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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第二十章 地下遺跡探索2

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271 鍵となる絵

 壁画の間の仕掛けを解くべく、再度五枚の壁画を順に見て回ったボクたち。


「結局のところ、鍵はこの絵にあると思うんだ」


 一枚目の島の絵――厳密には島かどうかは不明だけど、五枚目と区別するために島と呼びます――を指しながらボクは持論を述べた。


「そこまで言い切るくらいや。なんぞ根拠がありそうやんな」

「入口の正面にあって、ここに入って来た時に最初に見えるだろう位置にあるから、というのが一つ目の理由」


 ちなみに絶対と言い切れなかったのは、前の通路に引き続き真っ暗闇だったため見落としてしまう可能性が残されていたからだ。

 入口の扉から壁画のある壁までは数メートルある。松明やロウソクの火を用いたランタンのような弱い明かりでは届かないかもしれないのだ。さすがにこのわずかな違いを利用して、奥へと進むことができる人をふるいにかけているというのは想像力が飛躍し過ぎというものだろう。


「確かに、一番目立たせたいもんを分かり易い位置に持ってくるっちゅうんは理に適っとるのかもしれん。……せやけど、それやとここを作った連中がうちらを奥へ進ませたいみたいに聞こえるで?」

「うん。その通りだよ。だって、そうでもなければわざわざこんな面倒な仕掛けなんて作らないでしょ」


 本当に誰も立ち入れないようにするのであれば、完全に通路を塞いでしまうはずなのだ。実際リアルで世界各地にある巨大墳墓では、盗難対策等諸々のために正規の通路は完全に塞がれてしまっていることも多いのだそうだ。

 現在研究や観光で利用されているものの大半は盗掘のために後世の人たちが掘った横穴であるらしい。恐るべし、人間の欲望……。


 脱線しきってしまう前に話を元に戻すと、こうして扉を開くための仕掛けが施されているということ自体が、先へと進ませることを前提として作られたものである証拠と言えるのだ。


「なるほど。……今の理由だけでも十分すぎるほどの説得力がありますわね」

「ちなみに、もう一つの理由はボクの乙女の勘だね!」

「……いきなり信憑性がなくなり……、コホン!胡散臭く感じられるようになってしまいましたね」

「ネイト、言い方!というか、どうして後から言い直した方が酷い表現なのさ!?」


 ネタというかボケとしてなら良い感じですけどね!

 ものすごく「しまった!?」という顔をしていたので素だったのは間違いない。ボクたち『エッグヘルム』の空気に馴染んできた証拠と思えば歓迎すべきことなのかもしれないけど、なんか複雑な気分だわ。


 けれど、そのお陰で理由については有耶無耶にできたと思う。……そう。実はみんなには話していないゲームならではの理由というものがあったのだ。

 まあ、この、ゲームだから(・・・・・・)というのがある意味一番の根拠ということになるのだろうが、それではちょっと身も蓋もなさ過ぎるので一旦横に置いておきまして。


 実は昨日掲示板などを調べて回った時に、「ダンジョンの仕掛けとかに法則や癖があるかも?」という一文を発見してしまっていたのだ。

 そして気になって覗いてみてしまったのが運の尽きというやつです。完全ネタバレまではしなかったけれど、見事にこの地下遺跡のつくりや仕掛けとも似通っている点をいくつか見つけてしまったのだった。その一つが「目立つ位置にヒントとなるものを置く」というものだったという訳。


 え?十分にネタバレになっているって?


 ……ええ、ええ。ボクもそう思いますよ、こんちくしょうめ。

 これからは余計な情報を拾ってこないように気を付けようと、かたく心に誓いましたとも!


「お!リーヴもエッ君もやる気やな」


 エルの言葉に意識を浮上させてみると、ボクたちが行動するのに先駆けてリーヴとエッ君が島の壁画の前に陣取ってヒントになるものがないかを探し始めていた。ちなみにエッ君は定位置となりつつあるリーヴの頭の上です。

 ……絵面的にも安定性からもどうかと思うので、せめて肩の上とかにならないかなあ。


 そんなうちの子たち二人も含めて、ボク以外の全員が自然と壁画の中心の方へと集まっていた。どうやらこちらの世界では見ることのできていない摩天楼なビル群に興味をそそられている様子。

 この調子ならば中心付近にヒントがあった時には見落とすことなく発見してくれることだろう。それならボクは絵の端や隅といった島の外側を見ていくことにしようか。


 なんだか懐かしい気持ちになってくるなと思えばそれもそのはず。中学時代に里っちゃんたち生徒会の手伝いをする時には、こういう端数や余り物を担当することが多かったからだ。

 しかし半ば公認だったとはいえ、形式的には部外者だったボクに色々な作業を手伝わせて大丈夫だったのだろうか?

 今から改めて考えると、生徒会メンバーだけでなく先生たちも相当なチャレンジャーだったように思うよ。今度時間を作って雪っちゃんたちと挨拶に行こうかな?


 いけない、懐かしい感覚からすっかり意識がリアルの方へと飛んでしまっていた。確認作業の方はと言うと、当然のごとく全く進んでおりません。

 一般人のボクがマルチタスクだとか並列思考なんて高度な技(とんでもスキル)を持っているはずがないのですよ。


 あ、余談だけどゲーム内に〔並行思考〕という技能は存在している。主に複数の魔法を同時かわずかな時間差で使用することに用いられるそうなのだけど、取り扱いがとても難しく少しでも制御に失敗するとあっという間に暴発、自爆してしまうのだとか。

 しかもゲームを開始してから習得するのはまず不可能で、キャラクターメイキングの際に取得しておくか、極まれにイベントなどの賞品として出現するレアアイテムを使用することでしか獲得することができないそうだ。

 そんな具合に二重の意味で使いこなすのが難しい技能となってしまっているため、活用できている人は『笑顔』と『OAW』の両方を合わせても、両方の手の指で足りてしまうくらいに少ないらしい。


 と、そんな取得してもいない技能のことはこのくらいにして。

 いい加減に真面目に取り組まないとみんなからひんしゅくを買ってしまいそうだ。


 じじじーっと島の外側の青に彩られた箇所を凝視していく。

 一見すると青一色のように見えたそこには、所々に薄っすらと白が混ざっていた。今気が付いたけれど、これもボクたちが海だと認識した一因となっていたようだ。

 つまり、波頭が砕けてできた泡の白さを連想してしまっていたのだ。


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