一面を知ることができたと喜ぶべきか、それとも知らずにいた方が幸せだったと嘆くべきなのか、何とも判断に迷うところだわね。


「いざとなればそれこそ運営に相談するなり通報するなりすれば、後は向こうで適切に処理してくれるはずだから、あまり気負わないことだな」


 あの連中も含めて、と言いながら彼がこっそりと指し示したのは、遠巻きにこちらの様子を伺っていた野次馬なプレイヤーさんたちです。

 まあ、彼らの場合は「目新しい情報をいち早く知ることができるかも?」とか「何か面白いことが起きるかもしれない!?」程度の、好奇心半分冷やかし半分といった心持ちで付いて来てみたに過ぎないと思われる。

 よって、こちらから断りとお願いをしておけば、そうそうぞんざいには扱われないのではないかと考えられます。


「同感だ。わざわざ追いかけてくるくらいのミーハーな連中のようだから、一足先にこれの情報を教えてやるのと一緒に、『テイマーちゃん』から大袈裟にしないで欲しいと言い添えておけば無碍に扱うやつはいないだろう」


 とりあえず当面の対策としてはそのくらいが妥当かな、ということになりましたとさ。


「それにしてもメイションの鍛冶師に対抗して、NPCが龍爪剣斧(これ)を作り上げたとなると、俺たちプレイヤーもうかうかしてはいられないな」


 例のゲームへの没入を防ぐ対策の一つとして、プレイヤー同士の交流を後押しするために、メイションではゲーム本編よりも簡単に良い素材が手に入るようになっているらしい。


 具体的に言うと、本編で一般流通している最高品質の素材が通常のお値段で購入できるようになっているそうだ。

 ただし、これはそれぞれのプレイヤーごとに判定が行われるので、いきなり高ランクの素材を入手できたりする訳ではないとのこと。


 それでも、そんな最高品質の素材を用いて作られるためにメイションで売り買いされるプレイヤーメイドの装備や道具は高い性能を誇っていた。

 製作者の<クリエイター>系プレイヤーたちは好条件の環境なのをいいことに、ガンガン技能の熟練度を上げているのだから当然の結果だと言えるだろうね。


「ところが『テイマーちゃん』が持ち込んできたこいつは、そんな俺たちプレイヤーが作る物に匹敵するかそれ以上の性能だ。そりゃあ奮起もさせられるってもんだ。むしろこれを見て何も感じないようなやつなら、間違いなく<クリエイター>には向いていないだろうな」


 とりあえず凄い武器!としか思わなかったボクは不向きということになりそう。


「そのNPCたちからの挑戦、受けさせてもらおうか。と言っても俺がメイションの代表で話を受けたとなると、後から文句を言われそうな気もする。すまないが、その件はしばらく預からせてもらいたい」

「それは構いませんけれど……。どうするんですか?」

「どうせグロウアームズが発見されたということで大事になるんだ。それならいっその事大勢のプレイヤーを巻き込むのもアリじゃないか」


 そう言ってニヒルで不敵な笑みを浮かべるスミスさん。

 かくしてゴードンさんたちNPC鍛冶師たちと<クリエイター>プレイヤー連合による『テイマーちゃん』の武器作成対決が勃発することになってしまったのだった。


 ただボクの武器を新調するだけの話だったはずなのに……。

 どうしてこうなった!?


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[一言] グロウアームズハルバードの二槍流...?!
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