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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十五章 さらなる情報集め

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355 名付けと変化

本日一話目です。

「う、うおっほん!とにかくだ!その爪状の部分でも引き裂いたり突き刺したりと実用的な扱いができるようにしてあるから、上手く使ってみてくれや」


 白けかけてしまった空気を吹き飛ばすように、大きく咳払いをしてからゴードンさんがそう言って締めくくった。

 明らかに誤魔化そうとした訳だけど、別にいつまでも追求したいということでもないからね。

 まあ、奥さんに迷惑をかけるのは程々にね、とは思うけれど。


 それにしても、まさかまさかこんな立派な武器を作ってくれるとは。

 話を通して資金を提供してくれた公主様たちも含めて、彼らには本当に感謝するしかない。


「頑張ってこの武器を使いこなせるようになります」


 誓うようにそう告げると、二人は嬉しそうな顔を見せてくれたのだった。


「ところでだな。お前さん、そいつに名前を付けてみる気はないか?」


 ふと真面目な顔に戻ってゴードンさんがそんなことを言い始めた。


「え?名前?」

「おう。はっきり言ってしまってだな、リュカリュカの体格や動きに合わせて思い切ったカスタマイズをしちまったもんだから、そいつはもうハルバードというには歪な存在になってしまっているんだ」


 大枠として、武器の分類としてはハルバードと言えないこともないけれど、一点物の特殊な代物のために微妙な立ち位置となってしまっているのだとか。

 リアルではまずありえない何のこっちゃ?という話なので、ゲーム内の処理の関係か何かなのだろうね。


 と、ここで深く考えなかったのが失敗の元だったのかもしれない。


「武器に名付け……。ロマンですな!」

「おうよ!燃えるだろう!」

「やれやれ。なんだかんだ言ってもリュカリュカちゃんもやっぱり冒険者なんだねえ」


 ニヤリを笑い合うボクとゴードンを見て、奥様が苦笑しながらそう言っていたのだった。


「ただ、問題はこう、簡単に想い浮かんでこないことですよね……」


 現代ニポンにおいて、何かに名前を付けるなどという機会ははっきり言って少ないものだ。

 それこそ何かの開発者や発見者でもなければ、片手の指だけで事足りる回数しかそんな経験をしたことがないという人も多いのではないだろうか。


 まあ、ゲームであれば分身(アバター)となるキャラクターを始め、色々なものに付けたことがあるという人もいるはずだろうけれどね。


 ちなみにボクはと言いますと、御存じの通りゲームすること自体が久しぶりという状態だった。よって当然名づけのセンスなども磨かれているはずもない。

 あ、別に自分たちの名前を後悔しているということではないからね。『エッ君』も『リーヴ』も、もちろん『リュカリュカ』だって大のお気に入りなのだ。


「そうだな。そうそう良い名前なんて思い付くはずもないからなあ」

「私らだって先人や先達の名前を頼みにしたり、御先祖様の名前にあやかったりしているからねえ」


 リアルでも人の名前は特にそういう傾向があるよね。

 そして製作者(クリエイター)であるゴードンさんたちにとっては、作り出したものは自分たちの子どものような存在なのかもしれない。


「経験上、ふわっと思い付いた名前というのが一番しっくりくるんだが、ぶっちゃけちまうとそういう事はめったに起きることじゃねえな。だから大抵は、持ち主が決まっている場合はそいつの名前をいじってみて、その上で音の響きを優先するとかだな」


 持ち主の名前というとボクということになる訳でして、それをボク自ら付けるとなると、かなりイタイ子状態になってしまいそうなんですが……。


「後は……、そうだなあ、その形を参考にするとか」


 お、それはいいかもしれない。

 幸いにしてというか、この特注品ハルバードは独創的な形となっているから、それを名前の元にするというのは十分アリな気がする。

 そもそもこの独創的な形のせいで名前を付ける羽目になっているのでは?という点については全力で目を逸らす次第であります


「ハルバードって槍斧とか斧槍とか明記されることもあるよね。それにあやかるとしたら剣斧?」


 うにゅう……。

 どうにもしっくりこないというか、何か足りない感がある。


「何だろう?柄の部分?……杖?んー……、やっぱり噛み合わない」


 ああでもないこうでもないと頭を悩ましていると、トテトテとエッ君が近づいてくる。


「あはは。ごめんね、心配させちゃったかな?」


 抱えて頭よりも上まで持ち上げると、エッ君はいつものようにだらーんと尻尾と両足を垂らしていた。


 さて、ここで問題です。

 今ボクはエッ君の卵ボディを掴んで持ち上げている。目の前にあるのは何でしょう?


 答え、エッ君の足。

 まあ、ボクの視線が捕らえていたのはそのさらに先の爪だった訳ですが。


 その瞬間、きゅぴーん!と何かが閃いたのを感じた。


「ドラゴンの爪、ドラゴンクロー……?ううん、竜の爪、龍爪!」


 そして先の剣斧と並べてみると、


「『龍爪剣斧(りゅうそうけんふ)』……!」


 ぴたりと、まるで元々そうあつらえていたかのごとく組み合わさったように感じたのだった。


 と、これだけだったら「めでたしめでたし」で終われたのだけどね……。


《『特注品ハルバード』がグロウアームズ『龍爪剣斧』へと変化しました。それに伴い各種数値も変化しています。ご注意ください。また、グロウアームズの詳しい内容についてはヘルプ内にある該当項目を参照してください》


 唐突な登場がデフォルトになりつつあるインフォメーションさんがいきなり現れたのだ。

 しかも今回もまたとんでもない情報を引っ提げてというオマケ付き。


 もうね、目を丸くして硬直するより他ないってものですよ。


「お、おい!いきなりどうした何があった!?」

「リュカリュカちゃん!?大丈夫かい!?」


 心配して呼びかけてくれたゴードンさんと奥様のお陰で、何とか抜け出しかけ(えくとぷらずむっ)ていた魂を肉体の中へと引き戻すことができた。

 とはいえ、きっとボクの目は死んだ魚のようになっていることでしょう。


「ええと、多分二人とも〔鑑定〕の技能は使えますよね。それでこれを見てもらえれば、ボクの心情を理解してもらえると思いますので……」


 緩慢な動きで膝の上に置いていた龍爪剣斧を差し出す。

 怪訝な顔で一度顔を見合わせたが、こうしていてもらちが明かないと判断したのか、二人はボクの言った通りに〔鑑定〕を使って覗き込んでいく。


「な、な、なんじゃこりゃあ!?」

「ほわあー!?」


 そして奇声を発しながら仰け反るお二人。

 そうだよねえ、いきなりグロウアームズとか言われても何がなんだかという話だよね……。


一日複数回投稿の最後は、本日18:00の予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] グロウアームズという事は...成長する武器ですか 性能だけが育っていくのか多少自我が芽生えるのか...今後が楽しみですね♪ 人形師の特殊人形(だっけ?)みたいに1つしか持てないのだろうか?…
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