表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十九章 地下遺跡探索1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

262/933

262 ついつい脇道に

気が付けばアクセス数のPVが60万、ユニークも8万を超えていました。

お読み下さりありがとうございます。

 『三国戦争』に由来する芸術の歴史を聞いたところで壁画観察を再開させた、までは良かったのだけれど……。

 その後、早々に難題にぶつかってしまった。


「とても細かく丁寧に描かれてはいるけど、いたって普通の壁画だよね?」


 じとーっという効果音が流れてきそうなほど、それこそ間近に寄って見たりもしてみたけれど、絵の中の人々が動くこともなければ日が暮れて夜になるような事もなかったのだった。


「一体どうやって建てたのか分からない塔のような建物が乱立している以外は、内容の方もまともに見えますわね」


 ミルファの言い分にネイトも首を縦に振ることで同意していた。

 ふみゅ。やっぱりこちらの世界に住む彼女たちからすれば島の中央部のビル群は異様な光景に見えるようだ。

 確かにクンビーラで一番背が高いのは公主様のお城の敷地内にある物見塔なのだけど、それでも十数メートルくらいの高さしかなかったはずだ。


 次点が街をぐるりと取り囲む外壁の所々に作られている櫓で、だいたい七から八メートルくらいの高さらしい。この外壁上からの見張りは、警備隊に任されている重要な任務のうちの一つなのだけど、遮る物がない上に単調ということでこれまでは大変不人気だったらしい。


 ところが、今では守護竜となったブラックドラゴンを近くで見ることができるということで、一転して人気の任務となっているのだとか。あちら次第ではあるけど、なんと機嫌が良い時には話しかけられたり、ごろ寝している姿を見られたりするのだそうだ。

 「さあ、君も警備隊に入ってブラックドラゴンを愛でてみないか?」なんていう文言(もんごん)の人材募集のポスターが張られそうになったとかならなかったとか。


 ちなみに、高さこそあちらの外壁には及ばないものの、北東部にある貴族街を取り巻く壁の方が分厚さでは勝っていたりする。これは別に一般庶民の暴動を恐れてという訳ではなく、元々こちらがクンビーラの街の外壁だった名残なのだそうだ。

 当時のクンビーラ周辺は今ほど開けてはおらず、すぐ近くにまで鬱蒼(うっそう)とした森が張り出してきていたとのこと。

 当然魔物も比べものにならないほど多く、またその強さも桁違いだった。そうした魔物から人や物を守るために頑丈で分厚い壁の方が需要があったという訳だ。


 対して今の外壁はというと、飛び道具対策、つまりは対人戦を前提として厚みよりも高さの方を優先して建造されたものだった。

 とはいえ、何度も繰り返し述べているようにその上を巡回できるくらいには厚みがあるので、あくまでも内側の壁に比べてという話だ。

 街の外を侵攻してきた三国に取り囲まれてなお崩壊せずに残ったという歴史を見れば、頑丈なことは良く分かるだろう。


 以上、クンビーラ豆知識、二重の壁編でした。


「まあ、のっぽな建物については置いておくとして。こういう壁画になるくらいだから題材になっている島も何かしら言われがあるものと思うんだよね。そういう訳で二人はそれっぽい話とか聞いたことがないかな?」


 夢の島、……と言うと何か別物のようになってしまうけど、それに似た楽園だとかエルドラドだとかユートピアでよろしくねだとか、伝承が残っているのではないかと思ったのだ。


「残念ですが学がないので力になれそうもありませんね。わたしよりもミルファの方が得意なのでは?」

「確かに教養としてそのような話をいくつか耳にしたような覚えはありますけれど……」


 いきなり戦力外を宣言したネイトに、ミルファが困ったような弱ったような声で続ける。どうやらネイトから一線を引かれてしまったのではないかと考えてしまったようだ。

 まあ、否が応でも身分の違いや立場の違いを感じてしまう話題だからね。


 『OAW』の世界は、中世欧州風の世界観である事に沿って、庶民の識字率などは低めに設定されている。結果、学びの機会を持たないという人も少なくはない。


 自由交易都市として近隣に名を馳せているクンビーラは比較的マシな方で、様々な品と共に集まってくる富を元にして社会保障制度の基礎が作られつつあるという状況だ。その中には教育も含まれていて、私塾などに補助金を出して貧困層の子どもでも学べるように便宜を図ったりしているそうだ。

 他方、農村などでは子どもイコール労働力にカウントされ、勉強どころではないというところも多々あるらしい。


 余談だけど、進め方次第ではこういう社会問題などに立ち向かっていくという遊び方もできるようになっている。

 どこぞの政治団体が若手の育成のために挑戦させているという話もあるらしいけれど、はてさてどこまで本当のことなのやら。


「ミルファにはもちろん期待しているけど、ネイトはネイトでクンビーラにやって来るまでの間に吟遊詩人の歌なんかを聞くこともあったんじゃない?それに村にいた神官さんから色々教わっていたんでしょう?そういうことから何かに繋がることだってあるかもしれない。だから、変に自分を卑下したりしないで考えてみて」


 そう言ってボクが説得すると、ネイトはバツの悪い顔になったのだった。

 普段は頼りになるお姉さん気質――決してボクたちが子どもっぽいという訳ではないのであしからず!――のくせに、時折やたらと弱気な部分が顔を見せることがあるのだよね。

 残念ながら未だにその理由について話してくれていないのだが、ボクとしてはこのまま仲間であり続ける気満々なので、その内嫌でもその原因とぶつかることになるだろうとも思っていたりします。


「ふう……。そこまで見抜かれて、しかもその上でやるべきことを提示されてしまっては考えざるを得ませんね。……ミルファ、八つ当たりをしてしまって申し訳ありませんでした」


 良かった。折れてくれるとは思っていたけれど、最悪意固地になられるという可能性もなくはなかったから。嫌われた訳ではないと分かりミルファも一安心だね。


「構いませんわ。出自も身分も何もかも異なるわたくしたちですが、こうやって意見をぶつけ合っていけばいつしか本当のな、仲間になれるというものですわよ」


 うはあ。ここで真っ赤になって噛んでしまうのがミルファだよねえ。

 いやいや、それとも噛んでしまったから赤くなっているのかな?


「そこでスマートに言い切れればカッコ良かったんだけどね」

「そこは見て見ぬふりをするのが優しさというものじゃありませんの!?」


 そして怒られると分かっていながらも、ついいじらずにはいられないボクなのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ