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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十四章 次の冒険に向けて

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347 事情聴取してます

 一通りの話を聞いて考える。あ、場所は同じ冒険者協会内の会議室のような小部屋へと移動しております。

 一等級冒険者を間近で見ようと野次馬たちが騒ぎ出したため、落ち着いて話ができなくなってしまったからだ。

 ミルファたちパーティーメンバーには、職員の人たちと一緒にそうした連中を宥める役を担ってもらっていた。よってこの場にいるのはボクとおじいちゃん、そしてハイパーの人たちの計八人だけだ。


 さて、意外なことに彼らが例の怪しい人物と出会ったのはヴァジュラではなかった。が、それだけで『闘技場主』たちが無関係だとは言い切れない。

 何といってもシャンドラはその名前の通り巨大迷宮に隣接している都市だからだ。


 迷宮というのは多種多様な魔物が存在しており、その中には本来であれば険しい山麓や深い谷底といった前人未到の地にだけ生息しているような魔物もいるのだとか。

 よって珍しい魔物を興行の目玉の一つとしている闘技場からしてみれば、格好の捕獲場所であるのだ。


 ちなみに、シャンドラはクンビーラの南西方向、人の足だとおよそ半月ほどの距離とかなり遠い。

 当然クンビーラよりもさらに東にあるヴァジュラからはもっと遠く、捕獲した魔物を輸送するのも一苦労であるらしい。

 そのためこの魔物輸送に関わる依頼は難易度が高い分依頼料も高額で、『風卿エリア』を活動場所にしているプレイヤーの中でも高レベル向けのものとして認識されていた。


 時折護衛ついでに荷馬車に乗せてもらったり、一部の町の間は乗合馬車を利用したりもしていたようだが、ハイパー以下略は基本的に徒歩でクンビーラまでやってきたそうだ。

 つまり怪しい人物が彼らに接触したのは十日以上前のこととなる。その頃といえば『毒蝮』との攻防が本格化した時分であり、そうした面からもヴァジュラ関係者による犯行である可能性が高いと言えそうだね。


 後、ついでに補足しておくと、ゲームとしては『自由交易都市クンビーラ』と『武闘都市ヴァジュラ』、そして『迷宮都市シャンドラ』の三つが『風卿エリア』の主要三大都市として扱われている。

 そうした事情から大半のプレイヤーが初期位置に選んだり、当面の目的地として設定したりすることが多いのだとか。

 まあ、物流の拠点に名声を上げられる場所、そして能力と腕に沿って簡単に変更できる狩場だからね。この世界では移動するのも一苦労だから、そうした便利な場所を拠点とするのは、ある意味当然の選択だとも言えるだろう。


 話を戻そうか。一番気になるのはどうしてハイパーの面々をわざわざ焚き付けたのかということだ。

 はっきり言って彼らは弱い。レベルも本来であれば技量や経験も低いボクに負けてしまったのだから異論はないだろう。

 ただ、仮にこれが十日前であればどうだっただろうか?地下遺跡の探索はおろか、『毒蝮』との決着すらついていない頃のボクならば勝ち目は相当に薄かったと思われる。

 武器をハルバードに変更するよりも前のことなので、戦い方にも大きな違いがあっただろう。


「だとすれば、それなりに適当な人選だったのかな?」

「確かにリュカリュカのここしばらくの成長度合いは目を見張る、いや、異常なものがあったからな」


 おじいちゃん……。

 わざわざ悪い方に言い換える必要なくない?。


「まあ、こいつらを選んだ理由はともかくとしてだ。どうしてそいつはこんな面倒なことをしたんだ?」

攪乱(かくらん)と揺さぶり、かな……。ほら、あの頃って色々とゴタゴタしていたでしょう。そんなドタバタの真っ最中に冒険者から喧嘩を売られた、なんてことになったらあっちこっちに騒ぎが飛び火してしまったように思うんだよね」


 あちらの想定では、『毒蝮』を中心とした裏の人々の暗躍が今までずっと続いているということになっていたのかもしれない。

 そんな中で表に属する『冒険者協会』所属の冒険者同士までもが騒ぎを起こしたとなれば、クンビーラとしては何らかの処分が必要となったのは間違いない。


 それにハイパーの連中の精神面や性格面はあの通りだったから、負けたとなればそれなりのショックを受けたことは想像に難くない。

 場合によっては『エッグヘルム』として勝負を受けることになっていたかもしれないし、そうであればエッ君やリーヴが奪われていたかもしれないのだ。


 つまりは、彼らが勝つことで黒幕の連中はボクたちやその周囲に混乱と衝撃を与えることができると踏んだのではないだろうか。

 そして当時の状況であればそうなった可能性は高い。


「ふうむ……。確かにあの時分ならお前たちに何かあれば、方々に影響が出ていただろうな」

「しかも肝心要のブラックドラゴンが報告のための里帰り中で不在だったし。今から思えば、クンビーラが元気でいるのが不快な連中にとっては、絶好の攻め時だったのだろうね」


 こちらにとって幸いだったのは、正体がバレないことを第一にしていたためなのか、迂遠な計画ばかりだったということだろう。

 結果、それぞれが連動することもなく潰されてしまい、暗躍していた影を残してしまうことになってしまった。


 もっとも状況証拠ばかりだったり、エルの告白だけだったりと、ヴァジュラに関与を白状させるには決め手に欠ける。

 これらの札を用いて迫ったところで、のらりくらりとかわされて白を切られるのがオチとなってしまうだろうね。


「全くもって面倒なことだな。……で、話しは少し変わるが、こいつらはどうする?」


 消し去ることのできない一等級冒険者の圧迫感に、ハイパーの面々は身を縮こませていた。

 思わず「おじいちゃん、もれてる!威圧感が」とか言いたくなってしまったのだが、確実に話がそれてしまいそうなので自重します。


「これ以上は事を大きくしたくないというのが本音かな。あちらからすれば捨て駒扱いだったようだし、長々と関わって時間を取られたくない」


 もしかすると、痕跡を辿られる危険を冒してまで今さらながらに彼らを寄越したのは、こちらの動きを阻害するため、時間稼ぎをするためとも考えられる。


「だとすれば、態度の悪い連中が別の冒険者に絡んだだけということにして、さっさと素行不良で処理してしまうのが一番かもしれないということか」

「細かいことについてはお任せします。ああ、でも、これ以上バカな真似をしないように監視だけは付けておいてね」

「そこのところは抜かりなくやっておくから安心しろ。というか、これ以上騒ぎを起こされたらクンビーラからの借りが溜まって返却しきれなくなっちまう」


 そんな冗談ともつかない台詞に苦笑いで返すと、後のことをおじいちゃんや職員さんたちに任せることにして、部屋から抜け出したのだった。


明日から一日複数回更新予定です。年末年始なのでちょっと頑張ってみるですよ!

読み飛ばしにはご注意ください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 悪人「転移門や馬車でさっさと行って喧嘩売ってきてくれ」 ハイプレ一行「徒歩で行くぞ!!!」 悪人「えっ」
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