表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第十九章 地下遺跡探索1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

259/933

259 第一関門

 エルから危険はないことのお墨付きを頂いて、ボクたちは地下遺跡突き当りの壁を調べ始めた。

 はてさて、彼女が教えてくれなかった微かな凹凸に隠された秘密とは一体何なのか!


 続く……。


 という冗談はさておきまして。間近で目を凝らすようにしてもさっぱり分からないわ。あらかじめ凹凸(これ)の存在を教わっていなければ、絶対に気が付くことができなかったと思う。


「エルの有能さを改めて見せつけられた気分だよ。よくもまあ、こんなものをノーヒントで見つけられたものだよね」

「そこは踏んできた場数と経験がものを言うたっちゅうとこやな。やけどリュカリュカ、明かりの位置次第では影が見えるんやから完全なノーヒントいう訳でもないで」


 いやいやエルさんや、簡単そうに言うけれどそれって相当難しいことじゃないかな。

 こういう調べものをする時には基本的に注視しようとする箇所を照らすようにするものだ。そのためかえって影ができていることを見落としやすいのではないかと思うよ。


 それに加えて松明の炎やランプの灯のような揺らぎが起きてしまうものだと、正確に影を見つけることはできないかもしれない。【光源】のような安定した照明を持ち、しかも明かりと視点が離れていなければ発見できないようになっているとなれば、十分に難易度が高くて底意地の悪い仕掛けだと言えると思うんだけど。


 エルがいなくてもガーディアンを倒すことまではできたかもしれない。

 しかしここで確実に行き詰まることになり、お手上げ状態でクンビーラへと引き返すことにしまっていたことだろう。

 まあ、そうやって何度もクンビーラとこの地下遺跡を往復しながら、一個ずつ謎や仕掛けを解いていくというのも一つの攻略法ではあると思うけどね。


「それじゃあ、ボクから触っていくからね」


 仲間たちに先立ち、そっと壁に手を触れさせてゆっくりと動かしていく。

 と、確かにほんの微かなものだけど掌に凹凸の感触が伝わってきた。さらに詳しく調べるために人差し指の腹で発見した凹凸をなぞっていく。

 ……これは、もしかして、文字!?


 ハッとしてエルの方を見ると、相変わらずニヤニヤと若干イラッとしそうな表情のままではあったけれど、何かを肯定するように小さく頷いたのだった。


「リュカリュカ、何か分かったのですか?」

「……あ、うん。多分だけどエルが言いたかったのはこれじゃないかな、っていうのは見つけられたと思う」

「はっきりしない物言いですわね」

「見つけられたとは言っても合格ラインすれすれのところだから。はっきりパーフェクトな解答とは言い難いんだよね」


 リアルでも慣れ親しんでいるニポン語だったので、凹凸が文字であるのは間違いないと言い切れる。

 ところが、今のボクでは何と書かれているのか正確な所までは読み取ることができなかったのだった。具体的に言うと、いくつか混じっていた画数の多い漢字が分からなかったのですよ。


 答え合わせは後にして、せっかくなのでミルファたちにも挑戦してもらうことにする。今後も似たような仕掛けに遭遇するかもしれないし、何事も経験ということで。


「文字であることは間違いありませんね。平仮名のところは恐らくすべて読み取ることができたと思います」

「ぐぬぬ……。ですが漢字は最初と四番目、それと後ろから五番目のものしか分かりませんでしたわ」

「初めてでそこまで分かれば大したもんやで。これはちょっとヒントを出し過ぎたか……」


 読み取れた文字をメモしながら、ああでもないこうでもないと話し合っているネイトとミルファ。

 そんな二人を見ながらエルは複雑そうな顔をしていた。仲間が優秀なのは嬉しいのだけれど、自分が苦労したことを簡単に超えられてしまうのは悔しい、というところだろうか。

 でも、その気持ちはよく分かるよ。苦労して解いた問題を、里っちゃんがあっさり解いてしまった時など何度「ムッキー!」と叫びたくなってしまったことやら。


 余談だけど、ボクは現在「自分たちもやりたい」と要求してきたエッ君を抱っこしている最中だったりします。当の本人は足の裏の感触で文字が書かれているのが分かったのか、キャッキャと喜んでいた。

 もう一人のリーヴはというと、いくつかの文字に何度も確かめるように触れている。画数の多い漢字を特定しようと頑張っているのかな。


 さてと。うちの子たちまで揃ってやる気になっているので、できれば答えが出るまで待っていてあげたいところだが、ここがゴールではないのだ。

 むしろ位置的にはまだまだ第一関門という感じで、地下遺跡はまだまだ奥へと続いているはずだ。

 つまり、いつまでもここで時間を潰してしまう訳にはいかないのです。


「みんな、残念だけどそろそろ考えるのはお終いにしよう」

「なっ!?今がいいところですのに!」

「最後まで自分たちの力で解き明かしたいっていう気持ちは分かるよ。でも、ボクたちの目的はここをクリアすることじゃないでしょ」

「それはそうなのですが……」


 途中で止められてしまったので、予想通りというかミルファは不完全燃焼で消化不良気味になってしまっているようだ。

 おやおや、珍しくネイトも不機嫌な顔つきだ。やはり後一歩が届かずに終わるというのは精神的に大きなストレスになってしまうみたいだね。


 うちの子たちはというと、こういう時には一番に不満を露わにしそうなエッ君だが、今回は問題自体が良く分からなかったのかけろりとしていた。

 その代わりと言ってはなんだけど、普段は冷静に一歩下がった場所で見ていることも多いリーヴが、未だに答えを導きだそうと凹凸に触れたままだった。まさかボクの制止の声が聞こえないくらい熱中してしまうとはねえ。


「とりあえず、どこまで読み解けたか見せてんか」

「これです。平仮名部分はリュカリュカが読み解けた分も合わせて三人の答えを突き合わせていますので、間違いないと思うのですが……」

「ほうほう。ネイやん大当たりや。漢字もこの三つは正解やで」


 エルからお褒めの言葉を頂けたことでようやく二人の顔に笑顔が戻る。

 と、ボクの服の袖がくいくいと引っ張られるのを感じたのはそんな時だった。


「うん?どうしたの、リーヴ?」


 振り向くとそこに立っていたのは小さな騎士様だった。

 さっきまで壁に張り付いていた彼がわざわざボクを呼んだということは……。


「もしかして、残っていた漢字も分かっちゃった!?」


 その通りと言わんばかりに大きく頷くリーヴ。


「おお、凄い!ごめん、エル。そのメモ貸して!」

「なんやなんや?」


 驚く彼女から穴あき虫食い状態になっている一文が書かれた紙を受け取って、そのままリーヴへと渡す。すると、すらすらとその穴が埋まっていき、完成した文がこちら。


『正面に立ち、鍵となる赤き宝玉を掲げよ』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ