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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十二章 三度目の地下遺跡

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303/933

303 刻まれた記録 その3

 かつて栄華を誇っていた大都市が廃墟になっていたという話は、リアル世界でも古今東西枚挙に(いとま)がない。それこそ世界中にそうした遺跡が点在していて、観光名所になっている所もあるほどだ。

 しかし死者たちが跋扈(ばっこ)する地に変貌していたとなると、それはもう創作物の中の話だけとなってしまう。

 まあ、リアル世界では幽霊を始めとした死者に由来する存在がはっきりと認知されている訳ではないので、ある意味当然の話とも言えるのだけれど。


 そんなこともあってボクにとっては石板の内容はかなり衝撃的なものだった。

 しかしそれはパーティーメンバーの仲間たちにも共通していたようだ。ただでさえ大陸統一国家時代の浮遊島の存在が明らかになったばかりだったからねえ……。

 あくまでも石板に書かれていたことが真実であると信用するならば、という前提に基づくものだけど、ミルファの御先祖様の名をかたっている時点でそれを疑う必要はないように思う。


 しかも単に存在を発見したというだけでなく、その場所へと行ってきた記録だというのだからさあ大変!

 ええ、ええ。この段階で頭の処理能力の大半を使用することになっていたのだ。

 そこに前述の通り死霊たちがうごめくディストピアだったという情報まで加わったことで、完全に処理不足の容量オーバーとなりフリーズしてしまったのだった。


 あ、さすがにエッ君とリーヴにはピンときていないようだったけどね。

 あちこちさ迷い歩いていて様々な経験や知識を有しているらしい――レベルではなく、取得していたとんでもレア技能に反映されていたみたい――リーヴだが、その種族は魔法生物のリビングアーマーだ。そのためか人社会の常識的感覚についてはまだまだ理解が浅い面が多々あるのだった。


 また、作品によってはリビングアーマーもアンデッドモンスターの一種として扱われることもあるので、そうしたことも影響しているのかもしれない。

 つまり目の前で対立しない限りはアンデッドモンスターを敵として認識し辛く、それゆえに危機意識を持ちにくいのかもしれないと考えられるのだった。


 もう片方のエッ君に至っては言わずもがなで、生まれてからまだ三カ月しか経っておらず、こちらは世界や世間についての知識も経験もほとんどない。

 よって、どうしてボクたちがこんなに驚いているのかがよく分かっていなかったのだった。


「はあ……。ここにきてまた特大の爆弾を投下してきたもんだ。えーと、話を進める前に確認しておきたいのだけど、死霊っていうのはどういう状態なのかな?」

「魔物の分類からすると、アンデッドモンスターの中でもゴーストやスペクターの上位種という扱いやな。ゾンビやスケルトンと違って仮初の身体も持ってへんから、この系統の魔物は総じて物理攻撃に強いんや」


 この辺りのことは以前ボクの方からも述べさせてもらったことがあるように思う。


「彼らが通常の魔物と異なる点はただ一つ、生前の記憶を未だに有しているか否かということになります。というより生前の記憶を持つゴースト系統の魔物を『死霊』という枠に押し込めているという方が適切かもしれません」


 エルの言葉を継いでネイトが教えてくれた。つまり一口に死霊と言っても、強さ的にはピンからキリまであるので注意が必要ということであるようだ。


「あれ?どうしてゴーストの系統だけなんだろう?」

「それはスケルトンやゾンビといった仮初の身体を持つアンデッドでは生きている頃の記憶を保持できないからですわ」


 あー。納得。

 記憶しようにもスケルトンには肝心のお脳の部分がないのだろうし、ゾンビに至っては腐っちゃっているんだものね。

 いわゆる魂的なものもなくなっているのでは?と考えられているそうで、記録媒体自体が存在していないという状況なのだろう。

 反対にゴーストなどはその魂そのものに近い存在とされているので、記憶が残されている『死霊』という存在が生まれることがあるのだろう。


 それでは石板の続きです。


『死霊たちの大半は生きていた頃の名残なのであろう行動をひたすら延々と続けているだけのようであったが、中には未だ自我すらもはっきり残している者もあった』


 おやおや?記憶が残っているのが死霊ではなかったのかな?


「保持している記憶量にも個体差があるんです」


 その疑問に答えてくれたのはネイトだった。


「その違いは現世への執着の度合いによって異なると言われています。中でも自我が残っている死霊はその度合いが高く危険であるとされていますね」


 死霊の記憶は現世への執着の度合いが強くなるに従って、もっとも頻繁に行ってきた活動、掲げていた目標や目的、自我の順に増えていくのだそうだ。


「一つ気になるのは、時間が過ぎるごとにそうした執着心というものは薄れていく傾向にあり、力を失っていくことがほとんどだと言われているのです。つまり、大陸統一国家が滅んでから数千年も自我を保ち続けていられるというのは異常です。余程その個体の執着心が強かったのか、それとも浮島に何らかの細工が施されているのかのどちらかだと思われます」


 ほうほう。

 それではそうした点も踏まえながら、この先は読み進めていくとしようか。


『数千年もの長い期間に渡って自我を保ち続けていられる死霊など異常以外の何物でもない。嫌な予感を覚えた我らは危険を承知でこの死者たちの都を探ることにした。思い返してみると、この時にはまだあわよくば死霊たちに成り代わってこの空飛ぶ島を手に入れるという野心が残っていたのであろう。恐怖と絶望という二体の怪物が口を開けて待ち構えていることなど知らずに。』


 浮遊島の死霊たちの状態が異常だというのは、当時の人たちにとっても常識だったのか。

 それにしても不安感を書き立てるような記述の仕方だよね。それだけ後悔しているということの証であるのかもしれない。


『何が原因であったのかは未だに不明なのだが、調査の過程で我らは死霊どもから侵入者として認識されることになってしまった。恐ろしいことに自我のある死霊はその他の死霊をまるで手足を動かすかのように操ることができたのである。今でも時折大量の死霊たちに追い回される夢を見てしまう。それほどに恐ろしい出来事であった』


 ホラー映画さながらの実体験ともなれば、きっとトラウマものだろう。

 むしろ時折夢に見る程度ですんでいるのはマシな部類かもしれないね。


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