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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十一章 不機嫌な日常

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 先生たちによるボクたちへの事情聴取は十分程度で終わった。まあ、一般的には下級生の教室にやってきて大声を出していたという時点で十分にアウトとなる訳でして。

 あらかじめ先生たちの中では騒ぎの主な原因は彼にある、という判断が下されていたようだった。


 これにはもちろん理由があり、先生たちを呼び出す際にクラスメイトがおおよその経過を説明していたためだった。

 加えて実は彼、今回よりは小規模ながら夏休み前にも似たようなことを何度かやらかしていたらしいのだ。相手が同学年だったことや場所が廊下だったこともあって、それらの際にはそれほど大きな問題には発展しなかったのだとか。


 ちなみに助けに来てくれたのは数学科の先生たちだった。

 ボクたちの通っている高校では校内の各所にそれぞれの教科ごとの準備室が設けられている。ここには授業で使用する備品だとかテスト作成のための資料などが置かれている他、職員室以外の先生たちのサボりの場、コホン!もとい憩いの場として機能しているのだった。


 もちろん、学生が個別に分からない部分を教わったり、学校生活での相談に乗ってもらったりする時などにも利用されているね。

 ごく一部、先生たち以上に入り浸って準備室の主状態になってしまう学生もいるとかいないとか……。

 そんな準備室のうち、ボクたちの教室から一番近くにあったのが数学科の準備室だったという訳だ。

 ああいう時というのは意外と焦ってしまい、思考が硬直してしまいがちだからね。職員室ではなく近場の準備室に向かったクラスメイトは本当にナイス判断だったと思うよ。


 さらに余談ながら、担任の先生は部活動の引率のため学外に出てしまっていたらしい。そういえば必要事項の確認が終わると同時に、凄い勢いで教室から飛び出して行ったような……。

 なんでも練習試合ということで、他校の人たちを待たせている状態だったのだとか。同じくその部に所属していた学生たちも先生に負けず劣らずのスピードで学校から去って行ったのだそうだ。


 話を戻そう。そんな状況だったため、ボクたちの一件に関しては割って入ってくれた数学科の先生たちに一任するということになったようです。


「彼の方からも事情を聴いて、私たちの情報と重ねて総合的に判断を下すということになるから、最終的な結論は夏休み明けになると思っておいてちょうだい。もっとも、あなたたちは目を付けられてしまった立場だから、恐らくは基本的にお(とが)めなしということになるはずよ」


 年配の女性教諭の言葉に、そこここからホッと安堵の息を漏らす声が聞こえてくる。

 が、安心していられるのはここまでだった。


「むしろ事情を聴いた時に気になった点には注意をしておいたので、これ以上の罰は必要ないという方向に話を持っていくつもりだ。……という訳で、一応これから説教タイムだな」


 げげげのげ!そうなるかもしれないとは思っていたけれど、そんなやたらと楽しそうな笑顔を浮かべられてしまうと覚悟が揺らいでしまいそうなのですが!?

 話を受け継いだ男性教諭の表情に、思わず頬を引きつらせることになるボクたち学生一同です。


「まず、周囲で見ていることになった者たちだが、お前たちに関しては特にいうことはない。横から割って入ることで余計に話がこじれるということも多いからな。欲を言うなら自分たちの手に負えないと感じた時点で助けを求めて動くべきだったということだが……。この辺りの判断は経験がものを言う部分もあるから仕方がないところではある」


 ああ、それは確かに。特にあの人は自分に都合の悪いことには一切合切お耳がクローズしてしまう性格だったようだし、口を出すだけ無駄となってしまった可能性は高い。

 それに例え耳を貸したとしても、それで聞き入れるかどうかとなるとまた別問題だ。

 超が付くほど周りの空気には鈍感だったけれど、その一方でボクの煽りにはすぐに反応していた。それらのことから考えると、下手に口を出すと逆上して最悪暴れ出すということにもなったかもしれないので、遠巻きに眺めるだけに留めていて正解だったと言えそうだ。


「それに比べて三峰と星……」


 え?なに?いきなりため息とか先生酷くない?


「知り合いが危険な目にあうかもしれないと考えたからなんだろうが、煽ってどうする。もしもあいつが切れて大暴れでもしてしまっていたらどうするつもりだった?常に自分たちの手におえることばかりが発生する訳ではないんだぞ」


 おうふ……。まったくもって酷くなかったわ。

 というか、言われてみればごもっともな話だった。あの人の態度や言い分に、自分で思っていた以上に頭に血が上ってしまっていたようだ。


「すみません。改めて考えてみると軽率だったと思います」


 幸いにも彼の怒りは基本的にボクへと向いていたため、そしてその怒りが行動に繋がることはなかったので事なきを得ることができた。

 が、それはあくまでも結果論にすぎないものであり、もしかするとその怒りが暴力という形で周囲にいたクラスメイトたちを害することになったかもしれないのだ。


「その顔からすると、どういう危険が潜んでいたのか理解できたようだな。まあ、元凶はあいつの身勝手な行動だろうから、反省はしても落ち込む必要はないぞ」


 そう言ってフォローを入れてくれる先生。しかしながら、先生たちにまでもきっちり元凶認定されているとか、あの人はいったい何をやらかしてしまったのやら。

 聞いたが最後、泥沼に引き込まれてしまいそうだから、深くは知る気もないけれどさ。


「ところで少し話は変わるのだけど、さっきの彼とは関係なく、二人とも学生会に興味はないのかしら?」

「そのつもりはないですね」

「私も高校では部活動を優先するつもりです」

「そ、即答だったわね……」


 少しも悩む様子を見せなかったことが驚きだったのか、冷や汗すら流しそうな先生たち。

 ただ、予想外の回答という点ではクラスメイトたちも同意見だったようだ。


「え?星も三峰も学生会には参加しないのか?」


 と尋ねてきたのは同じ中学出身の男子だ。中学時代にはクラスこそ一緒になったことはなかったけれど、委員会活動などでは何度か顔を会わせたことがあったという間柄です。


「私はさっき言ったように部活中心の予定よ」

「私は生徒会というより知り合いに会いに行っていただけだから。本格的に活動するなんて無理むり」


 言い方は悪いけれど、あの頃は半分遊び感覚だったからね。


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