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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十九章 地下遺跡探索1

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267 閃いたかも!

 ここで世界と『アンクゥワー大陸』の歴史のお勉強です。

 と言っても半分は伝説に近いものとなるのだけれど。


 昔々の遥かな昔、でもってもう一つ昔に『古代魔法文明期』というものがありました。この時代はいわゆる世界政府で、国という枠はなく一つの体系で世界全てを支配していたのだという。


 しかし、どんなに優れたシステムであってもいつかは崩壊してしまうもので、この『古代魔法文明期』も歴史の流れ中に消えてしまいましたとさ。

 ちなみに、滅びた原因として挙げられる項目は戦争や疫病に自然災害と、定番なものばかりだったりします。


 さて、『古代魔法文明期』の消失と共に、実効支配を行っていた世界政府も力を失ってしまう。

 そうなると次にやって来るのは、戦乱と暴力に彩られた数多の英雄たちが綺羅星として登場する群雄割拠な時代だ。

 と、いうのは余所の大陸での話。ここアンクゥワー大陸だけは早々に一つの国家が樹立されることになった。


 今でいう大陸統一国家だ。

 大陸を四つに分けて、それぞれを『風卿』『水卿』『火卿』『土卿』の位を与えられた者たちが代表して治めるようになったのもこの時代のこと。

 ゲームの舞台となっている現在においては、この時代がある種の理想郷として語られていて、いつかは再び大陸統一を成し遂げることが随分前から都市国家群となっている『風卿エリア』を除いた三国の悲願となっていた。


 まあ、百年ほど前に起きたことになっている『三国戦争』の影響で『火卿帝国フレイムタン』はすっかり内部分裂状態に陥っているそうだし、『水卿公国アキューエリオス』と『土卿王国ジオグランド』も内部に色々な問題を抱えているらしく、大々的に戦争を行えるだけの体力は今はないらしい。


 こんな風に様々な影響を現在にまで与え続けている大陸統一国家だけれど、実は不明なことばかりだというアンクゥワー大陸史においては暗闇の時代でもある。

 運営仕事しろ。……というのは半分冗談で、まあ、ネタが色々と仕込んであるみたい。


 こんな風にアンクゥワー大陸に住む人たちにとっては昔々の国といえばこの大陸統一国家が該当し、『古代魔法文明期』についてはミルファのような支配階級出身者だったり、エルのような裏社会と縁のある人だったり、はたまた変わり者の物好きくらいしか知らない話題となる。

 ボクはというと『笑顔』との合同公式イベントの際にチームを組むことになった皆から「覚えておくと良い設定」ということで教えてもらっていたのだった。


「そ、そんな太古の時代に優れた文明が存在していたのですか……」


 目を丸くして驚いている一般人代表のネイトさんです。


「ネイやんが冒険者としてこれから先もやっていくつもりなら、名前くらいは覚えておくとええで」

「先達からのありがたいお言葉だね」

「そこはせめて先輩くらいにしとかんかい!」


 キレのいい突っ込みありがとうございます!

 さて、じゃれ合うのはこのくらいにしまして。


「話を戻すと、そんな超技術の塊にこの壁画の真ん中にある物が似ているということ?」

「あくまでうちの私見やけどな。一体何がどうなっとるのかさっぱり分からん辺りがよう似とるわ」


 エルの言葉に思わずズッコケそうになるボクたち。

 それって結局似ていると言ってしまってもいいものなのだろうか?


 そしてどうやら彼女が魔導機械と呼ばれているものの現物を目にしたことがあるらしい、という点については一旦スルーしておく。

 本心を言ってしまえばとても気になるのだけれど、それを聞き始めてしまうと聞き役のボクたちも、話してであるエルの方も止まらなくなってしまいそうなので。


 それにしても壁画の魔導機械カッコカリは何のためのものなのだろうか?付け加えるなら、どうにもどこかで見たことがあるような……。

 脳裏に浮かんできたのはリアルでの微かな記憶。そこに映し出されたのは馴染みのある里っちゃんの家のリビングだった。

 懐かしい。同い年ということもあって幼い頃は家族と一緒に頻繁にお互いの家へと訪れていたのだ。


 だけど、どうして今そんなことを思い出したのだろうか?

 切れそうになる記憶の糸を慎重に手繰り寄せみると、テレビに釘付けになっているボクたちの姿が。


 うはー。里っちゃんはこの頃から可愛かったんだよねえ。

 あ、一也兄さんもいる。四つ年上ということもあって、この頃のボクには凄く大人であるように感じられたのだっけ。一也兄さんだってまだ小学生だったのにね。


 おっとと、いけないいけない。つい懐かしい記憶に浸りきってしまいそうになってしまった。早くこの記憶を呼び起こす原因を突き止めないと。

 怪しいのはやはりテレビだろうか。でも、あの壁画とテレビでは似ても似つかない。どちらかと言えばその中でオーバーヒート起こしてうんともすんとも言わなくなってしまった車のエンジンの方が似ている……。


「って、これだー!」


 そうだよ、エンジンだよ、発動機だよ、原動機だよ!


「リューカーリューカー……!!」


 思い出せたぜ、スッキリとな!的な良い笑顔を浮かべていたボクの耳に聞こえてきたのは地の底から這うような恐ろしい声でした。

 すぐに笑顔は消えてだらだらと冷や汗が流れていく。振り向きたくない。でも振り向かなければもっと怖い事態に発展しそう。

 そんな諦めとほんのちょっぴりの明日への希望を胸に背後へと振り返ってみれば……。


「ひっ!?」


 恐怖の大魔王(ネイト)が視界に入った瞬間、ボクの意志など完全に無視して小さな悲鳴が口から飛び出していた。


 いやいやいやいや、無理無理無理無理!

 声を抑えるとかできるものじゃない。本能から恐怖しましたもの!

 そう、あえて言うなら自然の摂理だったのです。コーラを飲むとうんぬんかんぬんというあれですか?


 余談だけど残るパーティーメンバーはというと、エルは恐らくボクの雄叫びで気絶してしまったのだろうミルファを介抱していて、エッ君とリーヴはネイトの時に気圧されてしまい魔法の明かりが届くギリギリの場所で抱き合って震えていた。


「あなたという人はー……!以前にも同じことをやって注意をしましたよね!そのいきなり考え込んだかと思うと突然叫ぶ癖はなんとかしなさい!」

「は、はいぃー!」


 こうしてせっかくの大発見になったかもしれない閃きは、ネイトのお説教という暗黒歴史によって塗りつぶされてしまうのでした。

 いえ、ちゃんと反省していますですから、そんな怖い顔はしないでー!?


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