332 それぞれの成長
そんな感じで昨日は成果こそそれなりにあったものの、気分的にはかなり散々な一日となってしまったのだった。
いや、もう本当、仮に次があるとしたら「もっとお手柔らかにお願いします!」と大声で言いたくなるほどだったね。
という訳でそろそろ今日のことに戻る、前にもう一つだけ。
一昨日までの冒険でのレベルアップした分と、昨日のイベントクエストクリアによるボーナス報酬でもらった技能ポイントを用いての成長についてだ。
では、本人の自己申告がなくても分かるレベルから。
今回の遺跡探索でエルを除いた全員が二から三レベル上がることになった。その結果ボクが十二、ネイトが十三、ミルファが十四レベルとなり、うちの子たち二人もようやく十レベルの二桁大台に乗ることができたのだった。
ミルファとネイトに関しては能力値等細かい数値は見ることができない仕様となっているので詳しいことは分からないけれど、熟練度上昇で新しい闘技や魔法が使えるような大きな変化はなかったもよう。
それに対してボクたちの方はというと……、色々と変化がありますぜ。
分かりやすい熟練度のところからいきましょうかね。まずボクの場合は遺跡探索時の通常上昇分に加えて、技能ポイントをドドンと使用したことで〔槍技〕のロマンあふれる防御力無効の闘技、【ペネトレイト】を習得することができたのだ!
さらに〔水属性魔法〕の【アクアドリル】と〔風属性魔法〕の【ウィンドドリル】を、そしてついでに〔生活魔法〕の【光源】も習得と、できることが大幅に増えたのだった。
さすがに〔生活魔法〕に技能ポイントを使用するのはどうかとも思ったのだけど、この先エルと一緒に行動できる機会はそう多くないと予想できたため、一通りの魔法を習得できるところまで一気に上昇させておいたのだった。
他には今回の件で重要さを認識できた〔鑑定〕にも技能ポイントを割り振っておいた。とはいえそれでも熟練度は六十台なので、まだまだ視ることができないものも多そうだ。
そんなボクに対して、エッ君は一切新しい闘技を覚えてはいなかった。
というより、既に全ての闘技を習得しきっていたようなのだよね。〔竜帝尾脚術〕なんてもうすぐ百に届きそうなくらいまで上がっているもの。
そういう状態だったので彼の割り当て分の技能ポイントは全て〔瞬間超強化〕に使用されることになった。
残る技能が〔不完全ブレス〕しかないので、選択肢がなかったとも言う。いくらなんでも危なくて使い道のない技能を育てるだけの酔狂さはボクにはないです。
残るリーヴだが、技能面でははからずともボクとエッ君のちょうど中間といった成長となっていた。
技能ポイントは〔英雄剣技〕と〔守護盾技〕、〔聖属性魔法〕の三つにそれぞれ振り分け、冒険での通常上昇分と合わせて【ホーリーニードル】を習得するに至っていたのだった。
これで大物の攻撃を防ぎつつ、お供で出現した雑魚魔物たちをまとめて攻撃する、と言った立ち回りも可能になった訳です。
逆に負担が集中し過ぎる可能性もあるから、指示を出すボクとしてはこれまで以上に気を配らないといけないかもね。
次に能力値の上昇だけど、ボクは攻撃面を強化するため〈筋力〉と〈魔力〉をそれぞれ上げることにした。
エッ君は〈筋力〉と〈敏捷〉で、リーヴは三レベルアップだったため〈体力〉と〈知性〉に〈魔力〉の三つを上昇させた。
長所を伸ばしながらも弱点を補強したつもりなのだけど、はてさて上手くいっているのかどうか。
それはこれからの冒険で明らかになっていく事だろう。
後、武具等については昨日の通りだし、アイテム類の補充はこれからなのでまた後日ということで。
「本日はいかがしますの?」
行ってきますの挨拶をして、『猟犬のあくび亭』を出て歩き始めたところでミルファが尋ねてくる。
普通そういうことって出掛ける前に聞くものじゃないの?とも思ったが、こちらはゲームの世界だ。これもまたプレイヤーであるボクの意志が最優先となることの表れなのかもしれないと考え直す。
NPCたちのAIは随時成長中とのことなので、今後に期待だね。
「まずは冒険者協会に行って指名依頼の完遂の報告かな。報酬も貰わないといけないもの」
昨日の公主様たちへの報告でイベントクエスト自体は完了したようだが、その報酬は依頼者から預かった完了した旨を示すアイテムを協会に持っていく事で初めて受け取ることができる仕組みとなっているのだ。
ちなみにこれらアイテムですが、掲示板によるとやはりと言うか書類であることがほとんどであるらしい。
ただ、時には秘密にしたい依頼者もいるようで、そういう際は家紋や屋号の一部だけが描かれたものなどが使用されることもあるのだとか。秘密の符丁のようで、ちょっぴりドキドキワクワクしてしまいそうだね。
もっとも、密かに犯罪に巻き込まれている場合もあるらしいので、やたらと秘密にするよう念押ししてくる指名依頼は怪しいと思っておいた方が無難であるとのことです。
「代わりに何かクエストを見繕っておきますか?」
「うーん……。『石の金床』にも行かなくちゃいけないし、ブラックドラゴンさんにも浮遊島のことで何か知っていることがないかを聞いてみたいから、できたとしても街中のお使い程度だと思うよ」
「それでも何もしないよりはマシですわ。働かざる者食うべからずですの」
その意見に反対するつもりはないが、この街の最高権力者の一族のお嬢様がそれを言っちゃうというのはどうなんだろうか?
さすがに庶民派お嬢様などという体の良い言葉では誤魔化せないような気もする……。
まあ、ミルファだしこういう生き物だと思うしかないかな。
「……また何か失礼なことを考えているのではなくて?」
「ソンナコトナイヨー」
「ですから!いつも言っているように、その片言口調が怪しさ倍増ですの!」
キー!と叫び出しそうなミルファの姿にニ、コニコと微笑むネイト。
じゃれ合いながら歩いていたためか、あっという間に目的地である冒険者協会へと辿り着いたのだった。
余談ですが、ボクたちが通り過ぎた後ではなぜだか何人もの男性が呆けており、周囲の人から心配されたり衛兵隊の詰所にまで連行されたりしたのだそうだ。
ここのところの陽気で皆ぼんやりしちゃったのかしら。
リュカリュカにミルファとネイト、及びエッ君とリーヴについてはちゃんとステータス表を作っております。
詳しく知りたいというご要望があれば記載しますです。




