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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十四章 次の冒険に向けて

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340/933

340 説明しましょう

 ハイパー何とかの連中との模擬戦という名の喧嘩を始めてから早一分。奇策が上手くはまったこともあって、六人中二人までもを戦線離脱に追いやることに成功していた。

 想像に反してボクの一方的な攻勢が続いたことに、周りを取り囲むようにしていた野次馬たちもざわめいている。


「さっきのあれは何だ!?顔に張り付く水なんて見たことも聞いたこともねえぞ!?」


 そんな中、一際大きな声で叫んでいるのは片手剣の男Cだ。錯乱じみた顔つきとなっているが、少し状況が違えば自分がその餌食になっていたかもしれないのだからさもありなん。


 陸上にいるはずなのにいきなり溺れさせられるようなものだからね。不意を打たれてしまえば窒息の恐怖にも後押しされて、相当混乱してしまうのではないだろうか。

 実際に初の被験者であり犠牲者となった大盾持ちの男Dなどは、たった数秒で戦意を喪失してしまった。

 まあ、逆に言えばそれにさえ耐えきれれば、それほど恐ろしい攻撃ではなかったりするのだけれど。


 説明しよう!


 という訳で、そのカラクリについて詳しく解説しておこうか。

 まずは何をしたのかと言いますと、〔生活魔法〕の一つで水を生み出す【湧水】の魔法をオーバーロードさせた、ということになる。

 この【湧水】、水を生み出すということでとっても便利な魔法なのだけど、コップや鍋などの器に入れたり、飲み込んだりしないと一、二秒で消えてしまうという性質があるのだ。

 最初に見た時などは何とも不思議というか、ゲーム的な処理の結果だなあ、と思ったものだ。


 もっともそういう性質だからこそ、昨日公主様や宰相さんに向かって気兼ねなくパシャっとできたという裏の事情もあったりします。ビバ、魔法。


 そういう経験があったからなのか、先ほど戦いが始める前に「【湧水】をオーバーロードさせてやれば、消失までの時間が伸びるのではないか?」と閃いてしまったという訳。

 仮に心情を表示する機能が搭載されていたとすると、きっとこの時のボク頭上には明々と光る電球が浮かんでいたことだろう。


 まあ、それもこれも成功したから言えることではあるのだけれど。

 前にも述べた通り、練習も行わずにぶっつけ本番だったから、失敗するとか効果が発揮されずに終わるといった可能性もあったのだ。


 それでは気になる対処法についてに移ろうか。

 対処法その一、不意打ちに合わないように警戒しておく。

 オーバーロードによって伸びたとはいえ、その持続時間はわずか数秒だ。よほど全力で行動して酸欠状態にでもなっていない限りは、運動中であっても十分に息を止めていられる時間だろう。


 また、多少見え難くはなるけれど、基本的に【湧水】は飲み水、つまり、綺麗な水を生み出す魔法なので、完全に視界が塞がれてしまうという事態には陥らないはずだ。

 要するにパニックにさえならなければ、案外どうとでもなるものなのだ。


 対処法その二、距離を取る。

 いざやってみて気が付いたことなのだけど、〔生活魔法〕という括りにあるためなのか発動できる範囲が極めて狭いのだ。

 現状の体感ではボク自身を中心として半径二メートル以内が精々といったところかな。熟練度が上昇するに伴って変化するかもしれないので、要検証だね。


 このように、オーバーロードさせなくてはいけないという点も含めて、決して使い勝手の良い攻撃手段ではないといえるだろう。

 が、現在絶賛対戦中のハイパーの人たちは元より、良く知りもしない野次馬冒険者たちに教えてあげる義理はないので、意味深な微笑みを浮かべるにとどめるボクなのでした。


「これでボクの力のほどは理解できたよね。さて、どうする?」


 できることなら負けを認めて引き下がって欲しいというのが本音なところだ。戦意を喪失しているだけの大盾の男Dはともかく、気絶してしまっている弓使いの男Bの容態も気にかかるからね。


 それというのも『OAW』の本編において、この『気絶』の発生条件がいまいちはっきりしていないからだ。

 一応は状態異常の一種という扱いとなっており、野盗に襲撃された際に雇い主の商人が攻撃を受けてしまって気絶した、というようにイベントなどではそれなりに見る機会があるものらしい。

 毒という追加要素もあったけれど、ネイトと初めて会った時のミルファの状態もこれに当たる。


 対して、能動的にこれを発生させようとするのはとても難しい。特に対魔物戦ではまず発生しないとすら言われている。

 まあ、気絶させてしまえば反撃を気にする必要はなくなるため、後はもうやりたい放題になってしまうからね。即死攻撃ほど凶悪ではないにしても、ゲームバランスが崩れてしまう可能性は大いにあり得るのだろう。よって特定の演出でもなければ導入は難しいのかもしれない。


 ちなみに、似たような状態となる『睡眠』の状態異常は魔物相手でもしっかり実装されており、その効果を持つアイテムも普通に存在している。

 ただし、こちらは一回でも攻撃を受けることで解除されるようになっているので、睡眠誘発アイテム一つさえあれば楽勝!とはいかなくなっている。

 睡眠自体を無効化するような魔物も結構多くいるという話だし。


 プレイヤーが気絶を確実に発生させることができる唯一と言っても過言ではない行為、それは『異次元都市メイション』でだけ可能な行動でもあった。

 もったいぶったところで仕方がないので、さっさと答えを発表してしまうとですね。要はプレイヤー同士の対戦、『PvP』でだけ起こせるようになっていたのだ。


 とはいえ、この場合の気絶とは敗北条件を満たしてしまったということであり、戦闘不能な状態と同義なのだ。

 よって、本当に『発生させた』と言えるのかどうかは人によって判断が分かれていて、本編内での気絶とメイションでのPvPでの気絶は別物だ、という主張も根強く残ったままとなっている。


 長々と説明してきたけれど、結局のところ何が言いたいのかと言うと、滅多に起きないはずの現象が発生しているので心配!?ということだった。


 しかしながら、こういう願いというものは基本的に相手には届かないようになっているようでして……。


「くそっ!このままやられっぱなしで終われるか!」


 リーダー格の男Aの吠えるような声で、戦闘訓練という名目の決闘は続行が決定してしまうのだった。


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