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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十五章 さらなる情報集め

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352 順番は大切

本日三話目です。

 貴重なはずの転移装置を破壊する。そう決めたことの裏にはいくつかの考えがあってのことだった。

 その一つが地下遺跡にも施されていた自動修復機能だ。


 大陸統一国家崩壊後にこっそりと作られた――らしい――地下遺跡とは違って、他国にあるだろう転移装置が設置されている施設はそれ以前の時代に作られたものである可能性が高い。

 そして恐らくは崩壊のゴタゴタによって失われてしまった技術などもあっただろう。

 つまり、地下遺跡で使用されている技術はそのまま、もしくはそれ以上の形でそれらの設備には施されているだろうと考えられるという訳なのだ。


「だから、いずれ後代の本当に必要となる時には復活していて、調査でも研究でもやり放題になっているんじゃないかなと思うんだよね」


 もっとも肝心な移動先の浮遊島の方は、ボクたちがきっちりと処分するなり破壊するなり沈めてしまうなりするつもりだから、転移自体はできなくなっているはずだけど。


「要はわたくしたちが浮遊島の対処を終えるまでの時間稼ぎ、ということなのですわね。それなら一安心……、と言ってしまって良いのかしら?」

「いえ、さすがにそれは私たちにとって都合の良いように解釈し過ぎだと思いますよ。しかし、それ以外に方法がないのも事実だというのがなんとも……」


 強引を通り越して滅茶苦茶なやり方だというのは認める。


「うーん……、それならこういう考えをするのはどうかな。転移装置があるといつそこから浮遊島の死霊たちが襲撃してくるかもしれない。だから転移装置を破壊するのは各国の人たちを守るために必要不可欠なことなんだ、とね」


 地下遺跡の転移装置を壊したのと同じ理由付けをしてやろうという魂胆でございます。

 まあ、これも「こじつけだ」と言われてしまえばそれまでなのだけど、単に自分たちの都合のために壊すよりは、心の負担が少なくなるような気がするのだ。


「その辺りが妥協点でしょうか」

「そうですわね。すぐに浮遊島の対処ができない以上、他国の介入を防ぐためにはそうするより他にはなさそうですもの」


 うんうん。人間諦めが大切ですよ。


「どうやら方針は決まったようだな」

「色々とお話を聞かせてくれてありがとう」

「なに、古い記憶が役に立ったのであれば覚えていた甲斐があったというものよ。我はドラゴンゆえ他種族の問題に介入する訳にはいかんが、守護竜となったからにはクンビーラは全力で守ると誓っておこう。お前たちは後ろを気にせずに存分に突き進むがいい」


 これほど頼りになる台詞というのもそうはないだろうね。

 これで少なくともクンビーラを人質に取られるということだけは免れそうだよ。


「ブラックドラゴン様、クンビーラで生まれ育った者として先の言葉自体はとても嬉しく思うのですが……」

「あまりリュカリュカをたきつけるようなことは言わないで頂きたかったです」

「ぬ……。確かにあやつが突っ走ってしまえば、我やそなたたちのような被害者が生まれてしまいそうであるな……。すまぬ。我の配慮が足りなかったようだ」


 あー、アー!聞こえなーい!

 ミルファたちがそんな会話をしていたなんて、全然まったく知りませーん!


「と、ところで!最終的には三つの国のどれもに行く必要があるってことになるけど、どこから行くのかは決めておかないといけないよね?」


 あからさまな話題の変更にミルファとネイトは若干ジト目になったものの、決めておかなくてはいけないものだと判断したのか乗ってくれたのだった。

 ……盛大にため息を吐かれたけど。


「やらなくてはいけないことの内容がアレですから、確実性を増すためにも一カ所につきそれなりの時間をかけるべきでしょうね。場合によっては二度と入国できなくなるかもしれませんから」

「そうなりますと後に回した結果情報を入手されてしまい、手を出せなくなるという可能性もありましてよ?」

「うん。だからそんなことにならないように、行く順番も重要になってくると思うんだ」


 地理的に見れば、クンビーラは『風卿エリア』の中でも特に北部に位置していて、『水卿公国アキューエリオス』との国境とはほど近い。

 北へと向かう主要な街道はそのままアキューエリオス内の町へと繋がっているそうだし、距離的な面からしても情報が拡散する中で一番に知られる可能性が高いのはここということになりそうだ。


 一方で、残る二国にも気になる部分はある。

 まず『火卿帝国フレイムタン』だけど、ここはご存知の通り『三国戦争』の影響によって皇帝の力が激減してしまい、現在領地持ちの貴族たちを中心に小競り合いが続いている状態だ。

 そのため他の貴族たちから一歩先んじようと、それぞれの陣営が独自に各地各国へと密偵を放っていると言われている。


 対してクンビーラはボクがエルを引き合わせるまで碌な諜報系の人材を確保できていなかった。

 ぶっちゃけ、情報戦に疎く防諜活動カウンターインテリジェンスなど夢のまた夢といった状況だったのだ。

 エルが頑張ってお掃除をしてくれている最中のようだが、今でもそれなりに深い場所まで侵入されていると思っておいた方が無難だと思う。


 ついでに言うと、『武闘都市ヴァジュラ』との関係も気になるのだよね。実はお隣のヴァジュラは東の国境がフレイムタンと接しているのだ。

 それでもってヴァジュラ、というか闘技場は強者や珍しい魔物を常に求めていることもあって、あちらからの出入りも多いのだという。

 要するに、それなりに親しい仲となっているのではないかと考えられるのですよ。

 そしてこの予想が当たっていたとなると、かなりの量と確度の情報が既にフレイムタンへと流れているかもしれないのだった。


 残る最後の一つ『土卿王国ジオグランド』なのだが、こちらは大陸西部にあり地理的にも離れていて、元来閉鎖的な国政傾向にあるため人や物の流通的にもクンビーラとは疎遠となっている。

 『風卿エリア』の都市国家で比較的親しい関係を築けているのは『迷宮都市シャンディラ』くらいなものなのだとか。


 ともかく、そうした事情もあって一見すると情報も伝わりにくいと考えられるのだけど……。

 いかんせん疎遠過ぎて向こうの情報もまともに入って来ないため、何を考えているのか分からないという怖さがあるのだった。


明日(1月2日)と明後日(1月3日)はそれぞれ12:00と18:00の一日二回更新予定です。

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