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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十四章 次の冒険に向けて

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334 今さらながらに絡まれる?

 そんな話をしていたために知らず知らずのうちにフラグを建ててしまっていたのか、はたまたそれとも先ほど受け取った報酬の金額を聞かれてしまっていたのか。

 何やら下卑た笑みを張り付けた品の悪そうな男たちが近付いて来ていた。

 ああ、さっきの視線はこの連中の物だったのかもしれないね。


 ふむふむ。〔警戒〕技能によると人数は六人、つまりは同一パーティーの仕業ということなのだろう。ご丁寧に二人ずつ左右と後方へと包囲するように散開している。

 つまり逃がす気はないということか。


「これってボクが一人だと思われたってことですかね?」

「難しいところね。リュカリュカちゃんだけでなくミルファシア様もネイトさんも見た目は可憐な女の子だから。それにこう言っては申し訳ないのだけれど、テイムモンスターの子たちも見た目はそれほど強そうに見えないから……」


 ほほう……。つまりはパーティー全体として見ても弱そうだとか(くみ)しやすいと思われた訳ですか。


「先手必勝!ってやったらダメ?」

「それは勘弁してちょうだい……」


 うにゅう……。半分冗談のつもりで言ったのだけど、お姉さんからはかなり真剣にストップが掛けられてしまった。

 え?残り半分はどうだったのか?もちろん本気ですがなにか?


 だってこの連中、逃げられないように包囲するなんていう悪知恵だけは働く割に、完全にボクのことを見下して油断していたのだもの。

 ああ、今ならきっと面白いくらいに攻撃が命中しただろうに……。


 そんなことを考えている間に、男どもの包囲は狭められていて、ついにその内の一人、ボクから見て左手側にいた男が声をかけてきたのだった


「よう、姉ちゃん。ちょっといいか」


 お伺いを立てるという体にはなっているものの、その実拒否権なんて与えるつもりがないのが丸分かりな物言いだ。

 まあ、だからと言って大人しく従ってやる理由にはなりませんけどねー。


「そういえば七等級になると一人前として扱ってもらえるようになるんでしたよね?」

「え?……ええ。でもその頭に一応っていう枕が付くわよ。人によっては六等級に上がることができて初めて一人前だと考えていることもあるくらいだから」


 そんな訳でチラリと男を一瞥だけすると、わざとらしく受付のお姉さんとの雑談を再開させたのだった。

 さあて、これにはどんな反応を見せてくれるのかな?


 ちなみにだけど、即座にこちらに話を合わせてくれたお姉さんに、おびえた様子は一切なかった。場所柄仕事柄、粗野で乱暴そうな男どもに囲まれるなんてことも日常茶飯事ということか。

 受付と言うと華やかなイメージがあるけれど、実際にはなかなかに過酷な職種なのかもしれないね。


「こいつ、ガキのくせに舐めてんじゃねえぞ!」

「俺たちがわざわざ声かけてやったんだ!ありがたく話を聞きやがれ!」


 おうっふ……。この人たち、想像をはるかに超えるおバカちゃんたちでしたよ。

 どうにも沸点が低い人たちが混ざっていたようで、あからさまな態度の裏にある挑発にものの見事に引っ掛かったどころか、いきなり大声で叫び始めたのだ。


 はい。そんなことをすれば当然目立って人目を引くことになるよね。

 この時点で男たちのお粗末な計画は失敗が確定したのでした。


 しかし、当の本人たちがそのことにまるで気が付いていないことが問題でして……。

 ああ、それ以前にボクが反抗的な態度を取ったことそれ自体に意識が集中してしまっているのか。


「いい年をした大の大人が公共の場所で大声を出すとか、恥ずかしいを通りこして痛々しく見えてきちゃうから止めてくれない」


 ぱっと見この男たちは青年を越えて壮年、いや、どちらかと言えば中年に近い年齢のように思えたので、ざっくりとそこを突いて(ひね)って押し込んでやります。

 するとまあ、面白いくらいに何も言えなくなってしまったもよう。


 常に自分たちよりも弱い相手ばかりをターゲットにしてきたため、反論されることはおろか想定以上の高値で喧嘩を買われるといった経験がなかったのだろう。

 もっとも、喧嘩を売ってしまったというつもりもなければ、買われてしまったという認識すら持っていないのだろうけれどね。


 あ、ここまででお気付きのこととは思いますが、無罪放免で解放(リリース)してやるつもりはありませんので。

 それというのも最近冒険者協会に見覚えのない顔が増えてきているのを感じていたからだ。


 なのでここいらで一つ、しっかりとボクたちの顔と名前を売っておいて、これ以上変な連中が絡んでこないように牽制しておこうと考えた訳です。

 ああ、目立ちたくないとか思っていたのが遠い過去のようです……。


 さて、男たちが言い返してこられない内にさっさと畳みかけてしまうとしようか。


「大声で脅しを掛ければ怖がって言うことを聞くとでも考えてた?残念。こちとらブラックドラゴンが守護竜として居着いている街でずっと冒険者をやってきたの。今さらあの程度の(わめ)き声くらいで怯えるはずがないでしょうが」


 ボクが冒険者になってから一月強の時間しか経っていない上、ブラックドラゴンが正式に守護竜になったのはほんの数日前のことだけど、まあ、嘘は言っていません。


 実際にさっきのアレもただ苛立った感情に任せて叫んでいただけで、恫喝にすらなっていなかったもの。

 おじいちゃんのように〔気迫〕をぶつけろとは言わないが、せめて凄んで怒気をボクに向けるくらいのことはしないと、癇癪を起こした子どもと変わらない。

 先ほども言ったように、いい年をしている分だけ痛々しく見えてしまうという訳だ。


 ここで少し周囲の様子を伺ってみると……。

 今のところ遠巻きに見ているのが大半というところかな。積極的に避けることはないにしても、わざわざ間に割って入ってこようとする人はいなさそうだ。

 あー、予想通りと言うべきか、見知らぬ顔の連中の多くが面白い見世物を見るような目つきをしているね。

 やはり多少面倒であっても、今の内にこちらの名を知らしめておく必要がありそうだ。


 で、当たり前だけどうちのパーティーのみんなもその中にいた。

 ミルファ、ワクワクと楽し気にしているのはお嬢様としてどうなのよ……。そして何ですかネイトさん、その「頭痛が痛い」と言わんばかりのお顔は。


 あ!こっちをチラリと見たと思ったら、額を抑えてゆるゆると頭を横に小さく振っておられる!?


 ボクだって好きで絡まれたんじゃないんだからね!

 その点だけは声を大にして言っておきたい!


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