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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十五章 さらなる情報集め

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349 昔々の話を聞こう

ご注意! 本日二回目の更新となります。

 西門で出入りをする人たちを監視アンド見守っている衛兵さんたちに「ご苦労様です」と挨拶をしてから外に出ると、街道を避けるようにして黒い小山があった。


 言わずと知れたブラックドラゴンな訳ですが、その体勢が問題だった。

 なんとお腹を上にしてごろりと横になっていたのだ。


「ちょっと待って。ドラゴンとしての威厳はどこいったの!?」


 世のお父さん方の休日の姿を彷彿(ほうふつ)とさせるその光景が見えた瞬間に突っ込んでしまったボクはきっと悪くないはず。

 いくら何でもこれは一般的なドラゴンのイメージを崩しかねないため、苦情案件なのではないだろうか?

 と思いきや、


「さすがはブラックドラゴン様。強者ゆえの余裕ということなのでしょう」


 すぐ隣から心底感心したという響きの声が聞こえてくる。

 いやいや、ネイトさん!?それはちょっと好意的に受け取り過ぎというものではありませんかね?


「このくらい泰然として頂けている方が、街の者たちも安心するというものですわ」


 まさかミルファまでそちら側だったとは!?

 しかしながら彼女の言葉通り、城壁の上からブラックドラゴンを見ている街の人たち――毎日抽選が行われているらしい――は笑顔で手を振ったり「ブラックドラゴンさまー」と呼びかけたりしている。少なくとも暗い表情となっている人は見受けられなかった。

 絶対王者であるドラゴンが暢気にしていられるイコール平和という感覚なのかもしれないね。


 ちなみに、街の中から時折ぴろぴろ見えていた尻尾は、これら見物人の声に応える形で動かされていたもののようである。横着なのか、それともサービス旺盛なのか、いまいち判断がつきにくい仕草ですな……。


 おっと、いつまでもこうして観察を続けてばかりもいられない。さっさと用件を果たすことにしましょうか。


「お久しぶり、ブラックドラゴンさん」


 声をかけると首だけをぐりんと動かしてこちらを見てくる。


「おお、幼子とその仲間たちではないか。久しいな」

「うん。挨拶を返す前にその体勢をなんとかしようか」


 いくら何でもその態度は人と会話する際のものではないと思う。

 改善する気がないなら礼儀知らずのクロオオトカゲと呼んじゃうよ?と視線だけで語りかける。

 すると億劫そうに、けれどどこか面白げな気配を漂わせながら、ブラックドラゴンは身をよじり体を起こしたのだった。


「まったく、我にそこまでずけずけと物を申せる者はそなたくらいなものだぞ」


 いや、だからそれを楽しそうに言われても困るのだけど。


「一応ボクは勝者だからそれなりの態度で臨まないといけない、とか言っていたのはブラックドラゴンさんの方だったと思うけれど?」

「はっはっは。その通りだな!」


 本当は他の人に合わせて『様』付けで呼ぶべきだろうか、とか色々と考えていたのですよ。

 ところがどっこい、当の本人から「敗者におもねるようなことは、するべきではない」という回答を貰ってしまったため、こうして明け透けで気の置けない喋り方となってしまっていたのだった。


「それで、今日は用事か何かか?それとも単に顔を見せに来ただけなのか?」


 それはもちろん前者ですともさ!

 ブラックドラゴンからは「用がなくとも会いに来て構わない」と言われてはいたのだけれど、ああして街の人が城壁の上からの見物を楽しみにしている様子を見ると、何だか横入りしたような気分になってしまうからだ。


 まあ、後日これはボクの大きな思い違いであることが判明するのだけれどね。

 ボクたちが会いに行くとブラックドラゴンの新たな一面を見ることができるらしいと、今日のことはその日のうちにクンビーラの街で大きな話題となってしまうことになる。

 そして「時間がある時はできるだけブラックドラゴンに会いに行くようにして欲しい」と公主様自ら頼まれることになるのでした。


 それはともかくとしまして、今は話を進めようか。


「ちょっと聞きたいことがありまして。ブラックドラゴンさんって結構長生きだったよね。大陸統一国家の頃のことは覚えているかな?」

「これはまた随分と懐かしい名前が出てきたものだな。うむ、覚えているぞ。……まあ、知性が芽生えてすぐの頃であったから朧気となっている記憶も多いのも確かではあるが」


 やたっ!

 多分大丈夫だろうとは思っていたけれど、本人から直接聞けると安心するというものだよね。


 だけどまだ明らかになったのは当時の記憶があるという点だけだ。ボクたちが聞きたいことを知っているとは限らないから、あまり先走って期待し過ぎないようにしないといけないかもです。


「実はですね……」


 かくかくしかじかと一昨日までの一連の地下遺跡探索についての話をする。

 あ、事前に公主様たちからは了承を貰っているのでご心配なく。いくらこちらの常識に疎いボクでも、無断で話して良いことと悪いことの区別くらいはつきますので。


「ふうむ……。まさか連れ去られた幼子を追いかけてきた先で、あれについての話を聞くことになるとはな」


 ミルファたちに補足をしてもらいながらボクが一通り話し終えた後、彼が発した第一声がそれだった。

 その言い回しと含みを残した様子から察するに、ブラックドラゴンと浮遊島にいる死霊との間には因縁めいたものがあるということだろうか?

 しかも彼の口ぶりからとても友好的な雰囲気を感じ取ることはできそうにもない。間違いなく宿敵だとかそれに近い関係であったものと思われます。


「一言で言ってしまうと、だな。彼の国の者共と我らドラゴンは敵対関係にあったのだ」

「その理由を聞いても?」

「簡単な話だ。彼の国はこの大陸全てを手中に収めようとしていたのだ。そうすることがやつらの悲願であり、それを成し遂げることでもって自分たちが『古代魔法文明期』すら超えた最高の存在であると証明したかったようだ」


 うわー……。話を聞けば聞くほど、拗らせちゃった感が強くなっていくような気がするなあ。

 かといって確実にこれからのボクたちの行動に深くかかわってきそうであるので、聞かずにいることもできそうにない。


「大陸全てを支配することと、それが『古代魔法文明期』を超えることにどう繋がりがあるの?」

「『古代魔法文明期』の頃の支配者連中は我らドラゴンやその他の一部強大な力を持つ種族とはそれぞれ協力関係であったようなのだ」


 あ、何となく見えてきたかも。

 要は昔の人たちができなかった力による支配を成し遂げられれば自分たちの方が優れている、と思い込んだのではないかな。


本年もお世話になりました。

来年も本作を始め、他の作品もよろしくお願いします。

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[一言] >世のお父さん方の休日の姿を彷彿 ほうふつ とさせるその光景が見えた瞬間に突っ込んでしまったボクはきっと悪くないはず。 前ページ同様ルビミス?
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