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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十章 地下遺跡探索2

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273 生乾きの恐怖!?

「ちょいちょい。みんな、またその一枚だけ見て色々考え込んじゃってるよ」


 仕掛けを読み解くヒントがあるかもしれないと言ったのはボクだけど、これだけで全て判明する訳ではないことは既に体験済みなのだ。


「リュカリュカは冷静ですわね。もしかすると、とんでもない大発見になるかもしれませんのよ?」


 ついでに言うと、とんでもない火種にも。

 声には出さなかったけれど、ミルファの表情が何よりも雄弁にそう物語っていた。


「うんうん。ミルファやエルが言いたいことはよく分かってるよ。クンビーラよりも大きな街がお空の上にぷかぷか浮かんでいるなんてことが知れ渡ったりしたら、大騒ぎになっちゃうだろうね。日陰になって洗濯物が乾かなくなるから、女将さんたちがきっとお冠になっちゃうよ!」

「問題になる点がやけに身近ですわね!?」

「何言ってるの、ミルファ!お日様に当たらないと洗濯物が生乾きになっちゃうんだよ!夜に寝ようとしてベッドに入ったらシーツがべっとりじっとりしているんだよ!」

「それはとっても嫌ですわ!?」


 そうでしょう、そうでしょうとも!


「二人とも、話しの論点がズレていますよ」

「というか、ミル嬢がものの見事に丸め込まれ取ったな……。クンビーラの公主家に仕える身としては、このことは報告しといた方がええような気がしてきたで」


 ネイトたちの突っ込みにハッと我を取り戻す。

 ……いやいや、ちょっと悪ふざけが過ぎただけですとも。そして丸め込んだとは失敬な。せめてそこは言い含めたくらいにしてもらいたいね。


「生乾きの洗濯物の恐ろしさについてはまた今度語るとして……」


 カビとか雑菌が繁殖しやすい環境なので、酷いとアレルギーなど健康被害を巻き起こしてしまうこともあって、割と本気で危険だったりするのだ。


「それは本当にもうどうでもいいですわ!」


 が、ミルファには不評だったらしく速攻で拒否されてしまった。

 大事なのよ?


「まあ、真面目に話をするとして。みんなが心配になるのは理解しているつもり。空飛ぶ島なんてただでさえ移動要塞にできたり前線基地にできたり、いかようにも戦争に利用できそうだもの。しかも飛んでいて高さという利点付き。防御を気にせずに一方的に攻撃できるだろうね」


 戦争に利用された際に起きるだろう点を羅列していくと、ミルファとネイトは目に見えて顔を青ざめさせていった。

 エルですらしかめっ面になっていたから、少々ショッキング過ぎる内容だったかもしれないとちょっぴり反省。


「とは言っても、無敵ってことにはならないだろうけど」


 なので、少しは気分が上向くような話題も投下しておくことにした。


「例えば、クンビーラの守護竜になってくれたブラックドラゴンなら、島を落としたり完全に破壊したりまではできなくても、島にいる人たちをやっつけることならできるんじゃないかな」


 加えて、一部の国ではワイバーンやグリフォン、ペガサスといった空を飛べる魔物を手懐けて空飛ぶ戦闘集団を組織しているところもあるのだという。

 そんな飛行部隊であれば浮島の進攻にも対抗できるのではないだろうか。


「だから必要以上に怖がる必要はないよ」


 ここまで言った所でようやくミルファたちの顔に血の気が戻ってきた。あえて言い切ることで彼女たちの不安を上手く断ち切ることができたようだ。


「もっとも、ここから先はこれまで以上に情報の扱いに気を付けなくちゃいけないのは確かだけど」


 一番良いのは誰にも知られないままでいることだ。もしも本当に発見してしまった場合だが、先々の火種にならないようにできる事なら再起不能の完膚なきまで破壊し尽くしてしまうべきかもしれない。

 が、これもまた大事な過去からの遺産であるということを考えると、安易にそうした手段をとるべきではないのでは?と心の中でブレーキがかかってしまうのだった。


「今から思い悩んだところでどうしようもないことだし、その時なってから考えればいいかな」


 結局、未来の自分への宿題として先送りすることにしたボクなのだった。


「それじゃあ、もう一度残る絵を見てみようか。一枚目が空飛ぶ島だと分かったように他の壁画でも発見があるかもしれないからね」


 加えて、壁画同士の繋がりや仕掛けに繋がる部分も見えてくるかもしれない。

 この提案に一番に反応したのはリーヴだった。エッ君を頭にのせたままスタコラと二枚目の前へと向かって行く。

 さっきはボクが重要な発見をしたこともあって、今度こそはと意気込んでいるみたい。順調かどうかはさておき、心の方の成長も進んでいるようで何よりです。


 やる気になっていたリーヴには申し訳なかったのだけど、不思議なハンターとして一枚目との繋がりらしき不思議を発見したのもボクだった。


「ごめんね。最初に見た時から気になる所があったんだよ」


 そう、青空の中にたった一つ黒い点のようなものがあったのだ。

 意識して見なければ汚れか何かだと勘違いしてしまったかもしれない。しかしそれは、大霊山の頂上のすぐ側に指先ほどの大きさで確かに描かれていたのだった。


「リーヴ、落ち込むことはありませんわよ。こんなものを見つけられるリュカリュカの方がどうかしているのですわ」


 ミルファはリーヴのことを慰めたいのか、それともボクのことをディスりたいのかどちらなのだろう?


「そういえば気になる箇所があるようなそぶりを見せていましたね」


 一方でネイトは最初の時のことを覚えていたようだ。

 まあ、最後まで首をひねりながら見ていたボクを促して次の壁画に向かわせたのが彼女だったからね。


「実際の縮尺がどんなもんかは分からんけど、こうやって見えるとしたらあの空飛ぶ島くらいなもんやろうな」


 エルが言った通り、ボクはその点をあの島ではないかと予想したのだ。もっとも、美術館の展示作品ように解説文が書かれている訳でもないから、正解なのかどうかは微妙なところだろうけれど。


 しかし、調子よく進んだのもここまでだった。

 真ん中の三枚目の壁画の前に立ったボクたちは、揃って頬を引きつらせることになってしまう。


「一枚目と二枚目は空という共通点がありましたが……」

「今度はいきなり鉱山の中、ですから……。関連を探せと言われても、一体どこから目を向けていいのやら」


 壁画の方向性の違いに、誰からともなくため息が漏れだす。

 そんなボクたちをあざ笑うかのように、壁画の中で山積みにされた原石がやけに光って見えたのだった。


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