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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十章 地下遺跡探索2

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276 仕掛けと罠は紙一重

 四枚目の壁画の中心にデカデカと描かれていた魔導機械。その側面には怪しい窪みがあった。

 発見したのはうちの子のリーヴです!


 はい、拍手!

 パチパチパチパチ!


 と、のっけからハイテンションでお送りしているのは、よくもまあ、これだけはっきりと分かる窪みを今の今まで見つけることができなかった自分たちへの腹立たしさを紛らわすためでもありまして。


「いやいや、今でこそある(・・)のが分かっとるから気が付くけど、これは相当巧妙に隠してあるで。うちでも何も知らん状態やったら、触ってみんと分からんかったやろな」


 というエルのお墨付きもあったので、発見できなかったことを悔やむ方向から、見事見つけ出したリーヴを褒め称える方向へと転換したという訳です。

 実際のところ、幻覚などの魔法こそ使われていなかったが、目の錯覚や(だま)し絵の効果等々いくつもの技法を組み合わせることで、ボクたちの頭に窪みの存在を認識させないようになっていたらしい。


「部屋の中がやたらと雑多なんも、そうしたトリックの一つなんやろうな」


 言われてみれば確かに机や椅子の装飾がやたらと凝っていたり、壺や絵画などの調度品があちこちに飾られていたりと、エンジンっぽい魔導機械を開発していた場所としては不適切な気がする。

 え?どうして開発室だと思ったのか?数式などがいくつも書きなぐられている黒板のようなものがあり、本や書類が至る所に散らばっていたからです。


「そんな具合で色々と仕込まれとったいうことやな」


 製作者はとてつもなく用心深い人か、それとも性根が捻くれた人だったのだろう。


「壁画の窪みを見つけられなかった理由は分かりましたわ。ところで肝心のその窪みは一体何を意味していますの?」

「私が以前に冒険者仲間から聞いた話では、こういう所には大抵何かをはめ込むことで仕掛けが作動するのだということです。ただし、罠の場合もあるので、その点は用心が必要らしいですよ」


 これで先へ進めるとか、これで謎が解けるとなれば、油断するとまではいかなくとも気が緩んでしまうことはあるだろう。

 そんな瞬間に罠が襲い掛かってくるのだから、とんでもない悪質さだよね。


「それ、おじいちゃんやゾイさんも言ってたよ」

「ええ!?ディラン様が!?そ、それはいつの話ですの!?」

「この前、『武闘都市ヴァジュラ』に行った時だね」


 『笑顔』との合同公式イベント直前の、『ファーム』を購入しに行った時のことだ。道中が平和だった半面とても暇だったので、退屈しのぎに過去に受けた依頼の話を色々と二人から聞かせてもらったのだった。


「ズルいですわ!」

「いや、ズルいと言われても。あの時ミルファはブラックドラゴンがクンビーラの守護竜になった記念の式典に出席していたんだから仕方がないでしょうに」


 公主家に連なる者として、どうしても欠席する訳にはいかなかったのだ。


「……『泣く鬼も張り倒す』のディランを「おじいちゃん」呼びできるんは、リュカリュカくらいなもんやろうなあ」

「そうでもないよ。実はおじいちゃんは子ども好きでさ。昔から色んな街の孤児院に顔を出していたんだって。クンビーラ(ここ)でも同じことをやっていて、孤児院の子どもたちからは『ディラじい』って呼ばれているらしいよ。デュランさん情報だから間違いない!」


 ちなみにデュランさんはエルフなのでおじいちゃんという歳の頃には到底見えないこともあってか、「しぶちょー」と呼ばれているのだとか。


「昔の相棒の情報を流出させんなや!……というか片割れのデュランもここで支部長をやっとるんやったな。他にも何人か名前こそ知られてへんけどかなりの手練れがおるみたいやし、クンビーラの冒険者協会の戦力はおかし過ぎるで。よう、これで他の街から苦情が出てこんもんや」

「それはもしもの時にブラックドラゴンに対抗するため、と無理矢理押し通しているそうですよ。先日サイティーさんから伺いました」


 それでもまだ引かない連中には、「それじゃあ、代わりにお前のところが何とかするのか?」と問い質したところ、呆気なく前言を撤回したのだそうだ。

 デュランさん的にはその時の様子はかなりの傑作だったみたいで、「手品かと思うくらいにあっという間の掌返しだったよ」と楽しそうに話してくれた。ただ、「その分絶対に引くことはできなくなったから、ブラックドラゴンには絶対に安静にしてもらわないといけなくなったよ」とも言っていたけれど。


「あれ?ところで何の話をしていたんだっけ?」

「……見つけた窪みをどうすればええんかっちゅう話や」


 ああ!そうでしたそうでした。


「そういえばこういう仕掛けって、正解以外の物をはめ込もうとすると罠が作動するというのも定番だよね」

「え、えげつないですわね……」

「ミル嬢がそう言うんも分かるけど残念ながら事実や。という訳で、何でもかんでも試そうとしたらあかんで」


 なぜそこでボクを見る……。って、エッ君もリーヴも指を窪みに入れようとしないで!?

 慌てたボクたちが四人総出で二人を止めたのは言うまでもない。


「ああ、ビックリした……。エッ君もリーヴも、怪しい場所には無闇に手を出しちゃいけません!」


 エッ君と並んで正座して項垂れるリーヴというのも珍しい光景だ。それだけ窪みの発見で浮かれてしまっていたということなのだろう。

 これはリーヴの様子をもっとよく見ておかなかったボクの責任でもあるなあ。


「そうやで。罠ん中には指を食いちぎられるような悪質なもんも混じっとるからな」


 ダメ押しのエルの脅しに「ひいいいぃぃぃ!」と震え上がる二人。

 あれ?今どこからともなく悲鳴が?と思ったらミルファが一緒になって怖がっていた。この子の感受性の高さも相変わらずです。

 とにかく、これでこの後しばらくは迂闊な真似をすることはないだろう。


「それで、エル。これが罠かどうかは判断が付くの?」

「多分大丈夫やろ。ちゃちゃっと調べるから、ちょっと待っとき」


 そう言うと、壁画に張り付くようにして何やら調べ始めた。

 こういう時は微妙に手持ち無沙汰(ぶさた)になっていけない。


 あ、もしかすると〔鑑定〕技能を使えば何か分かるかも!?

 この地下遺跡への入り口を発見するきっかけとなったというのに、すっかりド忘れしてしまっていたよ……。


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