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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十三章 報・連・相食べま……、やってます

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329 事前の確認が大事

 豪快にそれてしまっていた脇道から話題君が無事に生還を果たしたところで、ようやく本題その二へと突入です。


「それで、話しを戻すが先ほどの不穏当な言葉は一体どういうことだ?場合によってはいくらリュカリュカたちとはいえ、無罪放免という訳にはいかぬぞ」


 一転して眼光鋭くなる公主様たち。これまでの和やかなやり取りがなければ、あっという間にその気配に怖気づくことになっただろう。

 実は〔気迫〕とか使えるんじゃないでしょうかねえ?

 無意識に圧迫感を軽減しようとしたのか、そんなすっとぼけたことを考えてしまうボクなのだった。


 公主様の言う「不穏当な言葉」というのは、ネイトがうっかりこぼしてしまった「お家騒動」のことを指していることに間違いはないだろう。

 というか、この状況で全くの別件だったとか言われる方が困ってしまうよ。


 さて、どう答えたものかな。あ、もちろん誤魔化したり隠したりという選択はあり得ませんから。

 そうではなく、どうやって伝えるべきかしら?という部分で困っているのだ。ものがものだから、やり方をしくじれば二度目の強制フリーズが発生してしまいそうだし……。


 それにしても、ネイトがハチベエ的なうっかりをやるのは珍しいことだよね。それだけボクたちの関係が自然なものとなった、と言えないことはないと思う。

 でも見方を変えると、暢気(のんき)でおとぼけな空気が蔓延している、ということになるのでは?……

 き、危険だ。ギャグ方面へと邁進してしまわないように注意しておかないと!


 ……ええ、分かってますよ。これも一種の現実逃避でございます。

 だって、余計な衝撃を与えないように穏当に説明する方法を思い付かないんだもの!


 ああ、もう!うじうじと思い悩むのは性に合わないよ!

 こうなれば正面突破の暴露方針でやっちゃいますよ!


「あらかじめ言っておきますけど、少々刺激が強いものになりますから、そのつもりでお願いします」


 が、そんな枕詞を入れてしまうチキンなボクです。


「ちょっと待て!嫌な予感がひしひしとしてきたのだが!?」

「刺激が強いとはどういう――」

「二人とも出ておいで」


 目の動きだけでアイテムボックスを開いて『ファーム』を選択する。

 そこから飛び出してきたのはもちろん、


《パーティーメンバーが一杯のため、これ以上テイムモンスターを出現させることはできません》


 なんですとー!?

 慌ててパーティーの状況を確認してみたところ、昨日までの地下遺跡探索メンバーのままになっているじゃないですか。つまりボク、ミルファ、ネイトに加えてエッ君とリーヴ、そしてエルの六人フルメンバーとなっていたのだった。


「……何も出てこないのだが?」

「う、うむ。確かにこれはこれで刺激的ではあるな。主に心の方が……」


 いーやー!!

 ズバッと斬り込んでくる宰相さんの一言も、なんとかフォローをしようとして空回りしたどころか傷口を広げてくれちゃった公主様の言葉も、どっちも痛いです!

 まさに痛恨の一撃!いや、二撃?

 余談ですがツーコンと言ってもツープレイヤー用コントローラーの略ではありませんのであしからず!


「ふ、ふふ……。真っ白に燃え尽きてしまいそうだよ……」

「まるで強敵との激戦の後みたいやけど、単なる自爆やん……」


 はい、そこの介抱エルフさん。患者(ミルファ)の様態が落ち着いてきたからといって、わざわざこちらに突っ込みを入れてこなくていいです。


「なんだか気勢を削がれてしまったな……」

「うむ。これもまたリュカリュカの目論見通りであったならば、空恐ろしいことだな」

「宰相様、それはないです。今のは間違いなく裏もなんもない失敗です」


 うん。まあ、エルの言う通りなんだけどね。

 どうしてだろうか、他人に解説されると微妙に腹立たしいというか悔しい気持ちになってしまう。しかしながら変に策士を気取ったところで、宰相さんから危険人物指定を受けたりしては意味がない。

 既にクンビーラとはいい感じで協力体制を構築できている――かなり肩入れしてしまっているのは、この際もう諦めることにします――ので、これ以上のアピールは必要ないだろう。

 むしろそれこそ先ほどの話題を蒸し返されることになり、クンビーラのどこかの部署に強制的に放り込まれかねないよ。


「エッ君、リーヴ。申し訳ないけれどしばらく『ファーム』の中にいてね」


 思い浮かんできた危険な未来を消し去るためにも、さっさと用件をすませてしまおうか。

 表に出ていたうちの子たち二人を『ファーム』へと向かわせる。パーティーの編成画面から二人分の空きがある事を確認して、と。


「改めまして。二人とも出ておいで」


 これでエッ君とリーヴが飛び出してきたりなんかしちゃった日には、肩透かしの再来でコントかお笑いの舞台のような事になってしまったことだろう。

 そんなことになっては話が進まないどころか打ち切りにもなりかねない。

 そんなボクの不安を感じ取ったのか、ということはなく、空気を読めるうちの子たちはちゃんと目当ての二人が出てきてくれたのだった。


 ボクたちの戦いはこれからで、果てなき坂道を駆け上がっていく必要がなくなったことに、こっそりと安堵の息を吐いていたことは秘密です。


「ここは初めましてと申すべきなのかしら?不本意ではありますが、ちびミルファことチーミルと呼ばれておりますの」

「初めまして。リトルネイトことリーネイの名を(たまわ)っております」


 元になった二人の気性そのままといった様子で、チーミルはツンツンと、リーネイはおっとりとした雰囲気で初見の三人へと挨拶を行う。

 それに対して公主様たちと宰相さんは目をまん丸にして驚いていた。口を開けることがなかったのはダンディーなおじさまの矜持ですかね?

 残るエルはというと、お顔が二つに見えるくらい高速で首を振りながらミルファとチーミル、ネイトとリーネイの二組を見比べていたのだった。


「詳しく話せば長くなるので端折って端的に要点だけお伝えするとですね、縁あってミルファとネイトをかたどった人形を手に入れることができたんですけど、なんやかんやで本人たちの魂分けをしてもらえることになって、そしたらテイムモンスター扱いになっちゃいました」


 と、聞こえているのかどうか微妙な感じだね……。

 今でこれだけ驚かれたのだから、噂話が巡り巡って耳に入るような事態になっていたら大騒ぎどころではなかっただろう。


 ナイス判断だったよ、ボク!


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