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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十章 地下遺跡探索2

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274 壁画同士の繋がり

「こうやって並べてあるということは、繋がりがあるはずなんだけど……」

「鉱山と空飛ぶ島、もしくは大霊山との間に繋がり……?そんなものがありますの?」


 それはボクが聞きたいと声を大にして言いたい。

 まあ、答えてくれる人なんていないから聞くだけ無駄というものだろうけれど。と言うか、むしろそんな人がいたら逆に怖いと思う。


 ちなみに三度目の正直とばかりに突撃したリーヴとエッ君ですが……。

 早々に敗北を宣言することになってしまっていた。その気持ちもよく分かる。正直な話ボクだって両手を上げたくなる気分だもの。


「ダメ、分かんない!次行ってみよー!」


 結局ボクたちは問題の先送りという最終手段を取ることになったのだった。

 そしてそれは次の四枚目も変わらずで。


「なあ、これはもう魔導機械の専門知識がないどうしようもないんと違う?」


 というエルの意見についつい賛同してしまったのだった。

 そんな訳で再びやって参りました、最後の五枚目。


「関連があるのはよく分かりますね。なにせ一枚目の島の壁画と街の形が同じですから」


 ネイトの言う通り、関連している部分を探すというならこれほど簡単なものはないだろう。ところが、それだけで終わりになる訳じゃないのが面倒なところでして。


「そうなると次に重要なのは、街の形がそっくりであることが何を意味しているのか?ということだよねえ」

「あら?それは簡単ですわ。こちらの五枚目の壁画の街を元にして、一枚目の、あの空飛ぶ島の街が作られたのですわ」

「ええと、その理由を聞いても?」


 本人にはとても言えないけれど、自信満々なミルファの態度が微妙に不安を誘うなあ……。


「住み慣れた環境を模するということは、権力者にはありがちなことだからですわ。例えば、領地にある邸宅を本宅と同じ間取りで作るなどですわね。確かロイのところもそうだと聞いたことがありましてよ」


 そんな不安を蹴散らすかのように、彼女の述べた理由は至ってまともなものだった。疑ってごめんね。

 他にも、過去の公主の中には郊外に離宮を作る際にクンビーラのお城とそっくりの物を建てろと命じた人もいたようだ。こちらに関しては当時の部下の人が説得したことによって、規模も格段に縮小された館くらいの大きさのものとなったそうだ。


 ちなみに、この部下の人というのが後のナーブ伯爵家の創始者――元々は無位無官の市井の出だったらしい――とされる人で、この時建てられた館を中心に西の村が形成されていったのだとか。

 世の中、何が発展のきっかけになるのか分からないものだ。


 話しを戻すと、逆ではないのは「どんなに酔狂で偏屈と呼ばれる人であっても、空飛ぶ島という好条件の環境を手放すような者はいるはずありませんわね」であるそうな。

 ネイトやエルも妥当な考えだと思っているよう、というかそれ以外に予想が付かないという方が適切なのかもしれない。

 うちの子たちもエッ君はまだまだ幼いから良く分かっていない雰囲気だが、リーヴはそれなりに自己の意識が長くあるのかこの世界の常識を知っているためかみんなと同意見らしい。


 筋も理屈も通っているのでミルファの意見で間違いない、と言いたいところなのだけど、どうにも引っ掛かるものを感じてしまっていた。

 その原因となっているのが、先ほど考えるのを放棄して通り過ぎた四枚目の絵だった。


 みんなをその場に残して、一人てくてくとその壁画の前へと向かう。

 そんなボクにエルが自分の頭上にあった魔法の明かりを付けてくれた。さりげない優しさに惚れてしまいそうだぜ!


 さて、喜ぶ人たちそっちのけで壁画の中央にででん!と鎮座しているそれは、見れば見るほどエンジンっぽい。


 まだ免許も取れない年齢のボクがどうしてそんなことが分かるのかというと、例の記憶のせいだ。

 実はあの時流れていたドラマだか映画だかはラブロマンスものの冒頭シーンで、オーバーヒートを起こして立ち往生していたヒロインをさっそうと現れたヒーローが助けてあげるというベタな流れだった。

 が、そのカメラワークがどうにもおかしくて、ラブロマンスのはずなのにヒーローもヒロインも一切画面に登場することなく、延々とエンジンルームを写し続けていたのだ。

 しかも無知なヒロインへの説明もあってなのか、やたらと詳しく丁寧に描写されていた。

 そんなこともあって、エンジンのにわか知識が付いてしまっていたのだ。まあ、記憶の彼方へと忘却していたくらいなので、所詮(しょせん)はその程度のものだったのだろうが。


 余談だけど、件の作品のその後の展開もぶっ飛んでいて、ヒーローの布教によりすっかり自動車をチューンする魅力に取りつかれてしまったヒロインが、苦難の果てに世界最高峰自動車レースのチャンピオンになるという、まさに超展開な筋書きだった。

 しかも整備はメカニックの仲間――ヒーローではない――に任せきり。チューンどこいった!?


 え?ラブロマンス?ラヴもロマンスもどこにもありませんでしたとも!

 冒頭以降にヒーローの登場シーンすらなかったので、それ以前の問題だったかも。よくあれでヒーローだと名乗らせたものだ。というか、俳優さんもよくそんな役を引き受けたと思うよ。


 当然評価も散々、かと思いきやストーリーや展開のテンポなどの内容自体は非常に出来が良く、評論家から一般の観客に至るまで「看板に偽りあり!しかし、内容は面白いので良かったと言うしかないのが非常に悔しい!」という感想になったのだそうだ。


 いけないいけない。なんだか余計な記憶まで掘り起こしてしまったよ。

 とにかく、そんな動力を生み出すための機械の絵――喜ぶおじさんたちは添え物です――が並んで飾られていることに違和感を覚えてしまっていたのだった。


「もしかして、このエンジンを使ってあの街を土台ごと島として空に浮かべた?」

「えっ?」


 静まり返った空間だからか、ボクの呟きはみんなのところまでしっかりと届いてしまっていたようで、一斉に驚きの声が上がったのだった。


「ま、まさか!いくら『古代魔法文明期』と言えども、島を飛ばしたなどという大それた話は聞いたこともありませんわ!」

「じゃあ、あの島はどうやって浮かんでいるの?元々空飛ぶ島だった?それこそ聞いたことがない話だよ」


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