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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十三章 報・連・相食べま……、やってます

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323 クンビーラ側のするべき仕事

 ミルファにネイト、そしてうちの子たちにも一応確認を取ってみたところ、公主様の、クンビーラからの協力要請については満場一致で受け入れることになった。


「受けてくれてありがたく思っている。……が、この場で尋ねたとしても反対意見など出せなかったのではないか?」

「いいえ、問題ありません。依頼の内容によっては冒険者本人だけでなく依頼主や周囲の人々にまで被害が及ぶ可能性がありますから、できないことはできないとはっきり断れる意志の強さを持つことも冒険者には必要なことなのです」


 とネイトがボクに代わって答えてくれる。

 ボクたち三人の中では一番冒険者歴が長い、つまりはこの場においてもっとも冒険者のことに詳しいということになるので、この役回りにもぴったりだったと言えるね。


「そうか。では『エッグヘルム』の者たちの方はそれで頼む。さて、残る我らの方であるが、新たな情報は得たいが下手に口を滑らせて他国の者たちに勘付かれても困る。よって、外交筋でこの話題を出すことは基本的には禁止とする。また、独自に動こうと考えている者たちもいるだろうが、焦って動いてはこれもまたどこから情報が流出してしまうか分かったものではない。当面は噂話の収拾程度の軽く、いくらでも誤魔化しが効く範囲に収めるように」

「はっ!」


 公主様の宣言に臣下の礼でもって応える貴族たち。

 行動を制限される形になったけれど、そのことに不満を持っている様子ではなさそうで一安心だ。


「死霊どもとの対決を見据えると、戦力の増加も合わせて行っておきたいところではあるが……。宰相はどう思う?」

「ブラックドラゴン様が守護竜となって頂けた上にクンビーラの騎士団や衛兵部隊の増強まで行ってしまうと、他国からは侵略のための準備ではないかと勘繰られてしまうことでしょう。よって現状ではこれらを推し進めるのは難しいと思われます」

「やはりそうなってしまうか……」


 公主様が「何か良い案はないものか……」と唸っていると、「それではこのような方法はいかがでしょうか?」と侯爵さんが手を挙げた。


「我ら領地持ちの四家が抱える私兵の内、それぞれ半分ほどをクンビーラの騎士団や衛兵部隊へと召し上げるのです」

「どちらの組織も手が足りなくなっているから、すぐさま現場に出ることができる経験者は喉から手が出るほど欲しいものではある。だが、それではそなたたちの領地の守りが手薄になってしまうのではないか?」

「幸いというかなんというか、ブラックドラゴン様の噂を聞きつけた冒険者たちがクンビーラを目指す過程で小遣い稼ぎついでに魔物を倒していくお陰なのか、ここ数十年で最も魔物の脅威が少なくなっているのです」

「逆に領民たちの中には仕事にあぶれるようなものがちらほらでてきておりまして」


 なるほど。私兵の再編という形で領民の雇用先を創出しようという狙いのようだね。

 クンビーラという都市へと若い人材が流出することを防ぐ観点からも、この案は有効なのではないかな。


「実は今回の件とは関係なく、一度奏上してみてはどうかと先日四人で話し合っていたところだったのです」

「ふむ。そなたたちの思惑は分かった。だが、肝心の兵たちはどう思っているのだ?」


 チラリと視線を交わしてから、伯爵の一人が口を開いた。


「それがですな……。ブラックドラゴン様を間近で拝見することができるかもしれないということで、大変乗り気なのです」


 これはまた予想の斜め上な回答だったね……。説明役を買って出た割に歯切れが悪くなるはずだよ。

 これには公主様と宰相さんも苦笑いです。


「今さらそなたたちが使えない人材を送り出してくるとは考えてはおらぬが……。一応、無駄飯食らいは即刻追い出すことになると釘を刺しておけ」

「は、はっ!」


 冗談交じりの一言に対して、四人は真剣な顔で返事をしていた。

 まあ、変なことをすればまさに御里が知れてしまうことになるからね。四人からしてみれば恥をかかないようにと(ぶっと)い釘を刺すことになるんじゃないかな。


「それにしてもよい案を出してくれたな。これなら周りの国々もほぼほぼ額面通りに受け取ってくれるであろうよ」


 それでも「ほぼほぼ」止まりなんだ……。国同士の関係なんて出し抜きあうのが基本設定に組み込まれているようなものだから、当然の反応と言えるのかもしれないけれど。


「後はどれだけ仲間と呼べるような者たちを増やすことができるのか、ということになるか。本音を言えば我らだけで片を付けたいところではあるが、敵は大陸統一国家の頃から存在し続けている死霊どもだ。必勝を期すためにはどれだけの戦力があったとしても無駄になるような事はないだろう」


 先ほどまでとは一転して難しい顔になる貴族たち。

 標語的な心持ちの問題ではなく、本当の意味で負けられない戦いになるから仕方のないことだろう。


「まずはリュカリュカが推薦していた冒険者協会のデュラン支部長に数名の高等級冒険者たちから始めてみるしかないだろうな。各自余計な色眼鏡は捨てて、しかし厳正な瞳で判断するように」


 おおう。なんだかどえらい展開になってしまっているような……。

 デュランさんにおじいちゃんたち、ごめん。頑張ってこちら側へと来てくださいな。


「ではこのくらいで今回の会議を終えるとしよう。ああ、リュカリュカたちはしばらく残っていてもらいたい。ヴァジュラに行った時の話を聞きたいのでな」

「それでは、解散」


 宰相さんの言葉に合わせて臣下の礼を取ると、トップ二人以外は各々退室して行った。

 その際、全員がボクたちに向けて小さく目礼していた訳なのですが……。これ、完全にクンビーラに取り込まれているよね。

 しかも明らかに年若い同僚に向けた憐れみの視線だったよ!?

 ちょっと待って!?これから何を聞かれちゃうのかな!?


「リュカリュカ、ヴェル様にどこまでお話しするつもりですの?」


 心配そうな小声が聞こえてきたかと思えば、その通りの顔をしたミルファがこちらを見ていた。

 おやおや?こちらはこちらでどうしてそんなに不安そうに?


 ……って、ああ!そういうことか。あの時のことを一から十まで全部話してしまうとなると、芋づる式に『異次元都市メイション』や二人の人形のことについても話さなくてはいけなくなってしまう。


 うあー……。これはまた頭の痛い問題が登場してきたもんだ。


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