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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十五章 さらなる情報集め

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350/933

350 ブラックドラゴンの歴史講座

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


元日は今話を含めて三回更新予定です。

「そもそも、『古代魔法文明期』は人間種を中心として華開いた歴史上他に類をみない極めて高度な文明だったが、それはひとえに様々な種族が協力をしていたためであり、だからこそ長期間の繁栄を続けることができたのだという」


 当然、そうした背景には高度に発達した強力無比な魔法という武力があったようだが、どういう訳だか協力体制の構築に際してはそれらが使用されることはなかったのだそうだ。


「今の人間種の社会からしてみれば、大陸統一国家時代も十分に発展した文明を持っていたと言えるだろう。だが、彼の時代はそれをもはるかに上回っていたそうだ。我が自我を持つ頃になると人間種に当時の生き残りはいなくなっていたが、ドラゴンの住む『竜の里』を始め、一部の長命種族の暮らす隠れ里には今でもあの頃のことを記憶している者たちがいるぞ」


 それはそれは、なんとも気の遠くなりそうな話だね。


「大陸統一国家も、初期の頃はそうした長命種族の言葉に真摯(しんし)に耳を傾けながら国家を運営していたらしい。お前たちがその在り処を探している浮遊島など、『古代魔法文明期』の崩壊によって失われていた技術のいくつかもそうした交流があったからこそ蘇らせることができたのだと聞いている」


 ブラックドラゴンは単に復活としか言っていないけれど、『古代魔法文明期』の頃とは大気中にある魔力の量からして大きく違っていたはずだから、それらの技術は元のオリジナルに比べると大なり小なり異なる部分があったと思われます。


「きっかけは一人の優秀な人物であったのだそうだ。政治か文化か、それとも技術なのか。その人物がどう言った方面から頭角を現したのかは定かにはなっていないが、その者が国家の中枢に入り込んだころから我らドラゴンや長命種族たちとの距離を取るようになっていった」


 あれ?上手くぼかされたけれど、その距離を取るようになった原因こそが実は一番大事なところなのでは?

 そんなボクの疑問は置いてきぼりとなり、ブラックドラゴンの話は先へと進んでいった。


 質問すれば良かっただろうって?

 当然そうするつもりでしたとも。


 ところが!

 いつの間にか特殊なイベント進行扱いになっていたようで、口を開くどころか動くことすらも制限されてしまっていたのです!


「やがて、国家はこの大陸にあるもの全てを、大陸に生きる者全てを支配することを企むようになっていった。彼の時代を超えたと分かりやすく喧伝するために、武力による全種族の支配を目指したという訳だ」


 確かに分かりやすい。分かりやすいのだけれど、肝心な部分が抜けたままになっている気がする。

 しかし、まだ話は終わっていなかったようでで、ボクのモヤッとした気持ちはまだ表に出すことができないままだった。


「大陸の各地で始まった戦いは、当初こそ人間種対他種族であったのだが、すぐに人間種同士の戦いへと移り変わっていった。膨大な戦費を捻出するため犠牲とされたのが民の生活環境だったのだが、便利で豊かな暮らしに慣れ親しんでいた民衆はそれに耐えきれなかったのだ」


 えーと……、なんだか微妙にリアル社会のことを暗示しているように思えるのですが……。

 社会風刺は興味を引くにはもってこいの題材なのだけど、ほどほどにしておかないと興が削がれてしまいかねないので、エンターテイメントにとっては諸刃の剣だと思う。


「至る場所で発生する反乱に兵力が派兵される一方で、首脳陣は自分たちの身の安全を守るために、浮遊島をいずことも知れない場所に隠してしまった。来訪することができる権限を持っていたのはほんのわずかな者たちのみだったが、それすらも厳しく制限していた」


 恐らく、『風卿』を始めとした、卿の名を与えられていた四名はその筆頭だったのだろう。


「最終的にこの戦いがどうやって終わったのか、そして浮遊島がどうなったのかは知らん。先も言ったように途中からは我らは蚊帳の外だったからな。降りかかる火の粉は払うが、率先して破壊をまき散らすような者は自我に覚醒したドラゴンの中には居ない。よって里の長老たちですらもはっきりと知っている者はいないだろう。いつの間にか終わっていたというのが、我らにとって一番しっくりくるところだな」


 おうふ……。まさか肝心なところでグダグダになるとは……。

 まあ、ゲームとしてはここで全てを明かすことはできないということなのかな。

 そう考えれば納得がいくし、一から十まで懇切丁寧に説明されてしまえば、それこそ謎を解く甲斐がなくなり興ざめしてしまうというものだろう。


 そうであるならば、先ほど浮かんだ疑問点も答えてもらえないか、「知らない」で押し通されてしまうかもしれない。

 その予感の通り、


「ドラゴンや他の長命種族たちと距離を取り始めた原因って何だったのかな?」


 という質問には、「分からぬ」という簡潔な答えだけしか返ってきませんでしたとさ。


「知られざる歴史について知ることができたのは良かったけど、浮遊島がどこにあるのかっていう今現在のボクたちが一番必要としていることを知ることができなかったのは痛いね」


 ヒントらしいヒントすらないときているから困ったものだ。


「我らの仲間内ですらそれらしきものを見たことはないからな。もしかすると既にこの大陸から遠く離れた場所へと移動させているのかもしれぬ」


 これでこっそり密かに期待していたブラックドラゴンに乗せて行ってもらう、という案は廃止にせざるを得なくなってしまった。残念。


「残る方法は、地下遺跡にあったような転移装置の在り処を探すことでしょうか?」

「ブラックドラゴン様の話によれば、幾人かの者たちには来訪できる権限を与えていたのですわよね?」


 ミルファの問い掛けに頷きながら、話しの最中に考えていたことを話す。


「一番可能性が高いのは、大陸を統治する役割を持っていた『卿』の名を持つ四人だと思うんだよね。ほら、実際にあの地下遺跡は『風卿』の直系の血筋の人たちが作ったものだったから」

「……だとすると急ぐ必要があるかもしれません」


 やけに深刻そうな声音でネイトが呟く。

 そんな様子に、無性に心がざわめき立つのを感じる。


 そして、その言葉の意味することを理解した時、本当の意味でボクたちの新しい冒険が始まったのかもしれない。


次話はお昼の12:00に投稿予定です。


ちなみに、予定通りであれば年明け直後の現在の私は、地元の神社で獅子舞を行っているはず。

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